子どもの頃、夜空の星にも色があると聞いて、目を凝らして赤い星や青い星を探したことがある人もいるかもしれません。


夜空には、太陽のような星が一生の最後に残す「白色矮星(はくしょくわいせい)」という小さな星がたくさんあります。


名前からは白く光る星を思い浮かべますが、天文学の世界では、むしろ青みがかった星として語られることが多くありました。


しかし、すぐそばまで近づいて自分の目で見たらどんな色なのかは、誰も確かめたことがありません。


そこで研究チームは、星の光の計算モデルを使い、人の目に映る色を割り出してみることにしました。


白色矮星は、本当に「白色」なのでしょうか?


研究の詳細は、英ウォーリック大学らにより、学術誌『RAS Techniques and Instruments』に掲載されました。




目次



  • 星の色は温度で決まる、はずだった
  • 近所の白色矮星を平均すると、何色になったのか
  • 黄緑、ピンク、シアン、色とりどりの白色矮星


この研究の概要


発表

学術誌『RAS Techniques and Instruments』の第5巻に、2026年に掲載されました。



研究チーム

英ウォーリック大学のマーク・ホランズ氏を筆頭に、ボリス・ゲンジッケ氏、ピエール=エマニュエル・トランブレ氏、デトレフ・ケスター氏の4人のチームです。



調べた対象

白色矮星が人の目にどんな色に見えるかを、星の温度と大気の成分の組み合わせごとに調べました。



調べた対象

あわせて、地球から約65光年以内にある白色矮星151個の色もまとめて調べています。



調べ方

人の目の色の感じ方を数値で表す国際的な基準を使い、白色矮星の光の計算モデルを、パソコンの画面に出せる色に置き換えました。



調べ方

さらに、近くから見た星の姿を、色まで正確に再現した画像も作りました。



分かったこと

近所の白色矮星の色の真ん中の値は相関色温度で約6800ケルビンで、白色矮星は平均すると本当に白い星だと分かりました。



分かったこと

一方で、すでに知られている星の中に、近くで見れば黄色や緑、シアン、ピンク、紫に見えるはずの星があることも示されました。



星の色は温度で決まる、はずだった


太陽のように、中心で水素を核融合させて輝く星は「主系列星」と呼ばれます。


主系列星は温度が低いほど淡いオレンジ、太陽くらいなら白、最も熱いものは淡い青に見えます。


その光が、温度だけで色が決まる理想的な光(黒体放射)にかなり近いためです。


1931年に定められた色の表し方「CIE」で、色を平面の上に並べた図(色度図)です。長い波長の側から伸びる黒い曲線が、温度だけで色が決まる理想的な光(黒体放射)の色の道筋で、目盛りは右から左へ2000ケルビンから1万ケルビンまで、1000ケルビンごとに付いています。四角の3点を結んだ点線の三角形の内側が画面で出せる色の範囲で、その外の色はおおよその色で描かれています。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

一方、太陽くらいの星は一生の終わりに膨らんで赤色巨星になり、やがて外側の層を手放します。


残った中心部が縮んだものが白色矮星で、太陽の半分ほどの重さが地球ほどの大きさに詰まっています。


NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡がとらえた、3つの惑星状星雲です。惑星状星雲は、太陽のような星が一生の終わりに近い段階で見せる、死にゆく星の名残です。 / Credit: NASA/JPL-Caltech/Harvard-Smithsonian CfA(Public domain(NASA))

これほど極端な星なので、星を包む大気も、主系列星よりはるかに濃くなることがあります。


最も冷えた白色矮星では、大気の密度が1立方センチメートルあたり約1グラムに達します。


これは水とほぼ同じ重さで、星を包むガスがそれほどぎっしり詰まっているということです。


白色矮星の大気は本来、水素かヘリウムでできているはずですが、外から物質が降り積もるなどして、ほかの元素が混ざることがあります。


白色矮星に向かって落ちていく、彗星のような巨大な天体を描いた想像図です。今回の研究とは別に、ハッブル宇宙望遠鏡を使った観測で、ハレー彗星に似た成分をもちながら10万倍も重い天体が、白色矮星の大気の中で引き裂かれて散らばる様子がとらえられました。 / Credit: NASA/GSFC(Public domain(NASA))

濃い大気に炭素やカルシウム、ナトリウムが混ざると、それらが光を吸い取る色の範囲が極端に広がることがあります。


その結果、白色矮星の光は、温度だけで色が決まる理想的な光から大きく外れることがあるのです。


研究を率いたのは、英ウォーリック大学のマーク・ホランズ氏です。


同氏は駆け出しの頃から「この星たちを実際に見られたら、どんな姿だろう」と考えていたといいます。


白色矮星の大気で光が吸い取られる色の範囲の一部は、ちょうど人の目が敏感な範囲と重なっています。


近所の白色矮星を平均すると、何色になったのか


チームはまず、温度と大気の成分の組み合わせで、白色矮星の見た目の色がどう変わるかを調べました。


星の光の計算モデルから、人の目の感じ方に合わせて、どんな色として見えるかを求めたのです。


1931年に定められた色の表し方「CIE XYZ」で使う、色合わせの曲線です。星の光を色ごとの強さに分けたもの(スペクトル)をこの曲線に重ねて足し合わせると、色と明るさを決める3つの値が求まります。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

その結果、水素だけ、またはヘリウムだけの大気をもつ単純な白色矮星は、理想的な光の色にほぼ沿っていました。


太陽の光の計算モデル(上)と、1万ケルビンで水素の大気をもつ白色矮星の光の計算モデル(下)を、色ごとの強さで描いた図です。グラフの下はそれぞれ目に映る色で塗られ、右上にはその色を画面で表すための色の番号が書かれています。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

白色矮星の多くも、理想的な光に近い色をしていることが分かりました。


次にチームは、地球から約65光年以内にある白色矮星151個の色をまとめて調べました。


距離で区切った範囲の星を数えた集まりなので、明るさで星を選ぶ場合のような偏りが出にくくなります。


その色の真ん中の値(中央値)は、光の色を温度に置き換えて表す「相関色温度」で約6800ケルビンでした。


太陽から20パーセク(約65光年)以内にあるすべての白色矮星の色を点で並べた図(上)と、その色を温度に置き換えた値(相関色温度)の分布(下)です。上の灰色の破線は、理想的な光と違う色の星を外すために引いた線で、下のグラフは外れた3つの星を除いて描かれています。下のグラフの背景は、真ん中の値にあたる色で塗られています。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

これは、スマホやパソコンなど電子機器の画面が出す白に近い色です。


ちなみに、白いとされる太陽も、同じように計算すると、画面の白よりわずかに赤みがかって見えます。


つまり白色矮星は、平均すると名前のとおり本当に白い星だったのです。


当たり前のようですが、これはこれまでの定番のイメージとは少し違います。


白色矮星は、熱い白色矮星に特有の青みがかった色で語られることが多かったからです。


論文によると、その理由は、明るさを基準に星を選んだ集まりに、熱い白色矮星が実際より多く入っていたことにあります。


白色矮星の集め方で、色の印象が変わることを表した図です。明るさで選ぶと熱い青い星が多く入り、距離で区切ると偏りが出にくく、平均すると白い星だと分かります。丸の数は模式的です。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

明るい星ほど見つかりやすいため、白色矮星全体が実際より青く思われていたというわけです。


ただし、65光年以内の白色矮星の中にも、明らかに変わった色の星がわずかに含まれていました。


チームは、こうした変わった色の白色矮星は、銀河全体で約3%ほどと見積もっています。


冷えて温度が下がった白色矮星は、ふつうの星と同じように赤みを帯びていきます。


ただ、いくつかの星では、温度ではなく大気に混ざった元素が色を変えているとみられました。


黄緑、ピンク、シアン、色とりどりの白色矮星


その中で特に目を引くのが、「WD J1330+6435」という、すでに知られていた白色矮星です。


この星の大気にはナトリウムが含まれており、オレンジや赤、黄色の光を大きく吸い取ってしまいます。


黄緑色に見える白色矮星「WD J1330+6435」のしくみの図です。大気のナトリウムがオレンジ・赤・黄の光を吸い取り、残った光が黄緑色に見えます。縮尺は正確ではありません。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

残った光が目に届くと、この星は幽霊のようにぼんやりとした黄緑色に見えると分かりました。


ナトリウムの強い吸収は、褐色矮星という別の天体がマゼンタや紫に見える主な理由としても知られています。


ホランズ氏は「これらの化学元素は、私たちの目が感じ取れるほど深く、星の光をゆがめることがあります」と話します。


炭素を含む白色矮星も、独特の色を見せます。


冷えた白色矮星ではガスがかき混ぜられる層ができ、炭素を含む分子が外側の層まで持ち上げられることがあります。


この分子はいくつかの色の範囲の光をまとめて吸い取り、その組み合わせで淡いピンクやサーモンピンクの星が生まれます。


論文では、炭素を含む白色矮星(DQ型)は、ピンクや紫に見えると報告されています。


炭素を含む白色矮星(DQ型)のいくつかの色を、色度図の一部を大きくして示した図です。丸がふつうのもの、四角が変わったタイプで、多くの点が理想的な光の色の道筋より下に並ぶことが、ピンクや紫に見えるわけです。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

金属を含む白色矮星(DZ型)の中には、黄色や緑に見える星が見つかりました。


さらに、水素とヘリウムが混ざった大気をもつ一部の白色矮星は、シアン(青緑)寄りの色に見えます。


衝突によって起きる光の吸収(衝突誘起吸収)が、その原因とされています。


赤外線で暗く、目に見える光のいちばん強い所が青い側にずれた白色矮星のいくつかを、色度図の一部を大きくして示した図です。中でも極端な星は、シアン(青緑)の位置に来ます。 / Credit: Hollands et al., RAS Techniques and Instruments (2026)(CC BY 4.0)

ただし、こうした色は、星が点ではなく丸い円盤として見分けられるほど近くから眺めた場合の話です。


白色矮星は遠すぎて円盤の形まで見分けられないため、この色は計算で求めた「近くで見たときの姿」です。


望遠鏡でのぞいても、暗い所では人の目の色の見分けが鈍るため、近くで見たときの本当の色は伝わりません。


チームはさらに、計算モデルを使い、近くから見た白色矮星の姿を、色まで正確に再現した画像も作りました。


炭素や金属を含む白色矮星では、円盤の縁ほど暗く見える効果(周縁減光)が激しいため、中心から縁にかけて明るさだけでなく色まで大きく変わることがあると示されました。


金属の「傷あと」をもつ、磁場のある白色矮星「WD 0816-310」を描いた想像図です。金属を含む白色矮星には、黄色や緑に見えるものがあります。 / Credit: European Southern Observatory / Flickr(CC BY 2.0)

チームは、こうした画像が、極端な環境にある星の光を一般の人に伝える場で役立つと期待しています。


ホランズ氏は「そこへ行くことはできませんが、今のところ、これが私たちにできるいちばん近い方法かもしれません」と語っています。


今回の研究で、白色矮星は平均すると本当に白く、多くは理想的な光に近い色をしている一方、大気に混ざった元素によって黄緑やピンク、シアンにも見えうることが明らかになりました。


スマホの画面に近い白に光る星々の中に、ナトリウムのせいで黄緑色に見える星がひっそり混じっているとすれば、宇宙のパレットは思っていたより少しにぎやかなようです。


「白色矮星」という名前は、そろそろ「だいたい白色矮星」に改めたほうがいいのかもしれません。


ここからは、白色矮星をもっと知りたい人へ


白色矮星とは、一生を終えた星の芯が残ったものです


白色矮星シリウスBから、離れた所にある主星シリウスAを眺めたらどう見えるかを描いた想像図です。シリウスBは、重さが太陽の約1倍の白色矮星です。 / Credit: Юрий Д.К. / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

白色矮星は、星が中心での核融合を終え、外側の層をほとんど失った後に残る芯のような星です。


多くの白色矮星では、その中心が炭素と酸素でできています。


ただし中身は重さで変わり、太陽の0.4倍ほど以下の軽いものは中心がヘリウムで、1.3倍ほど以上の重いものは中心が酸素とネオン、マグネシウムでできています。


こうした中心は、電子がそれ以上押し縮められまいとする力(電子の縮退圧)に支えられていて、どこもほぼ同じ温度になっています。


その中心を、主に水素とヘリウムでできた薄い層が包んでおり、この層には地球の表面のおよそ10万倍という強い重力がかかっています。


また白色矮星は、光を色ごとに分けて見える線をもとに、水素の線が見える「DA型」、ヘリウムの線が強い「DB型」、線が見えない「DC型」などに分けられています。


中心でもう核融合が起きないため、白色矮星は時間がたつにつれて温度が下がり、だんだん暗くなっていきます。




Q. 白色矮星の表面の温度はどれくらいですか?
A. できたばかりのごく初めの頃は、外側の層が縮むことで表面の温度が上がり、10万度ほどに達します。その後は表面の温度が下がっていき、できてから約10億年以上たつと1万度以下になります。


Q. どれくらいの重さの星が白色矮星になるのですか?
A. 重さが太陽の8倍程度以下の、中くらいから小さめの星が、一生の終わりに白色矮星になります。


Q. 赤色巨星のとき、星の中では何が起きているのですか?
A. 赤色巨星の段階で、ヘリウムでできた中心核が太陽の約0.5倍より重くなると、中心の温度が約1億度以上に上がります。するとヘリウムが燃えて、炭素と酸素に変わります。


Q. 白色矮星は、その後に爆発することがありますか?
A. 白色矮星が持てる重さには、太陽の約1.46倍という上限(チャンドラセカール限界質量)があります。近くにある相手の星(伴星)から物質が流れ込んでこの上限を超えると、密度がとても高いために、温度が低くても様々な核反応が起こります。そのとき中心近くに炭素があれば「炭素フラッシュ」と呼ばれる反応が起こり、Ia型超新星という星の爆発になります。



写真で見る星の色と、星の一生の終わり







全ての画像を見る

参考文献

First-Ever Green Star Discovered – It Turns Out White Dwarfs Come In A Whole Rainbow Of Pinks, Oranges, And Blues (IFLScience)
https://www.iflscience.com/first-ever-green-star-discovered-it-turns-out-white-dwarfs-come-in-a-whole-rainbow-of-pinks-oranges-and-blues-84932

白色矮星 (天文学辞典)
https://astro-dic.jp/white-dwarf/

元論文

Any colour you like: the diverse chromaticities of white dwarfs
https://doi.org/10.1093/rasti/rzag069

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 史上初の「緑色の星」を発見、白色矮星はカラフルだったと判明 」