新しい服を見せられて「似合う?」と聞かれ、心の中の本音をそっと飲み込んだことがある人もいるでしょう。


恋人同士のあいだでは、正直さは信頼の土台だと広く考えられています。


その一方で、本当のことを言うと相手をむだに傷つけそうな場面では、正直一択が最善とは限らないとも考えられています。


では、恋人から「本当のこと」と「嘘」のどちらを聞きたいかは、ふたりの関係がうまくいっているかどうかで変わるのでしょうか。


ある研究チームは、恋人がいてポーランドに住む672人を対象に、この問いを調べました。


研究内容の詳細は2026年1月10日に『The Journal of Social Psychology』にて発表されました。




目次



  • 672人に「恋人から聞きたいのは嘘か本当か」を選んでもらった
  • 関係に満足していない人が恋人に求めていた言葉とは?

672人に「恋人から聞きたいのは嘘か本当か」を選んでもらった


672人に「恋人から聞きたいのは嘘か本当か」を選んでもらった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

嘘といっても、その中身はひとつではありません。


相手を思ってつく嘘は「向社会的な嘘(相手の得になるようにつく嘘)」と呼ばれ、自分のためにつく嘘よりも好意的に受け止められやすいとされています。


反対に、主に嘘をつく本人の得になる嘘は「利己的な嘘」と呼ばれます。


恋人同士では、相手のための嘘が相手の気持ちや自尊心を守り、ふたりの和を保つのに役立つこともあります。


また、自分や相手、ふたりの関係を実際より少しよく見る「ポジティブな思い込み」を支えることもあると考えられています。


そして、つらい本音を受け止められるかどうかには、「レジリエンス(ストレスや困難から立ち直る力)」も関わっているかもしれません。


研究チームは、関係に満足している人ほど相手のための嘘を聞きたがり、立ち直る力が弱い人ほどその傾向が強いだろうと予想しました。


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調べたのは、ポーランドに住み、1年以上交際している672人(女性336人、平均46歳)です。


参加者はまず、自分と恋人が登場する6つの場面の物語を読みました。物語は予備調査を経て用意されたものです。


そのうち3つは恋人が「自分のための嘘(恋人自身の得になる嘘)」か「本当のこと」を、残りの3つは「相手のための嘘(参加者の得になる嘘)」か「本当のこと」を選べる場面です。


参加者は場面ごとに、恋人からどちらを聞きたいかを選びました。


さらに、関係への満足度や立ち直る力、相手との近さ、露骨な本当のことが関係にどう響くと思うかなどをアンケートで答えました。


では、関係への満足度によって、聞きたい言葉はどう変わっていたのでしょうか。


関係に満足していない人が恋人に求めていた言葉とは?


関係に満足していない人が恋人に求めていた言葉とは? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まず全体として、参加者は、恋人が恋人自身のためにつく嘘よりも、相手(参加者)のためにつく嘘のほうを好んでいました。


そして肝心の満足度との関係は、研究チームの予想とは逆向きでした。


相手のための嘘でも自分のための嘘でも、嘘を聞きたがる人ほど、関係への満足度がやや低い傾向があったのです。


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こうした人たちは、露骨な本当のことを関係にとって有害だと感じやすく、本当のことを聞きたい気持ちも弱い傾向がありました。


また、自分も恋人に相手のための嘘をつきそうだと考える傾向も見られました。


自分のための嘘を好む人では、恋人との近さをやや低く感じている傾向もありました。


研究チームは次に、統計のモデルを使って、これらのつながり方を調べました。


その結果、関係への満足度が低いと本当のことを有害だと感じやすくなり、それが相手のための嘘を好むことにつながる、という流れがありうることが示されました。


この流れには、立ち直る力も関わっていました。


この流れは立ち直る力が平均的な人や高い人で見られ、立ち直る力が高い人ほど、満足度の低さと「本当のことは有害」という感じ方の結びつきが強かったのです。


研究チームはこうまとめています。相手のための嘘は満足している関係では望まれにくい一方、満足度が低く本当のことを有害だと感じるときには、正直なやりとりよりもポジティブな思い込みが好まれるのかもしれない、と。


ただし、この研究のやり方では、どちらが原因でどちらが結果なのかまでは言えないと指摘されています。


また、対象はポーランドに住む人に限られています。


恋人から嘘を聞きたい気持ちは、関係への満足度が低いことと結びついていました。


裏を返せば、関係への満足度が高い人ほど、相手のための嘘を聞きたがる傾向は弱かったことになります。


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参考文献

People in strained relationships show somewhat higher preference for hearing lies (PsyPost)
https://www.psypost.org/people-in-strained-relationships-show-somewhat-higher-preference-for-hearing-lies/

元論文

If I cannot bounce back easily, can I handle the truth? Satisfaction in romantic relationships, resilience and preference towards prosocial lies
https://doi.org/10.1080/00224545.2025.2607672

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 恋人の「嘘」を好む? ―― 恋人関係に不満がある人ほどその傾向 」