自閉的な特性が強い人ほど恋愛で避けがちな「ある行動」
記念日に手の込んだサプライズを用意する恋人もいれば、いつも通りの夜を静かに過ごしたい恋人もいます。
恋人との関係を保つための振る舞いは、人によってかなり違うものです。
その違いの背景の一つとして注目されているのが、「自閉的な特性」と呼ばれる性格や考え方の傾向です。
では、自閉的な特性が強い人は、恋人をつなぎとめるためにどんな行動を選びやすいのでしょうか。
ポーランドのジェシュフ大学(University of Rzeszow)の研究チームは、成人796人を対象にこの問いを調べました。
研究内容の詳細は2026年7月1日に『Evolutionary Psychology』にて発表されました。
目次
- 恋人を「つなぎとめる」2種類の行動
- 自閉的な特性が強い人は、どんな引き止め方を選んでいた?
- 特性と引き止め行動をつなぐ「橋」は何だった?
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恋人を「つなぎとめる」2種類の行動
自閉的な特性とは、人付き合いやコミュニケーションの苦手さ、考え方のこだわりの強さなど、自閉症に関係する特徴のことです。
研究を率いたアンジェイ・ウカシク氏は、こうした特性は一般の人にもさまざまな程度で見られ、障害とはみなされないと説明しています。
チームが注目したのは、恋人が離れていかないようにするための「引き止め行動」です。
引き止め行動は、大きく2つに分けられます。
1つは、愛情を示す、ほめる、贈り物をする、支えるといった「相手に得を与える」やり方です。
もう1つは、嫉妬させる、束縛する、脅すといった「相手に負担をかける」やり方です。
チームは、どちらを選ぶかは、その人の「愛着スタイル」(人との心のきずなの結び方のくせ)に大きく左右されると考えました。
たとえば不安型の人は近さを強く求めて距離に敏感になりやすく、回避型の人は心の近さを居心地悪く感じて独立を大事にしやすいとされます。
さらにチームは、限られた時間とエネルギーをどう振り分けるかという進化の考え方からも、この問題を見ました。
この考え方では、多くの相手と短い関係を持つことに力を注ぐ「速い戦略」と、一人の相手と子どもに長く力を注ぐ「遅い戦略」があるとされます。
以前の研究では、自閉的な特性は「遅い戦略」と結びつくのではないかと考えられていました。
ところが自閉的な特性は不安型や回避型の愛着とも結びついており、こうした愛着はむしろ「速い戦略」の特徴と重なりやすいとされてきました。
そこでチームは、自閉的な特性が強い人は「速い戦略」を好み、それに合った特有の引き止め行動をとるのではないかと予想したのです。
自閉的な特性が強い人は、どんな引き止め方を選んでいた?
チームは、ポーランドの一地域に住み、恋人と3か月以上つきあっている成人796人(女性52%、平均36.4歳)にアンケートに答えてもらいました。
アンケートでは、自閉的な特性の強さ、愛着スタイル、引き止め行動の頻度、そして「速い戦略」と「遅い戦略」の傾向を測りました。
そのうえで、たくさんの要素のつながりを一度に調べる統計の方法で分析しました。
その結果、自閉的な特性が強い人ほど、嫉妬させる・束縛する・脅すといった「負担をかける」引き止め方をとりにくい傾向が見られました。
一方で、愛情を示す・ほめるといった「得を与える」引き止め方とのあいだには、今回の研究ではっきりした関連は見つかりませんでした。
ただし、研究を紹介した海外の心理学ニュースサイトによると、年齢の影響を取り除いて分析した場合には、特性が強い人ほど「負担をかける」やり方をわずかに多く使う可能性も示されたといいます。
年齢が高い人はもともと負担をかけるやり方をあまり使わないため、年齢がこの関連を覆い隠していたと考えられるそうです。
特性と引き止め行動をつなぐ「橋」は何だった?
また、自閉的な特性が強い人ほど、相手が離れることへの不安と、心の近さへの苦手意識の両方が強い傾向も見られました。
これは、相手が去ることを心配しながら、同時に心の距離が縮まることにも戸惑いやすい姿を示していると考えられます。
そして自閉的な特性は、「速い戦略」や「遅い戦略」よりも、愛着スタイルのほうとより強く結びついていました。
予想に反して、特性が強い人ほど「速い戦略」をとりやすい、あるいは「遅い戦略」をとりにくいという関係は確かめられませんでした。
追加の分析では「速い戦略」とのつながりをうかがわせる結果も出ましたが、ウカシク氏は特性とこうした戦略との関係は弱かったと述べています。
つまり、自閉的な特性と恋人への振る舞いをつなぐ「橋」の役目をしていたのは、進化の戦略よりも愛着スタイルのほうだったのです。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(別れた恋人への「感情の引きずり」はどのくらい続くのか?)
なお、性別によってこうした関係が変わるという結果は得られませんでした。
また年齢が高い人ほど、見捨てられる不安や「速い戦略」の傾向、引き止め行動が少なく、「遅い戦略」の傾向が強いことも分かりました。
もちろん、この研究には限界もあります。
チーム自身は、自閉的な特性から「速い戦略」「遅い戦略」を予測する力が弱かった点を大きな限界とし、今後は別の測り方が必要だとしています。
また今回の結果は、ポーランドの一地域の人たちのアンケートから見えた「関連」であり、特性が行動の原因だと言い切れるものではありません。
それでも今回の研究は、恋人との関係の保ち方の違いを考えるうえで、心の距離の取り方に目を向ける手がかりを与えています。
恋人の振る舞いがそっけなく見えるときも、その裏には、相手との近さをどう感じるかというその人なりの心のくせがあるのかもしれません。
もちろん逆に、記念日を忘れた言い訳に「私の愛着スタイルが」と言い出すのも、たぶん逆効果です。
参考文献
People with higher autistic traits tend to avoid positive relationship-maintenance tactics (PsyPost)
https://www.psypost.org/people-with-higher-autistic-traits-tend-to-avoid-positive-relationship-maintenance-tactics/
元論文
Autistic-Like Traits in Members of the General Population and Mate Retention Tactics: The Mediation of Attachment Styles and Reproductive Strategies
https://doi.org/10.1177/14747049261473640
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部