モチベーションを低下させてしまう「一つの危険な習慣」
「最近、どうにもやる気が出ない」
そう感じている人は、もしかしたら、ある一つの習慣が原因になっているかもしれません。
その危険な習慣とは、慢性的に他人からの承認を求めることです。
たとえば、自分の意見を口にする前に周囲の反応を確かめたり、何かを始める前に誰かの許可を待ったり、投稿への反応が気になって仕方がなくなったりすることなど。
こうした行動は、一見すると慎重さや協調性の表れにも見えます。
しかし、それが「誰かに認められなければ動けない」という習慣に変わると、自分の内側から生まれるモチベーションを弱めてしまう可能性があるのです。
では、なぜ他人の承認を求めることが、やる気を失わせるのでしょうか。
目次
- 承認待ちがモチベーションを奪う仕組み
- 承認待ちは「どこが危険」なのか?
- モチベーションを取り戻すための「2つのヒント」
承認待ちがモチベーションを奪う仕組み
心理学では、人間のモチベーションを説明する代表的な枠組みの1つとして、「自己決定理論」が知られています。
この理論では、持続的なモチベーションを支えるために、主に3つの心理的な欲求が重要だと考えられています。
その1:自分には物事をうまく行う力があると感じる「有能感」
その2:他者とつながり、受け入れられていると感じる「関係性」
その3:自分の行動を自分自身で選んでいると感じる「自律性」
しかし、慢性的に他人からの承認を求める習慣は、このうちの自律性を徐々に弱めてしまいます。
たとえば、新しい仕事に挑戦しようと考えたとき、家族や友人に相談すること自体は問題ではありません。
他人の意見を聞くことで、自分では気づかなかったリスクや選択肢が見えてくることもあります。
ところが、相談したうえで自分が決断することと、相手が賛成するまで決断できないことは同じではありません。
前者では、判断の中心が自分の内側にあります。
後者では、決断する権利そのものを他人の反応に預けています。
この状態が続くと、行動するためのエネルギーまで、他人の反応が示されるまで生まれなくなっていきます。
自分ではやりたいと思っていても、誰かが褒めてくれるか分からなければ始められません。
自分では正しいと思っていても、周囲が賛成してくれなければ不安になります。
そして次第に、「自分が何をしたいか」よりも「他人にどう思われるか」が、行動を決める基準になっていくのです。
承認待ちは「どこが危険」なのか?
他人の承認を求める習慣が厄介なのは、それが社会的に望ましい態度のように見える点です。
何かを決める前に必ず周囲へ確認する人は、独断的ではなく、思慮深い人物に見えます。
自分の意見をすぐに口にせず、場の空気を読んでから発言する人は、冷静で協調性があるように見えます。
職場や家庭によっては、こうした態度が積極的に評価されることもあります。
そのため、本人も「承認を求めているのではなく、単に慎重に振る舞っているだけだ」と思い込みやすいのです。
しかし、周囲の意見を参考にすることと、周囲の反応によってしか行動できないことには大きな違いがあります。
自分の価値観に合っているから行動する場合、その行動には自分なりの意味があります。
一方で、誰かを失望させたくないから行動したり、罪悪感や恥を避けるために努力したりする場合、行動の理由は自分の外側にあります。
また、承認を求める習慣が強まると、何かをやり遂げたときにも、自分だけでは満足しにくくなる可能性があります。
本来なら「昨日より上達した」「最後まで終わらせた」という事実そのものから、ある程度の達成感を得られます。
ところが、他人の反応が報酬になっていると、仕事を終えても、褒められるまでは満足できません。
作品を完成させても、反応が少なければ失敗したように感じます。
努力そのものよりも、その努力が誰かに認められたかどうかが重要になってしまうのです。
この状態では、モチベーションがなくなったというより、自分でモチベーションを生み出す回路を使わなくなっていると考えたほうが近いかもしれません。
モチベーションを取り戻すための「2つのヒント」
では、他人の承認に頼らず、内側から生まれるモチベーションを取り戻すにはどうすればよいのでしょうか。
重要なのは、他人の意見を一切聞かなくなることではありません。
周りからのフィードバックを拒絶したり、周囲の気持ちを無視したりする必要もありません。
必要なのは、他人の意見を参考にしながらも、最終的な決定権を自分の内側へ戻すことです。
そのための方法の1つが、
「自分の価値観を明確にすること」
です。
ここでいう価値観とは、「立派な人なら何を望むべきか」という理想ではありません。
過去を振り返り、自分が自然と夢中になれたことや、誰に褒められなくてもやりがいを持って続けられたことを探します。
成果を評価されたから楽しかったのか、それとも作業そのものが楽しかったのかを考えることも役立ちます。
自分が本当に大切にしていることが分かれば、他人からの承認がなくても行動する理由が生まれます。
もう1つの方法は、
「誰にも評価されない小さな行動を意識的に増やすこと」
です。
たとえば、部屋の一角を片づけても、写真を撮って誰かに見せずに終わらせます。
短い文章を書き上げても、すぐには投稿せず、自分だけで完成を味わいます。
重要度の低い買い物や休日の予定を、誰にも相談せず自分で決めてみることもできます。
こうした練習の目的は、独りよがりになることではありません。
他人の承認がなくても、自分は選び、行動し、その結果を受け止められると確認することです。
最初は、自分だけで決めることに不安を感じるかもしれません。
しかし、小さな決断を重ねるうちに、「誰かが認めてくれたから正しい」のではなく、「自分が納得して選んだから進める」という感覚が育っていきます。
自分の好みから始めた行動が1つでも見つかれば、そこからモチベーション全体が少しずつ戻ってくる可能性があります。
まとめ
人間は社会的な生き物であり、他人から認められたいと感じること自体は自然です。
誰かに褒められればうれしくなり、否定されれば傷つきます。
問題になるのは、承認を求めることではなく、承認がなければ行動できなくなることです。
周囲の反応を確かめてから発言することや、誰かに相談してから決断することが、すぐに危険なわけではありません。
しかし、自分の意見や好みを毎回引っ込め、他人の反応を行動の許可証にしているなら、少し注意が必要です。
モチベーションは、無理に奮い立たせて作るものとは限りません。
「自分は何を大切にしたいのか」「誰にも評価されなくても何をしてみたいのか」を思い出すことで、自然に戻ってくることがあります。
まずは今日、誰にも報告しない小さな行動を1つだけ選んでみてもよいかもしれません。
使われなくなっていた自分の内なる羅針盤は、そこから再び動き始めるのです。
参考文献
1 Habit That Kills Motivation for Most Adults
https://www.psychologytoday.com/us/blog/social-instincts/202607/1-habit-that-kills-motivation-for-most-adults
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部