写真にひかれてやりとりを始めた相手と通話してみたら、声を聞いた瞬間に「あれ、思っていたのと違う」と感じることもあります。


私たちは誰かを見るとき、顔や体、そして声をまとめて、その人の印象を決めています。


では、顔が魅力的な人は、体つきや声まで同じように魅力的だと受け取られやすいのでしょうか。


ゲッティンゲン大学のトビアス・L・コーズマイヤー氏らの研究チームは、男性165人と女性155人の顔・体・声を400人に評価してもらい、この疑問を確かめました。


研究内容の詳細は2026年1月2日に『Evolution and Human Behavior』にて発表されました。




目次



  • 顔・体・声の魅力は「1つのサイン」か「別々のサイン」か
  • 顔・体・声の魅力は、同じ人の中でそろっていたのか?

顔・体・声の魅力は「1つのサイン」か「別々のサイン」か


顔・体・声の魅力は「1つのサイン」か「別々のサイン」か / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

人の顔や体、声の特徴は、恋人候補やライバルに向けて、健康さや遺伝的な質の良さを伝えるサインだという考え方があります。


このサインの組み合わさり方については、2つの説があります。


1つ目の説は「ワン・オーナメント仮説」で、顔・体・声は同じ体の土台から生まれ、まとめて1つのサインとして働くと考えます。


この説が正しければ、免疫の強さのような体の良い状態は、見た目全体ににじみ出るはずです。


2つ目の説は「マルチプル・メッセージ仮説」で、体の部分ごとに別々の情報を伝えていると考えます。


たとえば、顔は免疫の強さを、声は身体的な強さを伝えるといった分担です。


チームはまた、性ホルモン(男女の体つきの違いを方向づけるホルモン)がこれらの特徴をそろって育てている可能性も考え、唾液と髪の毛からその量を測りました。


評価に使われたのは、顔写真、体の3Dスキャン(体の形を立体的に読み取ったもの)、そして声の録音です。


3Dスキャンは肌の色や質感を消して灰色一色にし、評価する人が体の形とバランスだけに目を向けるようにしました。


声は、男性では自分の人生の良いところを語った話から5秒を、女性では決まった文章を読み上げた録音から1文を切り出して使いました。


そして400人の評価者が、魅力、健康そうか、身体的な強さ(ライバルと競うときの手ごわさ)の3つを点数にしました。


1人の評価者が担当するのは「男性の顔だけ」「女性の体だけ」など1種類だけで、ほかの特徴の印象が混ざらないよう工夫されています。


はたして、別々に点数をつけられた顔・体・声の魅力は、同じ人の中でそろっていたのでしょうか。


顔・体・声の魅力は、同じ人の中でそろっていたのか?


顔・体・声の魅力は、同じ人の中でそろっていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

これまでの研究では、男性について、体の部分ごとの魅力の評価がたがいに結びつくことが示されていました。


今回の研究は、それを女性も含めて確かめ直し、さらに広げようとしたものです。


まず顔と体の評価には、中くらいの強さの正の相関(一方が高いと、もう一方も高くなりやすい関係)が見られました。


顔が魅力的、あるいは健康そうだと評価された人は、体つきも魅力的、健康そうだと評価されやすかったのです。


この傾向は、男性でも女性でも同じように表れていました。


身体的な強さでも顔と体の評価はそろっていましたが、こちらは男性だけで、女性ではそろいませんでした。


肌の色も質感もない灰色の体からでも、顔の評価と重なるだけの形の情報が伝わっていたことになります。


顔と体については、「ワン・オーナメント仮説」に近い結果です。


ところが、声はまったく違う姿を見せました。


声の評価と、顔や体の評価のあいだには、はっきりした結びつきがほとんど見られなかったのです。


顔や体が高く評価された人でも、声まで同じように評価されるとは限りませんでした。


声については、体の部分ごとに別の情報を伝える「マルチプル・メッセージ仮説」に近い結果だといえます。


声は見た目とは別の通り道として、見た目だけでは伝わらない情報を相手に届けているのかもしれません。


一方で、テストステロン(主に男性ホルモンとして働く性ホルモン)やエストラジオール(主に女性ホルモンとして働く性ホルモン)の量が、こうした結びつきを部分的に説明しているという予想もありましたが、それに沿った結果は得られませんでした。


研究チームは、今後の研究では評価してもらう材料をさらに加え、ホルモンに関わるほかの項目も調べて、ホルモンが関わる体の仕組みを明らかにすべきだとしています。


また、ここで調べられたのは、あくまで他人から「どう見えたか、どう聞こえたか」という評価だという点にも注意が必要です。


私たちが誰かに惹かれるとき、顔と体からはひとつにまとまった印象を、声からはそれとは別の話を受け取っているのかもしれません。


相手の写真だけで「どんな人か分かった」と思うのは、物語の半分だけを読んで結末を決めるようなものなのでしょう。


写真写りに自信がない人も、留守電のあいさつくらいは、ちょっと気合いを入れて録り直してみてもいいかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

Faces and bodies send matching signals of attractiveness, but voices tell a different story (PsyPost)
https://www.psypost.org/faces-and-bodies-send-matching-signals-of-attractiveness-but-voices-tell-a-diffe/

元論文

Correlated perceptions and underlying hormonal factors of bodily, facial, and vocal attractiveness, health, and physical dominance
https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2025.106818

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 「顔の魅力」と「声の魅力」は別物だった 」