学級委員を決める時間、真っ先に手を挙げた子にそのまま決まっていく教室の空気があります。


自分の意見を強く押し出す人ほどリーダーになりやすいのに、その押しの強さは「リーダーとしてうまくやれるか」とは結びついていなかったようです。


ミシガン州立大学の心理学者クリストファー・ナイ氏らは、性格とリーダーの関係を調べた過去の研究を集めて、まとめて分析しました。


その結果、リーダーに選ばれやすい性格と、リーダーとしてうまくやれる性格は、同じではないことが見えてきました。


職場や学校で感じる「あれ?」というモヤモヤに、1つの手がかりをくれる研究です。


研究内容の詳細は2026年4月6日に『Journal of Applied Psychology』にて発表されました。




目次



  • 「リーダーになりやすい人」は「うまくやれる性格の人」とは違うことが多かった
  • リーダーとしての性質をどう調べたのか?
  • 学生と管理職では「大事な性格」が違った

「リーダーになりやすい人」は「うまくやれる性格の人」とは違うことが多かった


「リーダーになりやすい人」は「うまくやれる性格の人」とは違うことが多かった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

今回の研究が注目したのは、リーダーについての2つの別々の問いです。


1つは「どんな人がリーダーになりやすいか」という問いです。


もう1つは「どんな人がリーダーとしてうまくやれるか」という問いです。


ふつうに考えると、この2つの答えは同じになりそうですよね。


できそうな人が選ばれて、選ばれた人がちゃんと活躍する、という流れです。


ところが研究チームによると、リーダーになりやすい社員は、その役目で成功するための性格を持った人とは違うことが多かったといいます。


分かりやすい例が「自己主張の強さ」です。


自己主張の強い人は、リーダーになりやすい傾向がありました。


しかし、自己主張の強さは、リーダーとしてうまくやれることとは結びついていなかったのです。


一方で、うまくやれるリーダーの能力と関わっていた性格もありました。


それが「何かをやりとげたいという気持ち」「物事をきちんと整えておきたい気持ち」「自分を律する力」「前向きさ」などです。


目立って前に出る力と、リーダーとして成果を出す力は、分けて考えたほうがよさそうです。


ただし、これはたくさんの研究をまとめたときに見えた傾向で、自己主張の強い人がみんな良いリーダーになれないという意味ではありません。


また、調べた中には学生のリーダーから会社の管理職までが含まれていて、立場によって結果が変わる部分もありました。


では研究者たちは、どうやってこの「ずれ」を確かめたのでしょうか?


リーダーとしての性質をどう調べたのか?


リーダーとしての性質をどう調べたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

使われたのは「メタ分析」と呼ばれる方法です。


メタ分析とは、同じテーマを調べた過去の研究を集めて、その結果をまとめて分析する方法です。


いわば「研究の研究」ですね。


研究チームが集めたのは、性格と「リーダーとしてうまくやれるか」、または性格と「リーダーになるか」の関係を調べた研究です。


分析したデータは、あわせて203のまとまり(データセット)にのぼります。


1つの研究だけだと、その職場やその人たちだけの、たまたまの結果かもしれません。


たくさんの結果をまとめれば、全体としての傾向が見えやすくなります。


もう1つのポイントは、性格を細かく分けて見たことです。


性格は、ふだんは大ざっぱなくくりで語られがちです。


この研究では、性格をもっと細かな要素(ファセット)に分けて、それぞれがリーダーとどう関わるかを調べています。


「自己主張の強さ」や「自分を律する力」も、そうした細かな要素の1つです。


その結果、細かな要素ごとに、リーダーとの関係の強さがかなりばらばらだったと研究チームは述べています。


同じ「性格」の中でも、リーダーになることに関わる部分と、リーダーとしてうまくやることに関わる部分が分かれていたわけです。


さらに研究チームは、細かな要素の影響を、回帰分析によって比重をつけて組み合わせると、リーダーとしての成果の予測を改善できるとしています。


では、どの性格が大事かは、どんなリーダーでも同じなのでしょうか?


学生と管理職では「大事な性格」が違った


学生と管理職では「大事な性格」が違った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究では、どんな立場のリーダーかによって、うまくやるための性格が変わることも分かりました。


たとえば、学生のリーダーがうまくやるための性格は、会社で役職の低い管理職や役職の高い管理職の場合とは違っていました。


部活の部長と会社の社長とで求められることが違うのは、なんとなく想像がつくでしょう。


ただ、どの性格がどの立場で大事だったのか、その具体的な中身までは、今回紹介されている範囲では分かっていません。


では、この結果は私たちにどう関わってくるのでしょうか。


ナイ氏は、リーダーは組織がうまく回るかどうかや、働く人のやる気に大きな影響を与えうると話しています。


だからこそ、リーダーを採用したり、社員をリーダーに育てたりするときに、何を見ればいいかを組織が知っておくことが大切だといいます。


そのうえでナイ氏は、組織はリーダーの選び方を見直し、成功と結びついた性格に目を向けたほうがいいかもしれない、と述べています。


前に出る人をそのまま選ぶのではなく、やりとげたいという気持ちや自分を律する力のほうを見てはどうか、という提案だと読めます。


一方で、なぜ自己主張の強い人がリーダーに選ばれやすいのか、その理由までは今回の研究の紹介では語られていません。


次に学級委員を決めるときは、手の挙がる速さより、宿題をきちんと出しているかをこっそり見てみるのもいいかもしれません。


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参考文献

Leaders don’t always have the right personality traits for the job (Futurity)
https://www.futurity.org/personality-leaders-3346102/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=personality-leaders-3346102

元論文

The many facets of leadership: A meta-analysis of personality facets, leader effectiveness, and emergence.
https://doi.org/10.1037/apl0001378

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 自己主張が強い人ほどリーダーになったが、実力とは別だった