オーストリアのインスブルック大学(UIBK)などで行われた研究によって、恋人たちは性格や価値観よりも音楽の好みのほうがよく似ていることが明らかになりました。


相性といえば性格、というのが定番の見方です。


ところが309組のカップルを調べた今回の結果では、性格の似ぐあいは、参加者を無作為に組み合わせただけの他人のペアとほとんど変わりませんでした。


論文では、音楽の好みで見られた一致度は珍しいほど高く、知能や政治志向、宗教、学歴といった、ごく限られた項目で報告されてきた水準だと記述されています。


なぜ性格ではなく、音楽だったのでしょうか。


研究内容の詳細は2026年8月12日に『Social Psychological and Personality Science』にて発表されました。




目次



  • 「性格が似た者同士」で結ばれる、とは限らない
  • 恋人同士の音楽の一致度は知能や学歴に匹敵する
  • 好きなバンドが重なる2人は仲も良くなる

「性格が似た者同士」で結ばれる、とは限らない


「性格が似た者同士」で結ばれる、とは限らない / Credit:Canva

恋人との相性が話題になると、たいてい性格の話になります。


おおらかな人と神経質な人は続くのか、似た者同士のほうがうまくいくのか。


性格診断の結果を見せ合うのは、いまや定番の遊びです。


ところがこれまでの研究では、パートナー同士は年齢や学歴、価値観、知能などでははっきり似ているのに、性格の似方は小さいか、研究によって結果がばらつくことが分かっていました。


明るい人は明るい人と、慎重な人は慎重な人と結ばれる、とは限らないのです。


では、恋人たちは性格以外のどこで似ているのでしょうか。


研究チームが目をつけたのが、音楽の好みです。


好きな音楽は、自分が何者かを周りに伝える名刺代わりになっていると考えられています。


実際、人は相手の好きな音楽から、その人の性格や価値観をある程度正確に読み取れることが分かっています。


そのためマッチングアプリのTinderなどでは、プロフィールに好きな曲を載せられるようにしています。


また、音楽の好みを手がかりに相手を引き合わせるアプリも登場しています。


また別の研究では、交際中のカップルのおよそ6割が、「二人の曲」と呼べる1曲を持っているという報告もあります。


それなのに、恋人同士の音楽の好みがどれほど似ているのかは、ほとんど調べられてきませんでした。


そこで今回、インスブルック大学で人格心理学を専門とするマルセル・ツェントナー氏らは、この問いを厳密な方法で調べることにしたのです。


恋人同士の音楽の一致度は知能や学歴に匹敵する


恋人同士の音楽の一致度は知能や学歴に匹敵する / Credit:Canva

調査に参加したのは、ドイツとオーストリアを中心とする309組のパートナー、618人です。


参加者の多くは若い成人で、平均年齢はおよそ25歳から31歳でした。


研究ではまず、さまざまな音楽ジャンルをどれだけ好きかを7段階で評価し、好きなアーティストを3組まで、嫌いなアーティストも3組まで名前で挙げてもらいました。


挙がった名前は、音楽サイトLast.fmに集まったタグや「似たアーティスト」の情報と突き合わせました。


こうすれば、2人が別々のバンドを挙げていても、作風がどれだけ重なっているかを測れます。


同時に性格と価値観、そして関係の質を測る質問にも、それぞれ答えてもらいました。


また比較のために恋人同士の組み合わせをいったん全部ほどき、参加者を無作為に組み直した「にせカップル」(疑似カップル)を5000回作りました。


AさんとBさんが本当のカップルの場合「AさんとCさん」や「BさんとDさん」といった偽の組み合わせを作って、本物のカップルの性格や音楽の一致度と比較したわけです。


ただ同じ国の同じ世代なら、恋人でなくても好きな音楽はそれなりに重なりそうです。


そこで研究チームは、恋人同士の組み合わせをいったん全部ほどき、参加者を無作為に組み直した「にせカップル」(疑似カップル)を5000回作りました。


AさんとBさんが本当のカップルの場合「AさんとCさん」や「BさんとDさん」といった偽の組み合わせを作って、本物のカップルの性格や音楽の一致度と比較したわけです。


似ぐあいは、二人の答え方に共通した傾向がなければ0、似た傾向ほど1に近づく物差しで表されました。


結果、意外な事実が見えてきました。


まず音楽の好みは、無作為に組み合わせただけの他人のペアでは一致度が0.2ほどなのに、本物のカップルでは0.45前後まで跳ね上がったのです。


また価値観を見ると、本物のカップルの一致度はおよそ0.5に対して、無作為に組んだ他人同士のペアも0.45ほどに達しており、差は小さなものでした。


さらに性格にいたっては、本物と偽物の差はないに等しいものでした。


次に研究チームは、一致度についてさらに詳しくみる分析を行いました。


たとえば音楽の場合、特定のアイドルユニットの曲が世間を席巻しているとき、2人の好みの両方にそのアイドルユニットの曲が入り込んでしまう場合があります。


性格や価値観といったものも、同様な影響を受けかねません。


そこで研究者たちは世の中の平均的な好みと重なる部分を差し引き、その人ならではの部分で比較を行いました。


すると偽物のカップル同士の一致度は性格、価値観、音楽でほぼ0となりました。


一方で、3つの調査をまとめると、本物のカップルの一致度は、性格でほぼ0、価値観で0.12、音楽で0.26が残りました。


文化がそろえてくれる分を取り除くと、価値観の一致は大きく目減りし、二人に固有の一致がもっとも色濃く残ったのは音楽でした。


では、本物と偽物のこの開きは、どれくらい大きいものなのでしょうか。


研究者たちが比較のための操作を行うと、音楽の好みは恋人同士でそろうことが知られている知能や政治志向、宗教、学歴と、ちょうど肩を並べる高さであることがわかりました。


好きなバンドが重なる2人は仲も良くなる


好きなバンドが重なる2人は仲も良くなる / Credit:Canva

では、音楽がそろっている2人は、実際に仲がいいのでしょうか。


恋人同士と言っても、その仲の良さレベルは様々で、恋人であるかどうかとはまた別問題だからです。


そこで研究では、音楽がそろっているときの仲の良さに与える影響を調べました。


研究をまとめると、調べた「似ぐあい」のうち、関係の良好さと結びついていたものが1つだけありました。


好きなアーティストの重なりです。


ジャンルの好みの一致でも、性格の一致でも、価値観の一致でもありませんでした。


ジャンルよりアーティストのほうが効いたのは、名前のほうが曖昧さが小さいからだろうと論文は説明しています。


「ロックが好き」と答えたとき、二人が思い浮かべている音は同じとは限りません。


けれどもバンド名を3組まで挙げてもらえば、その人が実際に何を聴いているのかは、ずっとはっきりします。


また、好きな音楽が重なると何が起きるのかについて、論文は二つの筋道を挙げています。


一つは、単純に一緒に過ごす時間です。


同じ曲を流し、同じライブに出かける。


そうやって生まれる時間の質は、関係の満足度をよく予測することが分かっています。


もう一つは、音楽の好みが、感情の扱い方まで映している可能性です。


音楽は気分を切り替えたり、落ち込みをやり過ごしたりする道具でもあるので、好みが近いことは、感情の必要としているものが近いことの表れかもしれません。


それが、互いの理解しやすさや話の通じやすさにつながっている、という見立てです。


もっともツェントナー教授は、好きなバンドが食い違っている二人が落胆する必要はないと念を押しています。


今回の研究が捉えたのは相関であって、個人の恋の行方を決めるものではないからです。


それでも恋人同士の音楽の好みが、性格も価値観も上回るという結果は、多くの人々やマッチングアプリの開発において有用なデータとなるでしょう。


音楽は2人の相性をのぞく窓として、案外理にかなっているのかもしれません。


研究チームは次に、オンラインデートの実験や、交際を始めたばかりのカップルを18カ月にわたって追いかける調査を進め、最初から好みの似た相手に惹かれるのか、一緒に過ごすうちに好みが溶け合っていくのかを確かめる計画です。


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元論文

Harmonies of Taste: Shared Music Preferences and Compatibility in Romantic Relationships
https://doi.org/10.1177/19485506261472146

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 恋人同士は「性格」より「音楽の好み」が似ている――309組を調査 」