魚のオスの好みは単純、メスの好みは複雑だと判明
友人に「どんな人がタイプなの」と聞かれて、うまく答えられずに笑ってごまかしたことがある人は少なくないはずです。
自分の好みをはっきり言葉にするのは、案外むずかしいものです。
相手が動物となれば、なおさら本人に聞くことはできません。
そこでエクセター大学の研究チームは、魚に画面の中の「仮想の相手」を選ばせ、それを9世代にわたってくり返すという実験を行いました。
いわば魚たちに、自分だけの「理想の相手」をデザインさせたのです。
では、オスとメスはそれぞれ、どんな相手を作り上げたのでしょうか。
この話題の詳細は2026年9月29日に『Phys.org』にて公開されました。
目次
- 画面の中で「理想の相手」を育てる実験
- オスとメスが作り上げた「理想の相手」とは?
画面の中で「理想の相手」を育てる実験
実験に使われたのは、中米原産の「グリーンソードテール」という魚です。
名前は、オスの尾びれが剣のような独特の形をしていることに由来します。
研究チームのキャスリン・バロー氏によると、実験で動物に見せられる相手の種類はどうしても限られるため、配偶者選び(子を残す相手選び)を調べるのは難しいのだといいます。
そこでチームは、水槽の両端に画面を置き、それぞれに違う仮想の相手の動く映像を映しました。
実験ではメス11匹とオス12匹を、1匹ずつ試しました。
魚を3分間自由に泳がせ、真ん中の中立ゾーンと、それぞれの画面の近くのゾーンのうち、どこにいたかを観察します。
そして、より長く近くにいたほうの仮想の相手が「勝ち」となります。
面白いのはここからです。
勝った仮想の魚は「生き残り」、別の回で勝った仮想の魚と組み合わせて、その特徴をもとに新しい仮想の魚を2匹作るのです。
この「子ども」たちが次の世代として、次の回の候補になります。
この作業には遺伝的アルゴリズム(勝ち残った候補どうしの特徴を組み合わせて、新しい候補を作り出していく計算の方法)が使われました。
これは性淘汰(魅力的な特徴をもつ個体ほど相手に選ばれて子を残しやすく、その特徴が世代を重ねるごとに強まっていくという考え方)を、画面の中でまねたものです。
こうして9世代をくり返すうちに、魚たちは自分の好みをしぼり込み、理想の相手へと近づいていけるわけです。
オスとメスが作り上げた「理想の相手」とは?
結論から言うと、オスとメスの好みには、はっきりとした違いが見られました。
オスは一貫して、より大きなメスを選び続けたのです。
その結果、最後の世代の仮想のメスは、最初の世代に比べて平均で24%以上も大きくなっていました。
この好みは、大きなメスほど多くの子を産めることを反映している可能性が高いと考えられています。
一方で、メスの好みはそう単純ではありませんでした。
メスでは個体ごとの違いがずっと大きく、たとえば長い尾を好んだり、鮮やかな色を好んだりと、好みがさまざまだったのです。
中には、選んだ相手がだんだんメスのような見た目になっていったメスもいました。
理由ははっきりしていませんが、このメスはオスらしい威圧的な特徴を避けて遠ざかり、その結果メスらしい特徴のほうへ寄っていった可能性があるといいます。
ところで、なぜこの実験にグリーンソードテールが選ばれたのでしょうか。
研究チームのローラ・ケリー博士によると、この魚は他の魚の映像にきちんと反応し、しかも子育てをしないためだといいます。
ケリー博士によると、そのためグリーンソードテールの相手選びは、主に子に伝える「よい遺伝子」を求めるもので、比較的わかりやすいのだそうです。
ケリー博士は、本物の魚で同じような研究をすれば何年もかかるとしたうえで、この新しい方法は野生の動物がどう相手を選ぶのかを理解する強力な道具になると述べています。
魚たちは、画面の中で選ぶことをくり返しながら、自分の好みをしぼり込んでいきました。
参考文献
Nine generations of virtual dating reveal how fish shape their ideal mates (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-09-generations-virtual-dating-reveal-fish.html
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部