顔の横幅が広い男性ほど「子どもを守れる父親」だと見られる傾向
履歴書の写真を選ぶとき、少しだけ頬の張った一枚に手が伸びる。
顔の横幅と縦の長さの比は、男性の「強そうさ」を読み取る手がかりとして研究されてきました。
頬から頬までの幅を、上唇から眉までの高さで割った値。
幅が広いほど、体力があって支配的だと見られやすいことが、過去のメタ分析で示されています。
幅広い顔の男性は、力と守りが要る集団の役目に選ばれやすいことも、別の研究で示されていました。
体の強さが「守る親」の印象につながることも、さらに別の研究が報告しています。
進化の見方では、子育てには大きな体力と食べ物の負担がかかり、守ってくれる相手を見分けることに利があったと考えられます。
アーカンソー大学の研究チームは、この印象が「子どもを守れる父親か」の判断にまで及ぶかを、4つの実験で調べました。
結果、顔の幅が広い男性ほど子どもを守る力が高いと評価され、守る役にも選ばれやすい傾向がありました。
最初の実験で評価したのは大学生101人で、見せたのは白人男性の顔写真20枚です。
測ったのは印象であって、実際に子どもを守る力ではありません。
私たちは顔のどこを見て、「守ってくれそう」と感じているのでしょうか。
研究内容の詳細は2026年7月24日に『Evolutionary Psychological Science』にて発表されました
目次
- 幅広い顔は7点満点で「4.23」、細い顔は3.84
- 逆さまにすると「守れそう」が消えた
幅広い顔は7点満点で「4.23」、細い顔は3.84
最初の実験は、採点の課題。
学生たちは無表情の男性の顔写真を見て、子どもを守る力と育てる力をそれぞれ採点しました。
写真は半分が顔幅の比が高い顔、半分が低い顔です。
守る力の平均は、幅広い顔で4.23点、細い顔で3.84点(7点満点)。
一方、育てる力の評価には、統計的に意味のある差がありませんでした。
2つ目の実験は、選ぶ課題。
111人が同じ顔写真の中から、子どもを守るのに最適な男性を最大5人、育てるのに最適な男性を最大5人選びました。
守る役には幅広い顔の男性が平均2.78人選ばれ、細い顔は1.15人。
育てる役の選択は、半々に割れました。
幅広い顔を守る役に選ぶ傾向は、その顔を強く攻撃的だと感じることと強く結び付いていました。
参加者は顔ごとに、体力、攻撃性、温かさも採点しています。
では、その判断は顔のどこを見ているのか。
逆さまにすると「守れそう」が消えた
3つ目の実験では、194人に同じ顔写真を見せました。
ただし、半分は上下を逆さまにして。
顔を逆さまにすると、脳は顔全体の配置をひとまとめに捉える処理がしにくくなります。
正しい向きの顔では、幅広い顔がやはり守る力が高いと評価されました。
逆さまの顔では、その差は統計的に意味のある水準ではなくなりました。
「守れそう」の判断は、顔全体の配置をまとめて読むことに頼っているらしい。
対照的に、細い顔の男性は逆さまでも「育てるのが少し上手そう」と見られ続けました。
育てる力の判断は、個々のパーツに頼っている可能性があります。
筆頭著者のミッチ・ブラウン氏は、逆さまでも推測はできたが効果はかなり弱まった、と述べています。
4つ目の実験では、父親としての力の推測が、守る動機の予想とも連動していたと研究チームは報告しています。
また、集団を守れる相手を見分ける感覚が進化の過程で有利だった可能性を、この結果の背景に置いています。
ブラウン氏は、守ることと育てることの間の「割り切り」を人がどう読むかを見るのに、顔幅の比は格好の材料だったと話しています。
ブラウン氏は、顔幅の比そのものが進化で選ばれた形質だとか、ホルモンの指標だとは主張していません。
顔全体から力強さの「まとまり」を読み取っているのだろう、というのが氏の見立てです。
忘れてはいけないのは、測ったのが印象だという点です。
頼れそうな父親の顔は、見る側の目が勝手に決めている。その目は案外、顔の幅だけを見ているのかもしれません。
公園で交わす会釈の順番は、顔の幅で先に決まっていたのかもしれません。
参考文献
A specific facial proportion shapes our assumptions about men’s parenting styles (PsyPost)
https://www.psypost.org/a-specific-facial-proportion-shapes-our-assumptions-about-mens-parenting-styles/
元論文
Formidable Facial Structures Inform Perceptions of Men’s Ability to Protect Offspring
https://doi.org/10.1007/s40806-026-00490-6
ライター
天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。
編集者
ナゾロジー 編集部