明日も早いのに、時計を見るたびに「あと何時間眠れるか」を計算してしまう夜があります。


眠れない夜は、翌日が少しつらくなるだけのものだと思われがちです。


しかし不眠の影響は、寝不足や昼間のだるさだけにとどまらないかもしれません。


欧州神経学会(EAN)の資金による研究で、イタリアのボローニャ神経科学研究所のルカ・ヴィニャテッリ氏らは、不眠と脳や心、体の健康との関係を調べた研究を幅広く集め、まとめ直しました。


では、眠れない夜が続く人は、どんな病気とつながっていたのでしょうか。


研究内容の詳細は2026年9月1日に『Sleep Medicine Reviews』にて発表されました。




目次



  • 眠れない悩みと健康の関係を「まとめ研究」で見渡す
  • 不眠とつながっていた「ある病気」とは?

眠れない悩みと健康の関係を「まとめ研究」で見渡す


眠れない悩みと健康の関係を「まとめ研究」で見渡す / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

ここで言う「不眠症」は、夜ふかしをして眠る時間が足りない状態とは違います。


眠る時間も機会も十分にあるのに、寝つけなかったり途中で目が覚めたりして、昼間の生活にも支障が出ている状態のことです。


以前のメタ分析(複数の研究の結果を合わせて計算し直す方法)では、国際的な診断基準を満たす不眠症の人は、一般の人のおよそ22%にのぼると見積もられています。


以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(不眠症の原因が判明!眠れないのは「街の灯」のせい)


決して一部の人だけの悩みではないのです。


今回のチームは、医学研究の大きなデータベース2つを検索し、不眠が将来の健康とどう結びつくかを調べた研究を探しました。


集めたのは、システマティックレビュー(決まった手順で関係する研究を漏れなく集めて整理する方法)とメタ分析を組み合わせた「まとめ研究」です。


今回はそのまとめ研究をさらに束ねる形で、16本を取り込みました。


調べた健康上のできごとは、認知症、脳卒中、うつ、自殺、死亡、仕事に関わるけが、入院の7つです。


ただし脳卒中、仕事に関わるけが、入院の3つについては、発表済みのまとめ研究が見つかりませんでした。


そこでチームは、この3つについて元の研究を自分たちで集め、新しいシステマティックレビューを3本おこないました。ただし仕事に関わるけがについては、結果を合わせて計算するメタ分析まではできませんでした。


こうして、不眠と7つのできごととの関係を、ひとつの地図のように見渡せるようにしたのです。


不眠とつながっていた「ある病気」とは?


不眠とつながっていた「ある病気」とは? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

結論から言うと、不眠症の人は脳卒中のリスクが26%高いという関係が見られました。


この分析では9本の研究・約134万人分のデータを集め、そのうち6本の結果を合わせて計算しています。


ただし、この関係の強さは研究ごとに大きくばらついていました。


入院についても5本の研究・約52万人分を集め、そのうち3本の結果をまとめました。


すると不眠症の人は、理由を問わず入院するオッズ(入院する人としない人の比で表した指標)が28%高くなっていました。


既存のまとめ研究からは、不眠とうつ、自殺に関わる行動との関連もくり返し確認されました。


認知症についても、多くのまとめ研究が不眠との関連を見つけていましたが、すべての研究で結果がそろっていたわけではありません。


中でもアルツハイマー病では関連がより一貫して見られた一方、認知症の種類によっては結果がまちまちでした。


反対に、死亡については不眠との関連は見られませんでした。


仕事に関わるけがは、見つかった研究が2本(約14万人分)しかなく、結果を合わせて計算することはできませんでした。


思いがけず命を落とす事故や通勤中のけがとの関連は見られたものの、結論を出すにはデータが足りないとされています。


もっとも、これらはあくまで「関連」であり、不眠が脳卒中などを直接引き起こすと示したわけではありません。


研究者たちも、研究ごとに不眠症の決め方が違っていたことや、睡眠薬の使用があまり考慮されていなかったことを、結果を読むうえでの注意点に挙げています。


それでもヴィニャテッリ氏は「不眠症は、脳と心の健康状態を知らせる警告サインとして注目に値する」と述べています。


以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(通勤時間が長いと「不眠症」になりやすい、さらに「家の広さ」も関係)


共著者のステファン・ザイデル教授も「睡眠は、あらゆる年齢で脳の健康をめぐる話題の一部であるべきだ」と語りました。


チームは、診療の場で不眠にもっと目を向けることや、地域や学校、職場の健康づくりに睡眠を取り入れることを勧めています。


眠れない夜は「明日がつらいだけ」の問題ではなく、脳や心の調子を映す目印のようなものなのかもしれません。


とはいえ、この記事を読んで心配になり、かえって眠れなくなっては本末転倒なので、今夜は早めにスマホを置いてしまいましょう。


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参考文献

EurekAlert! (EurekAlert!)
https://www.eurekalert.org/news-releases/1145068

元論文

Insomnia as risk factor for brain, mental and general health consequences: an umbrella systematic review
https://doi.org/10.1016/j.smrv.2026.102372

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 不眠症の人は脳卒中のリスクが26%高いと判明 」