見た目を気にする女性の孤独、実は「同性との張り合い」が絡んでいた
友だちと撮った写真を見返して、まず自分の顔の写り具合だけを確かめてしまうことがあります。
こうした「人からどう見えるか」を気にする気持ちは、多くの人が少しは持っているものでしょう。
心理学では、自分を見た目で評価してしまう心の働きを「自己客体化(じこきゃくたいか)」と呼びます。
この心の働きが強い女性ほど孤独を感じやすいのかについては、これまでの研究では結果がそろっていませんでした。
そこで今回、ある研究チームが「人とのやりとり」に目を向けて、この関係を見直しました。
見た目を気にする気持ちが強まったとき、女性の人づきあいの中では何が起きているのでしょうか。
研究内容の詳細は2026年9月25日に『Archives of Sexual Behavior』にて発表されました。
目次
- 「見た目を気にする心」と孤独の関係はあいまいだった
- 孤独を深めていたのは「同性」と「異性」、どちらとの関係か?
「見た目を気にする心」と孤独の関係はあいまいだった
女性の自己客体化は、もともと人とのやりとりの中に組み込まれた心の働きです。
それにもかかわらず、自己客体化が人間関係にどんな結果をもたらすのかを調べた研究は、ほとんどありませんでした。
一方で、孤独もまた、人と人とのあいだで起こりやすい気持ちです。
過去には自己客体化と孤独を結びつけた研究もありましたが、その説明は本人の心の中だけで完結する話として語られてきました。
そこで今回の研究は、「人とのやりとり」という目線から、自己客体化と孤独の関係をとらえ直そうとしました。
注目したのは、相手が女性のときと男性のときに働く、2つの心の動きです。
1つは、女性とやりとりするときの「同性間競争」、つまり同性と張り合おうとする傾向です。
もう1つは、男性とやりとりするときの「恋愛の解釈バイアス」、つまり相手の言動を恋愛がらみの意味に受け取りやすい、いわば「恋の深読み」の傾向です。
研究チームは、この2つが、見た目を気にする気持ちと孤独を結ぶ「つなぎ役」になっているのかを確かめようとしました。
調べ方は2通りで、1つは女子大学生に7日間の日記をつけてもらう調査、もう1つは実験です。
はたして、つなぎ役になっていたのは、同性との関係と異性との関係のどちらだったのでしょうか。
孤独を深めていたのは「同性」と「異性」、どちらとの関係か?
まず日記調査では、女子大学生に7日間にわたって、日ごとの気持ちを答えてもらいました。
その結果、自分を見た目で評価する気持ちがとくに強かった日には、同性と張り合う傾向が強まり、それを通してその日の孤独感も高まっていました。
この結びつきは、もともとの見た目を気にしやすい性格、自分の魅力をどう感じているか、社会的望ましさ(自分がよく見えるように答えてしまう傾向)、恋人の有無などを差し引いても見られました。
つまり「もともと見た目を気にするタイプだから孤独」という話だけではなく、見た目を気にする気持ちが強い日ほど、同性との張り合いを通して孤独になりやすかったのです。
続く実験では、女性の一部に、自分を見た目で評価する気持ちが強くなるような働きかけを行いました。
すると、その女性たちは同性と張り合う傾向が強く、孤独感も高まっていました。
こちらも、自分の魅力の感じ方、社会的望ましさ、恋人との関係への満足度、恋人の有無などを差し引いたうえでの結果です。
では、もう1つの「恋の深読み」はどうだったのでしょうか。
2つの研究のどちらでも、自分を見た目で評価する気持ちが強いと、恋の深読みが強まることは確かめられました。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(女性の嫉妬心が強まる「恋のライバルの顔」が明らかに)
ただし、恋の深読みから、孤独が減ることは予測できませんでした。
今回、見た目を気にする気持ちと孤独を結ぶ道すじとして浮かび上がったのは、同性との張り合いのほうだったのです。
研究チームは、この成果が自己客体化の「人間関係への影響」を探るものであり、女性の孤独を減らす取り組みに方向性を示すとしています。
見た目の悩みは、つい鏡と自分とのあいだだけの問題だと思われがちです。
けれど、そのまなざしが周りの同性へと向かい、人との距離を少しずつ広げている場合もあるのかもしれません。
鏡を見る回数が増えてきたなと感じたら、たまには鏡ではなく友だちの顔を見て笑ってみるのもよさそうです。
参考文献
Reframing Self-Objectified Women’s Loneliness Experience: The Mediating Roles of Intrasexual Competition and Romantic Interpretation Bias (Archives of Sexual Behavior)
https://doi.org/10.1007/s10508-026-03533-y
元論文
Reframing Self-Objectified Women’s Loneliness Experience: The Mediating Roles of Intrasexual Competition and Romantic Interpretation Bias
https://doi.org/10.1007/s10508-026-03533-y
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部