ネットのポルノにハマりやすい人の「3つの性格特性」
「あと1本だけ」と動画を開き続けて、気づけば窓の外が白みはじめていた夜があるかもしれません。
インターネットのポルノは広く手軽に見られ、多くの大人が息抜きや好奇心から利用しています。
たいていは気軽な楽しみにとどまりますが、一部の人は心理学でいう「問題のある利用」に陥ってしまいます。
これは、強い苦しさや「やめられない」という感覚をともない、生活や人間関係に悪い影響が出てしまう状態です。
では、ポルノとの付き合い方がこじれやすい人には、どんな性格の特徴があるのでしょうか。
イランのハラズミ大学の臨床心理学者メフディ・アクバリ氏らは、過去の研究をまとめて分析し、この問いに迫りました。
研究内容の詳細は2024年10月29日に『Communication Research』にて発表されました。
目次
- 51件の研究を「束ねて」見えてくるもの
- ポルノとの付き合いがこじれやすい人に共通していた性格とは?
- ブレーキ役の性格と、「よく見る」と「こじれる」の違い
51件の研究を「束ねて」見えてくるもの
ネットのポルノと性格の関係については、これまでにも多くの研究が行われてきました。
しかし、それらの結果をひとつにまとめた分析は、まだありませんでした。
そこでチームが用いたのが「メタ分析」です。
メタ分析とは、別々に行われた複数の研究の結果を統計的に合わせ、大きな傾向を見つけ出す方法のことです。
チームは学術データベースから、ポルノの利用と、性格や「愛着スタイル」をあわせて測った研究を集めました。
愛着スタイルとは、人が他人とどう心の結びつきを作るかのパターンで、「安定型」「不安型」「回避型」などに分けられます。
最終的に集まったのは2005年から2024年に発表された51件の研究で、参加者はさまざまな国の計4万5808人でした。
平均年齢は約38歳、女性の割合は約35%です。
性格は、外向性・協調性・開放性・誠実性・神経症傾向の5つの面から人を測る「ビッグファイブ」という物差しでも調べられました。
さらにチームは、元の研究の測り方にもとづいて、データを「一般的な利用」と「問題のある利用」の2つに分けました。
こうすれば、ただ見ることと、こじれてしまうことを分けて比べられます。
では、ポルノの利用と特に強く結びついていたのは、どんな性格だったのでしょうか。
ポルノとの付き合いがこじれやすい人に共通していた性格とは?
分析の結果、データ全体でもっとも強くポルノの利用と結びついていたのは「性的な強迫性」でした。
性的な強迫性とは、性的な行動をしたいという衝動が頭から離れず、何度もわき上がってしまう性質のことです。
関連の強さを表す数値(相関係数)は、性的な強迫性が0.372でもっとも大きく、次いで「衝動性」が0.273でした。
衝動性とは、先の計画や長い目で見た結果を考えずに行動してしまう傾向のことです。
「問題のある利用」に絞っても、性的な強迫性と衝動性は、統計的にはっきりしたプラスの関連を示しました。
さらに注目したいのが、「神経症傾向」も問題のある利用とプラスの関連を示していたことです。
神経症傾向とは、不安や悲しみといった嫌な気持ちを感じやすい性格のことで、一般的な利用ともプラスの関連がありました。
こうした人は、つらい気持ちをやわらげたり、そこから逃れたりする手段として、ネット上の性的なコンテンツに向かっている可能性があると考えられています。
愛着スタイルでは、「不安型の愛着」が問題のある利用と結びついていました。
不安型の愛着をもつ人は、恋人に拒まれたり見捨てられたりすることを心配しやすい傾向があります。
研究者たちは、ポルノなら人から拒まれる心配なしに性的な刺激が得られるため、こうした人に好まれるのかもしれないと指摘しています。
ブレーキ役の性格と、「よく見る」と「こじれる」の違い
一方で、ポルノの利用が少ないことと結びついていた性格もありました。
それが「誠実性」と「自制心」です。
誠実性とは、目標に向かって物事をきちんと整え、楽しみを後回しにできる性質のことです。
誠実性が高い人ほど、一般的な利用も問題のある利用も少ない傾向がありました。
自分を律する力が、行動がやめられなくなることを防ぐクッションのように働いている可能性がうかがえます。
また、他人と協力して穏やかに付き合える「協調性」の高さも、全体的な利用の少なさと結びついていました。
研究者たちは、協調性の高い人は現実の人間関係がうまくいきやすく、寂しさや満たされない気持ちを埋める手段としてネットに頼りにくいのかもしれないと述べています。
その一方、自己愛(自分に強く目を向ける傾向)や、新しい刺激を求める傾向は、ポルノの利用全体とプラスの関連を示しました。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(ポルノを頻繁に見る人ほど「うつ症状」が強い傾向)
外向性や開放性も一般的な利用とはプラスの関連がありましたが、問題のある利用とは統計的にはっきりした関連が見られませんでした。
つまり、「よく見る」ことと結びつく性格と、「こじれてしまう」ことと結びつく性格は、必ずしも同じではなかったのです。
また、ポルノの利用はふつう女性より男性に多いものの、性格と利用の結びつきの強さは男女で変わらず、年齢層による違いも見られませんでした。
ただし、この研究は観察されたデータをまとめたもので、分かったのはあくまで「関連」です。
特定の性格が問題のある利用を引き起こすとまでは言えず、関係の向きが逆である可能性も残されています。
また、神経症傾向との関連の強さは、元の研究がポルノの利用をどれだけ一貫して測れていたかによって変わっていました。
それでも、こうした知見は、支えが必要な人を専門家が見つけたり、よりよい治療を考えたりする手がかりになると期待されています。
ポルノとの付き合い方がこじれるかどうかは、衝動の強さや不安の感じやすさといった、その人の心の特徴と結びついているのかもしれません。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(『HENTAI』愛好家を真面目に心理分析した論文~人間のポルノと影響を同列に考えるべきではない~)
とりあえず今夜は、スマホを枕元から少し遠くに置くところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Large analysis connects specific personality traits to problematic internet pornography use (PsyPost)
https://www.psypost.org/personality-traits-linked-to-problematic-internet-pornography-use/
元論文
Personality, Attachment, and Pornography: A Meta-Analysis
https://doi.org/10.1177/00936502241287834
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部