あなたの顔に「動脈硬化のサイン」が現れる可能性
朝、洗面所の鏡で目頭に近いまぶたの皮膚に黄色っぽい小さな斑を見つけたら、まず気にするのは見た目でしょう。
実際、この斑のある人の多くは、見た目の悩みとして皮膚科を受診しています。
この斑は「眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)」と呼ばれ、中身はコレステロールなどの脂肪をため込んだ免疫細胞です。
スタンフォード大学の研究チームは、この斑のある人がない人に比べて心筋梗塞や脳卒中を起こす割合が高いことを、17,925人ずつの電子カルテの比較で明らかにしました。
これは観察研究なので、斑が心臓や脳の病気を引き起こすという結果ではなく、あくまで「関連」です。
斑のある人とない人で発症の割合がどれほど違ったのかを、研究チームは1年後・5年後・10年後の三つの時点で比べています。
研究内容の詳細は2026年4月18日に『Atherosclerosis』にて発表されました
目次
- 斑のある人は、1年で心筋梗塞を起こした割合が「数倍」だった
- 血中の脂質のほかにも、関わる要因がありそうだ
斑のある人は、1年で心筋梗塞を起こした割合が「数倍」だった
厄介なのは、動脈硬化が自覚症状のないままゆっくり進むことです。血管の内側に脂肪の塊がたまって血の通り道が狭くなるこの状態から、心筋梗塞や脳卒中の大半が起こります。
だからこそ、早めに気づける「しるし」が探されてきました。目元の脂肪の塊も、その候補の一つでした。
黄色腫が心筋梗塞や脳卒中と関係するという報告は以前からありました。争点は、ほかの危険要因を差し引いても黄色腫が独立した目印になるかどうかで、そこは見方が分かれていました。
そこで研究チームは、大規模な電子カルテのデータベースを使い、黄色腫と診断された成人と同じ人数の比較群を突き合わせました。
比較群には老眼(老視)で目の診察を受けた人を選んでいます。診察の記録があるので、黄色腫がないことを確かめられるからです。
診断より前に心筋梗塞や脳卒中を起こしていた人は、両方の群から除きました。
1年のあいだに心筋梗塞を起こした人の割合は、黄色腫のある群で1.00%、比較群で0.35%でした。
脳卒中は0.95%対0.30%、一過性脳虚血発作は0.60%対0.19%でした。
黄色腫のある群の割合は、ない群の数倍にあたります。ただし1%かそれ以下という小さな数字どうしの比較です。
この差は5年後も10年後も消えず、10年後の心筋梗塞は3.13%対1.73%、脳卒中は3.00%対1.53%でした。
血中の脂質のほかにも、関わる要因がありそうだ
血中の脂質が多いことでこの差を説明できるかというと、黄色腫のある群では脂質の異常の有無にかかわらず発症率が似ていました。
研究チームは、黄色腫を将来の心筋梗塞や脳卒中の「リスク因子」と考えてよいと述べています。
気がかりなのは、皮膚科に来た人の中に、心臓や血管の危険要因がまだ見つかっていない人や、見つかっていても十分に管理されていない人が混じっている可能性です。
黄色腫は医師が見つけやすい変化なので、早い段階で全身の状態を調べるきっかけになりえます。
そのあとの管理として研究チームが挙げるのは、かかりつけ医による定期的な観察、生活習慣の見直し、脂質を下げる薬、血圧の管理です。
なぜ黄色腫のある人でリスクが高いのかは、これからの研究課題です。
目元の小さな黄色い斑は、多くの人にとって見た目の悩みでした。同じ斑が、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを測る手がかりの一つに見えてきます。
参考文献
A Warning Sign of Heart Attack And Stroke May Show Up on Your Face
https://www.sciencealert.com/a-warning-sign-of-heart-attack-and-stroke-may-show-up-on-your-face
元論文
Xanthelasma and its association with developing major cardio-cerebrovascular events
https://doi.org/10.1016/j.atherosclerosis.2026.120647
ライター
天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。
編集者
ナゾロジー 編集部