仲間外れで見える、「スマホを使いすぎる人」の脳の特徴
グループのトークで自分だけ返事がもらえず、つい何度もスマホの画面を開き直してしまう。
スマホを使いすぎている若者は、仲間外れにされたときの脳の反応が、そうでない若者と違っていました。
ドイツのハイデルベルク大学の研究チームが、18〜30歳の41人の脳の働きを調べて明らかにしました。
使いすぎのグループでは、痛みを処理する働きに深く関わる脳の場所が、仲間外れのときにより強く働いていたのです。
スマホを手放せない理由を、「ごほうび」ではなく「人とのつながり」の側から探った研究です。
ただし、少ない人数で行われた研究で、示されたのは2つのグループの脳の働きの違いです。
研究内容の詳細は2025年11月15日に『Computers in Human Behavior』にて発表されました。
目次
- スマホの使いすぎを「人とのつながり」から見直す
- 装置の中で、どうやって仲間外れにしたの?
- 脳の働き方の違いは、何を意味しているの?
スマホの使いすぎを「人とのつながり」から見直す
スマホを手放せなくなる「スマホの使いすぎ」は、ほかの依存症とよく似た状態だと考えられるようになってきています。
これまでの脳の研究は、おもに「ごほうびを求める仕組み」や「自分を抑える仕組み」に目を向けてきました。
一方で、人とのつながりに関わる脳の働きは、あまり調べられてきませんでした。
でも考えてみると、スマホのアプリの多くは、人とやりとりし、いつでもつながっていられるように作られています。
今では、ネットでのつながりは「自分はこの輪の中にいる」と感じるための大事な柱になっています。
そして、輪から外されたと感じると、人は体の痛みに似たつらさを味わうことがあるとされています。
では、スマホを使いすぎる人が仲間外れにされたとき、その脳では何が起きているのでしょうか?
これを調べたのが、ハイデルベルク大学の精神科医ロバート・C・ウルフさんたちのチームです。
チームは18〜30歳の若い大人41人に、スマホの使いすぎを測る決まった質問票に答えてもらいました。
質問票では、使えないときのつらさや、画面を見る時間がだんだん増えていくこと、暮らしへの影響などを調べます。
その点数から、23人を「使いすぎのグループ」、18人を「比べるためのグループ」に分けました。
そして全員に、脳の中の血の流れを見て、どこがよく働いているかを調べる装置(fMRI)に入ってもらいました。
その装置の中で、わざと仲間外れにされる体験をしてもらったのです。
違いがはっきり出たのは、右側の「中部帯状皮質(ちゅうぶたいじょうひしつ)」という場所でした。
ここは、仲間外れにされたときの心のチクッとした痛みも含めて、痛みを処理する働きに深く関わっています。
もしスマホを使いすぎる人がこの痛みに敏感なら、スマホを手放せない理由の一部は、そこにあるのかもしれません。
ただし、調べたのは若い大人41人だけで、研究を紹介した記事でも「小規模な研究」とされています。
それにしても、大きな装置の中にいる人を、どうやって仲間外れにしたのでしょうか?
次のページで、その仕掛けを紹介します。
装置の中で、どうやって仲間外れにしたの?
使われたのは「サイバーボール」という、画面の中でボールを投げ合うゲームです。
参加者は、ほかの2人とオンラインでボールを回していると聞かされていました。
本物らしく見せるため、ゲームの始めには、ネットにつないでいる途中だと伝える読み込み画面が出ました。
画面には、一緒に遊ぶ相手として、人工知能(AI)で作った顔写真まで表示されていました。
でも実は、相手の2人はコンピューターのプログラムが動かしていました。
ゲームは、決まった流れでいくつかの場面に分かれています。
「仲間に入れる場面」では、相手の2人は参加者にもふつうにボールを投げてくれます。
ところが「仲間外れの場面」になると、2人は自分たちの間だけでボールを投げ合い、参加者はゲームから完全に外されます。
研究チームは、この2つの場面の脳の働きを比べて、仲間外れのときに強まる動きを探しました。
また、装置に入る前には、全員が落ち込みの度合いや、人と接することへの強い不安を測るアンケートにも答えています。
もう1つ測ったのが「FOMO(フォーモ)」です。
これは、楽しい集まりややりとりに自分だけいないのでは、という消えない不安のことです。
脳の働き方の違いは、何を意味しているの?
使いすぎのグループで強まった中部帯状皮質の動きは、右側の「上前頭皮質(じょうぜんとうひしつ)」にまで広がっていました。
上前頭皮質は、込み入った考えごとや、自分の行動をコントロールすること、物事を決めることに関わる場所です。
痛みの場所と考えごとの場所が一緒に働いていたことから、仲間外れに対して、気持ちと頭の両方で強く反応していたと考えられます。
一方、比べるためのグループでは、仲間外れのときに別の場所が強く働いていました。
それが、左側の「上頭頂皮質(じょうとうちょうひしつ)」です。
ここは、少しの間ものごとを覚えておく働きや、感覚から入ってくるさまざまな情報をまとめる働きを助けています。
つまり同じ仲間外れでも、2つのグループは、脳の違う通り道でそれを受け止めていたことになります。
アンケートの結果も、この違いとよく合っていました。
使いすぎのグループは、比べるためのグループより、FOMOの点数がかなり高かったのです。(不安が強い)
スマホのせいで毎日の暮らしに支障が出ている度合いも、使いすぎのグループの方が高くなっていました。
さらに使いすぎのグループの中では、左の上頭頂皮質がよく働く人ほど、この暮らしへの支障の点数が高いという関係も見つかりました。
チームはまた、脳の働きの広がり方を、脳の中の化学物質の分布を示した標準の地図と照らし合わせました。
すると、どちらのグループでも、ドーパミンとセロトニンという物質の働きが大きな役割を果たしていることが浮かび上がりました。
どちらも、気分や、ごほうびの感じ方、痛みの感じ方を整えるのを助ける物質です。
研究チームは、中部帯状皮質が強く働いていたことから、スマホを使いすぎる人は仲間外れに敏感になっていると見ています。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(恋人それぞれが「スマホ操作」、実は”深く傷ついている”タイプとは?)
そして、FOMOは仲間外れを防ぐための作戦になっているのかもしれない、とも述べています。
気持ちをうまく整えられない人は、つらさをやわらげたり、つながっている感覚を保ったりするためにスマホに頼る可能性もある、とされています。
ただ、仲間外れを予想したり、避けようとしたり、実際に味わったりすることが、スマホの使いすぎを生んだり続けさせたりするのかは、これから確かめる段階です。
研究チームも、そこをさらに調べることが大切だとしています。
それでも気になって画面を開いてしまったら、せめて「確認はあと1回だけ」と自分に言い聞かせておきましょう。たぶん守れませんが。
参考文献
People with excessive smartphone habits show distinct neural responses to social exclusion (PsyPost)
https://www.psypost.org/brain-scans-reveal-how-excessive-smartphone-users-process-social-rejection/
元論文
Neural correlates of social exclusion in individuals with excessive smartphone use
https://doi.org/10.1016/j.chb.2025.108852
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部