体長わずか21.5cmの新種「ランタンシャーク」を発見
水族館の大きな水槽の前で、ゆうゆうと泳ぐサメを見上げて思わず息をのんだ経験がある人も多いでしょう。
けれども、サメの仲間がみんな大きくて恐ろしい姿をしているわけではありません。
インド洋南西部のモーリシャスの深い海で、「ランタンシャーク」と呼ばれるサメの仲間の新種が見つかりました。
この新種は、変わった顔つきとともに、サメの「ある記録」に関わるかもしれないとして注目を集めています。
では、深海で見つかったこの新種のサメは、いったいどれほどの大きさだったのでしょうか。
この話題の詳細は2026年10月1日に『IFLScience』にて公開されました。
目次
- 深海で見つかった「鼻の大きな」新種のサメ
- 新種のサメは「どれくらいの大きさ」だったのか?
深海で見つかった「鼻の大きな」新種のサメ
新種が見つかったのは、インド洋南西部にあるモーリシャスの深い海の中です。
この新種は、ランタンシャークと呼ばれるサメの仲間に属しています。
ランタンシャークは人目に触れない暮らしをしていて、その生き方がほとんど分かっていない謎の多いサメたちです。
今回の新種も、見つかっているのはたった1匹の標本だけで、水深400〜500メートルから網で引き上げられたものです。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(迷宮入りしていた謎の標本から「白眼」を持つ新種の深海ザメを発見!)
新種には「エトモプテルス・ブルボスス(Etmopterus bulbosus)」という学名が付けられました。
名前の由来は、研究者たちが「大きな球根のようにふくらんだ鼻先」と呼ぶ、この新種のとても目立つ顔つきです。
記事で紹介されていた画像はこちら(画像1)
英語での呼び名も「big-nosed lanternshark」、つまり「鼻の大きなランタンシャーク」です。
とはいえ、なぜこの新種の鼻がとりわけ大きいのかという疑問には、いまのところ答えが出ていません。
新種が属するエトモプテルス属には、これまでに43の種が知られています。
これらの種は、体のつくりが似ている近い仲間ごとに「クレード」と呼ばれるまとまりに分けられています。
今回の新種は、その中の「エトモプテルス・プシルス」のクレードに入れられました。
一方で研究者たちは、皮歯(ひし、皮膚にある小さな歯のようなつくり)が集まった部分が大きいことから、「エトモプテルス・セントスス」という別の種にも似ていると指摘しています。
こうして仲間の中での居場所が決まったこの新種ですが、いま話題になっているのは、その体の大きさです。
新種のサメは「どれくらいの大きさ」だったのか?
結論から言うと、見つかった標本はメスで、あの大きな鼻先から尾の先までの長さはわずか21.5センチメートルでした。
体は茶色と黒を基本にしながら、ほんのりと紫がかった独特の色合いをしています。
実は、いま世界最小のサメとされているのも、ランタンシャークの仲間です。
その「ドワーフランタンシャーク」は、大人になっても体長が最大21.2センチメートルほどにしかならず、手のひらにすっぽり収まるサイズです。
今回の新種の標本はこれとほぼ同じ大きさで、世界最小のサメの座を争う候補になりうると紹介されています。
ただし、この新種で見つかっているのは、まだこのメス1匹だけです。
ランタンシャークの仲間で注目されているのは、小ささだけではありません。
エトモプテルス属の多くの種では、体が光ることが報告されています。
この光を生み出しているのは、発光器(光を出すための特別な皮膚の細胞)です。
光の役割は、エサとなる生き物をおびき寄せたり、敵を追い払う警告にしたりすることではないかと考えられています。
ただし、今回の新種そのものが光るのかどうかは、紹介記事では触れられていません。
また、エトモプテルス属の43種のうち40種は、国際自然保護連合(IUCN、生き物の保全の状態を評価する国際的な団体)による評価を受けています。
その内訳は、「軽度懸念(いまのところ心配が少ない)」が36種、「情報不足」が3種、「危急」が1種です。
多くの種は底引き網漁が行われる深さよりも深い海に暮らしているため、漁業の影響から守られやすくなっています。
少し前には、西オーストラリア沖の調査でも、水深610メートルまでの深い海から別の新種のランタンシャークが見つかっています。
その研究に加わったCSIRO(オーストラリアの研究機関)の魚類学者ウィル・ホワイト博士は、当時の声明で「ランタンシャークは驚くべきサメのグループだ」と語っていました。
深い海には、私たちが「サメ」と聞いて思い浮かべる姿とはまるで違う、小さな仲間たちがひっそりと暮らしているのです。
サメの世界は、大きさだけでなく小ささでも記録を競い合う、思っていた以上に奥の深い世界なのかもしれません。
参考文献
New Species Of Teeny Tiny Lanternshark Looks Shocked To Have Been Discovered And Could Be A World's Smallest Shark Contender (IFLScience)
https://www.iflscience.com/new-species-of-teeny-tiny-lanternshark-looks-shocked-to-have-been-discovered-and-could-be-a-worlds-smallest-shark-contender-84800
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部