毒ヘビほど「目立つ色」をしていると判明
庭の水まき用ホースが草むらに転がっているのを見て、思わず「ヘビだ」と飛びのいた経験がある人もいるでしょう。
自然界には、ハチやヤドクガエルのように、あえて派手な色をまとって「自分は危険だ」と天敵に知らせる生き物がいます。
こうした見た目は「警告色(けいこくしょく)」と呼ばれ、目立つことそのものが生き残りの作戦になっています。
ヘビでも、しま模様のはっきりした姿は、毒を持つことを知らせるサインとしてよく例に挙げられます。
ところが、ヘビだけを切り取って見ると派手な模様でも、実際のすみかで目立っているとは限りません。
すんでいる場所の景色の中では、その模様がかえってうまく溶け込んでいることもあるからです。
では、毒を持つヘビは本当に、すみかの景色から浮き上がって見える色をしているのでしょうか。
この疑問を、世界のヘビ450種あまりの写真を使って確かめた研究を、アイルランドのゴールウェイ大学の研究チームが発表しました。
研究の詳細は、アイルランドのゴールウェイ大学らにより、2026年10月4日付で学術誌『Journal of Animal Ecology』に掲載されました。
目次
- 450種あまりのヘビを「すみかの景色ごと」比べる
- 毒ヘビは景色の中で「浮いて」いたのか?
450種あまりのヘビを「すみかの景色ごと」比べる
警告色はこれまで、1つの種や、少ない数の動物のグループごとに調べられてきました。
しかし、たくさんの種類のヘビを見渡したとき、目立つ色と毒が全体としてつながっているのかは、はっきりしていませんでした。
そこで研究チームは、世界の458種のヘビについて、写真を集めることにしました。
写真の出どころは「iNaturalist(アイナチュラリスト)」という、市民科学(一般の人が参加して進める研究)のサイトです。
チームはここから自然の中で撮られた数千枚の写真を集め、ヘビが実際のすみかでどう見えているかを比べました。
そのために、それぞれの種が周りの景色に比べてどれくらい目立つかを数字で表す、新しい物差しを用意しています。
特に注目したのは、動物の世界で危険の合図によく使われる赤と黄色です。
さらに、毒があるかないかだけでなく、毒の強さや、痛みを引き起こす力とも、目立ち具合を照らし合わせました。
研究チームのケビン・ヒーリー博士は、博物館の標本なら色を正確に測れる一方で、その色がすみかでどう見えるかを知るには野外の写真が欠かせないと述べています。
景色ごと比べたとき、毒ヘビの見た目にはどんな違いが表れたのでしょうか。
毒ヘビは景色の中で「浮いて」いたのか?
結論から言うと、毒を持つヘビは、毒を持たないヘビに比べて、すみかの景色からはっきりと目立つ色をしている傾向があることが分かりました。
もちろん、すべての毒ヘビが派手というわけではなく、地味な色の毒ヘビも少なくありません。
それでも、目立つ色や模様を進化させてきた毒ヘビが数多くいることが、今回確かめられたのです。
研究を率いたエイミー・デュクロー氏は、中でも赤と黄色が、ヘビを周りの景色から浮き上がらせるのに特に効いていたと述べています。
デュクロー氏によると、この結果は、警告色が天敵に危険を知らせるために進化したという考えを支えるものです。
「天敵から隠れるのではなく、自分が危険だと宣伝しているように見える毒ヘビがいる」とも、デュクロー氏は語っています。
研究チームは、毒と目立つ色が、一部のヘビで一緒に進化してきた可能性があると考えています。
一方で、毒の強さや痛みを引き起こす力と、目立ち具合とのつながりは、今回のデータでは見つかりませんでした。
少なくとも今回の結果からは、「毒が強いヘビほど派手になる」という単純な関係は見えてこなかったのです。
チームはこのことから、毒の強さや痛みは、ヘビが目立つ色を進化させた大きな原動力ではないのかもしれないとみています。
また今回の研究は、生き物の色を、すむ場所の景色とセットで見ることの大切さも示しました。
図鑑の中で同じように派手に見えるヘビでも、その色が「隠れみの」なのか「看板」なのかは、すみかに置いてみて初めて分かるのです。
参考文献
Dressed for danger: Venomous snakes are more likely to stand out (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-10-danger-venomous-snakes.html
元論文
Contextually conspicuous species are more likely to be venomous: Habitat‐dependent aposematic colouration found throughout snakes
https://doi.org/10.1111/1365-2656.70351
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部