運動前のカフェインはダッシュ力を「3.5時間」高めると判明
カフェインはコーヒーやお茶、エナジードリンク、スポーツ用のサプリメントなどに含まれ、世界で最も広く摂られている「心に働きかける物質」です。
短い全力のダッシュを何度もくり返す運動では、カフェインが成績をその場で高めることもよく知られています。
ところが、運動の前に1回飲んだカフェインが何時間もたったあとまで効き続けるのかは、はっきりしていませんでした。
では、カフェインの効き目はいつまで続くのでしょうか。
筑波大学の研究チームはこのほど、運動前のカフェインがどれだけ長くダッシュ力を支えるのかを、体と脳の反応と合わせて調べました。
研究の詳細は、筑波大学らにより、2026年9月1日付で学術誌『Medicine &Science in Sports &Exercise』に掲載されました。
目次
- カフェインを飲んで、何時間もダッシュをくり返す実験
- 飲んでから数時間後、ダッシュ力はどうなっていた?
カフェインを飲んで、何時間もダッシュをくり返す実験
実験に参加したのは、健康な若い大人12人(うち女性4人)です。
参加者は、カフェインを飲む回と、効き目のない偽物(プラセボ)を飲む回の2回の試験を受けました。
どちらの回を先にするかはランダムに決め、どちらを飲んだのかは参加者にも研究者にも分からないようにしています。
カフェインの量は体重1kgあたり5.5mgです。解説記事によると、体重約68kg(150ポンド)の人なら約374mgで、ふつうのコーヒー4杯近くにあたるかなり多めの量です。
飲んでからおよそ60分後、参加者は3.5時間にわたる流れの中で、自転車こぎのダッシュを3セット行いました。
1セットの中身は、ほどほどの強さで5分間こいだあと、5秒間の全力ダッシュを6回くり返すというものです。
研究チームはダッシュで出せた力(パワー)のほか、血液中のカフェインとノルアドレナリン(体を活動モードにする神経の働きの目安になる物質)の濃さを測りました。
さらに、本人が感じる「きつさ」、脚の筋肉の痛み、呼吸、心拍数も記録しています。
脳の血流の目安としては、脳の太い血管(中大脳動脈)を流れる血液の速さを頭の外から測りました。首の血管(頸動脈)の血流も超音波で調べています。
飲んでから数時間後、ダッシュ力はどうなっていた?
結果を見ると、カフェインを飲んだ回は偽物の回に比べて、3セットを通してダッシュの平均パワーがはっきり高くなっていました。
上がった幅は0.5〜2.4%と小さめでしたが、効果は一貫しており、飲んでから3.5時間後まで続いていたのです。
さらに2セット目と3セット目では、一瞬に出せる最大のパワーも高まり、その差は最大で3.7%でした。
ここで気をつけたいのは、「3.5時間で効き目が切れる」と分かったわけではないことです。
解説記事も指摘するように、研究チームが最後に測った3.5時間後の時点でも、まだ効果が残っていたということなのです。
このとき、体の中でも変化が起きていました。
カフェインを飲んだ回では、血液中のノルアドレナリンが多くなっていました。
その一方で、参加者が感じる「きつさ」や脚の筋肉の痛みは、偽物の回より小さくなっていたのです。
また心拍数は上がり、吐き終わりの息に含まれる二酸化炭素の濃さは下がりました。
脳の血流の目安である中大脳動脈の血液の速さも、カフェインを飲んだ回では下がっていました。
研究チームは、ダッシュ力の向上が、神経の働きの高まりやつらさの感じにくさ、心臓と呼吸の変化と同時に見られたとまとめています。
ただし、これらの変化がダッシュ力を上げた原因だとまでは、今回の結果だけでは言い切れません。
また参加者は健康な若い大人12人で、運動も自転車での短いダッシュです。ほかの運動や人にも同じことが言えるかは、今回の研究だけでは分かりません。
解説記事も、体への負担や睡眠への影響を避けながらバランスよく取り入れることをすすめています。
運動前に1回飲んだカフェインは、数時間にわたって静かに背中を押し続けてくれる存在なのかもしれません。
とはいえ、ダッシュを何時間もくり返す日が来たら、カフェインより先に筆者の気合いのほうが切れてしまいそうです。
参考文献
Study: Caffeine Can Boost Sprint Performance for 3.5 Hours (Psychology Today)
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-athletes-way/202610/study-caffeine-can-boost-sprint-performance-for-35-hours
元論文
Pre-Exercise Caffeine Enhances Repeated Sprint Performance and Alters Physiological and Perceptual Responses with Effects Lasting up to 3.5 h
https://doi.org/10.1249/mss.0000000000004129
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部