宝石店の前を通りかかって、照明を浴びてきらめく指輪に思わず足を止めてしまうこともあるものです。


ダイヤモンドといえば宝石としての美しさで有名ですが、その価値は宝飾品だけにとどまりません。


とても硬いこの炭素の結晶は、核融合の実験で燃料を閉じ込める小さなカプセルの材料にも使われています。


さらに海王星や天王星のような氷の巨大惑星の奥では、ダイヤモンドが雨のように降っているとも考えられています。


どちらの場所でも、ダイヤモンドはとてつもない圧力にさらされます。


ところが、そんな極限状態でダイヤモンドがどうふるまうのかについては、実験とコンピューター計算の結果が食い違ったまま、何年も決着がついていませんでした。


超高圧の世界で、ダイヤモンドはいったいどのように溶けるのでしょうか?


ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)のチームは、ダイヤモンドに強烈な衝撃を与えて溶かし、その一瞬を測る実験を行いました。


研究の詳細は、米ローレンス・リバモア国立研究所らにより、2026年8月13日付で学術誌『Nature Physics』に掲載されました。




目次



  • ダイヤモンドは溶けると密度が上がる?残された2つの謎
  • レーザーでダイヤを叩いた結果、20年来の謎はどうなった?

ダイヤモンドは溶けると密度が上がる?残された2つの謎


ダイヤモンドは溶けると密度が上がる?残された2つの謎 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

LLNLのジョン・エガート氏らは約20年前、高圧でダイヤモンドを溶かす先駆的な実験を行いました。


そこで見つかったのは「ダイヤモンドは溶けると密度が高くなる」という珍しいふるまいでした。


これはかなり珍しい性質ですが、身近な例に水があります。液体の水は氷より密度が高いため、氷は水に浮きます。


LLNLのマリウス・ミロー氏は、エガート氏の発見は「高圧ではダイヤモンドが液体の炭素に浮く」ことを意味すると説明しています。


ところが、この実験で測った溶ける温度は、理論モデルの予測と約20%も食い違っていました。


ミロー氏によれば、理論家たちが最先端のコンピューター計算を使っても、実験結果は再現できなかったといいます。


もう1つの謎は、サンディア国立研究所の実験から生まれました。


研究者たちは「Zマシン」という装置の強力な磁場を使い、小さなダイヤモンドの試料を衝撃で押しつぶしました。


すると、ダイヤモンドは完全に液体の炭素になる前に、別の結晶の形を通るかもしれないという信号が得られたのです。


コンピューター計算もこの解釈を支持しましたが、押しつぶされた物質の原子の並びは直接確かめられておらず、この「途中の形」は未確認のままでした。


レーザーでダイヤを叩いた結果、20年来の謎はどうなった?


レーザーでダイヤを叩いた結果、20年来の謎はどうなった? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

2つの謎を確かめるため、LLNLのチームはロチェスター大学のレーザーエネルギー研究所(LLE)で、レーザーを使って試料を一気に押しつぶす実験を行いました。


舞台となったのは、同研究所の「オメガ・レーザー施設」です。


強烈なレーザーを小さな試料に当てると、その外側の層が蒸発します。


その勢いで、内側のダイヤモンドを強く押しつぶす衝撃波が走るのです。


ただし、この超高圧の状態が続くのは、わずか10億分の1秒ほどしかありません。


研究者たちはその一瞬のうちに、X線回折(X線を当てて原子の並びを調べる測定)をはじめ、いくつもの性質を記録する必要がありました。


ミロー氏は「小さなダイヤモンドの試料を、太陽の表面より熱く、海王星や天王星の中心より高い圧力まで衝撃で押しつぶし、それでも原子の構造や温度、密度、光の反射率を測ることができました」と語っています。


こうしてチームは、地球の中心部(核)の約3倍にあたる圧力で、ダイヤモンドがどのように溶けるのかを測定しました。


その結果、ダイヤモンド研究で長年続いていた2つの食い違いに、決着がついたのです。


さらに実験の測定値は、量子力学にもとづくコンピューター計算とよく一致するようになりました。


約20年前からかみ合わずにいた実験と理論が、ようやく同じ答えにたどり着いたというわけです。


この成果は、実用面でも大きな意味を持つかもしれません。


燃料をダイヤモンドの小さなカプセルに閉じ込めて一気に押しつぶす「慣性閉じ込め核融合」に応用すれば、エネルギーの利得(投入したエネルギーに対して得られるエネルギーの割合)を3倍にできる可能性があるといいます。


また、高圧でのダイヤモンドのふるまいがはっきりすれば、惑星の内部を描くモデルの改善にもつながると期待されています。


ダイヤモンドの雨が降るかもしれない海王星や天王星の奥深くも、今後はより確かな姿で思い描けるようになるかもしれません。


指輪のダイヤも、核融合のカプセルも、氷の巨大惑星に降るかもしれない雨粒も同じ炭素の結晶で、その溶け方をめぐる長年の食い違いは、わずか10億分の1秒ほどしか続かない超高圧の一瞬の中でようやく決着したのです。


ショーケースできらめく小さな石を見かけたら、その奥に惑星の謎と核融合の未来がつまっていることを思い出してみてください。


とはいえ、手持ちの指輪をレーザーで叩いて確かめるのは・・・もったいなくて出来ませんね。


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参考文献

先生の貼り付け (先生の貼り付け)
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/08/260820002424.htm

元論文

Diamond melting in shock compression experiments at 1 TPa pressures
https://doi.org/10.1038/s41567-026-03413-1

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 長年の謎だった「ダイヤモンドが溶ける条件」が判明 」