ドラマで冷たい悪役を見て、「この人の親はどんな人だったんだろう」と、つい想像してしまうことがあります。


ルールを破る行動をくり返す10代の中には、人を傷つけてもあまり心が動かないように見える子がいます。


その「冷たさ」は、本人だけを見ていれば説明がつくものなのでしょうか。


米バージニア・コモンウェルス大学(VCU)の研究チームは、こうした10代とその母親を1年にわたって追いかけ、母親の性格との関係を調べました。


では、母親の性格は、1年後の子どもの冷たさを予測する手がかりになるのでしょうか。


研究内容の詳細は2026年7月22日に『Frontiers in Child and Adolescent Psychiatry』にて発表されました。




目次



  • 問題行動のある10代に見られる「冷たさ」とは
  • 母親の性格の「ある一面」が1年後の子どもの冷たさと結びついていた

問題行動のある10代に見られる「冷たさ」とは


問題行動のある10代に見られる「冷たさ」とは / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

今回の研究の対象は、「素行障害」と診断された13〜17歳の子どもたちです。


素行障害とは、けんかや盗み、うそ、物を壊すといった行動で、ルールを破ったり他人の権利を踏みにじったりすることをくり返す状態のことです。


その中には、共感が乏しく、悪いことをしても罪悪感が薄く、感情の表れも浅い子どもたちがいます。


心理学ではこれを「冷淡・無感情特性(CU特性)」と呼びます。


CU特性が強い子は罰に反応しにくく、大人になってサイコパシー(サイコパス的な性格の傾向)に発展するリスクも高いとされています。


この特性は遺伝の影響が中程度から大きい一方で、厳しい子育てとも関わるという研究もあり、「生まれか育ちか」ではすっきり割り切れません。


そこで研究チームが注目したのが、母親のサイコパス的な性格です。


サイコパシーは、人をだます「対人」、共感や罪悪感が乏しい「感情」、衝動的でスリルを好む「生活様式」、ルールを破る「反社会」という4つの面に分けて考えられることがよくあります。


以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(サイコパス傾向のある人は反社会行動のブレーキになる脳領域が小さい)


チームは、バージニア州の大きな医療機関を通じて、素行障害の10代99人とその母親、計198人に協力してもらいました。


子どもには、自分の冷たさを測る24問の質問票に、最初と12か月後に答えてもらいました。母親には、4つの面を7問ずつ測る28問の質問票に答えてもらいました。


そして、子どものもともとの冷たさや年齢、性別、人種、母親の年齢の影響を差し引いたうえで、母親の性格が1年後の子どもの冷たさを予測するかを調べたのです。


母親の性格の「ある一面」が1年後の子どもの冷たさと結びついていた


母親の性格の「ある一面」が1年後の子どもの冷たさと結びついていた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まず、子どものCU特性は、1年たってもある程度は続いていました。


最初に冷たさの点数が高かった子は1年後も高い傾向がありましたが、その結びつきは中程度で、変わる余地も十分に残っていました。


では、母親の性格はどうだったのでしょうか。


結論から言うと、子どもの1年後の冷たさと結びついていたのは、母親のサイコパス的な性格のうち「感情」の面でした。


「人を傷つけても悪いと感じない」といった項目に強く当てはまると答えた母親の子どもほど、もともとの冷たさを差し引いても、1年後のCU特性が高い傾向があったのです。


一方で、「対人」「生活様式」「反社会」の3つの面は、1年後の子どもの冷たさの有意な予測因子ではありませんでした。


母親の「感情」の面は、共感や罪悪感の乏しさという点で、子どものCU特性の中心にある特徴とよく似ています。


研究チームも、はじめからこの面がいちばん強く結びつくと予想しており、結果はその見立てと合うものでした。


さらに、この結びつきは男の子よりも女の子で強く表れていました。


なお、1年後のCU特性の点数そのものは、男の子のほうが女の子よりやや高い傾向がありました。


ただし今回の研究は、母親の性格がなぜ子どもの冷たさと結びつくのかまでは答えていません。


遺伝で受け継がれたのか、家庭での育て方を通してなのか、あるいはその両方なのかは、今回のデータでは区別できないのです。


また、調べたのは素行障害と診断された10代とその母親だけで、父親は3人しか参加しなかったため分析から外されています。


それでも研究チームは、親の性格、とくに感情の面の冷たさが、子どもの冷たさの行方と関わる大切な「家族のリスクの目印」になりうると考えています。


これは「母親のせい」と決めつける結果ではなく、子どもの冷たさを本人だけでなく家族ごと見つめる視点が大切だと教えてくれる結果と言えるでしょう。


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参考文献

Maternal psychopathic traits predict teens’ callous-unemotional traits a year later (PsyPost)
https://www.psypost.org/maternal-psychopathic-traits-predict-teens-callous-unemotional-traits-a-year-later/

元論文

Maternal psychopathic traits prospectively predict youth callous-unemotional traits
https://doi.org/10.3389/frcha.2026.1894994

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 問題行動のある子の「1年後の冷たさ」と「母の性格」 」