アフリカ南東部・モザンビークにある山々は、乾いたサバンナの中に突然そびえ立つ”空に浮かぶ島”のような場所です。


その山頂付近には、雲と雨に守られた小さな熱帯雨林が点在しています。


今回、研究者たちはこうした孤立した山地森林から、科学的に未知だった4種の新種カメレオンを発見しました。


また、4種の見た目はよく似ていますが、DNAを調べると、それぞれの山で数百万年にわたり独自に進化してきた別種であることがわかりました。


研究の詳細は、南アフリカ国立生物多様性研究所(South African National Biodiversity Institute)らにより、2026年4月21日付で学術誌『Vertebrate Zoology』に掲載されています。




目次



  • サバンナに浮かぶ「空島」に新種カメレオン
  • 4種の学名に込められた「名前の由来」とは?

サバンナに浮かぶ「空島」に新種カメレオン


今回調査されたのは、モザンビーク北部にあるナムリ山、イナゴ山、チペロネ山、リバウエ山です。


これらの山は、乾燥したサバンナから急に盛り上がる花崗岩の山塊で、「インセルベルグ」と呼ばれます。


周囲は乾いた環境ですが、山の斜面や山頂では雲が引っかかり、雨や湿気をもたらします。


その結果、山の上には涼しく湿った森林が残り、まるで海に浮かぶ島のように、周囲から切り離された生態系が生まれます。


これが「スカイアイランド(空島)」と通称される環境です。


研究チームは2014年から2018年にかけて、これらの山を調査し、そこに生息するカメレオンの標本やDNAサンプルを集めました。


対象となったのは、ナジカンビア属(Nadzikambia)という樹林性カメレオンの仲間です。


この属のカメレオンは森林への依存度が高く、開けたサバンナや農地を自由に移動するタイプではありません。


そのため、山ごとの森林に閉じ込められるようにして、長い時間をかけて別々に進化してきた可能性がありました。


チームは、複数の遺伝子配列を比較し、さらに体の特徴も調査。


その結果、4つの山の個体群はそれぞれ遺伝的にまとまった独立の系統を作っており、既知種とも明確に区別できることが分かりました。


つまり、ナムリ山、イナゴ山、チペロネ山、リバウエ山には、それぞれ独自のカメレオン種がいたのです。


AとBは既知種のカメレオン、C〜Fが新種/ Credit: Tolley and Conradie, 2026 / Vertebrate Zoology / CC BY 4.0

見た目が似ているため、外から眺めただけでは同じようなカメレオンに見えます。


しかしDNAは、それぞれの山の個体群が長いあいだ交雑せず、別々の進化史を歩んできたことを示していました。


これは、森林という似た環境に適応したため体つきは似たまま保たれた一方で、遺伝的には山ごとに分かれていったことを意味します。


4種の学名に込められた「名前の由来」とは?


今回、新種として記載されたのは、


・ナジカンビア・フランクリナエ(Nadzikambia franklinae)


・ナジカンビア・グドーラエ(Nadzikambia goodallae)


・ナジカンビア・ヌビラ(Nadzikambia nubila)


・ナジカンビア・エヴァネッセンス(Nadzikambia evanescens)


の4種です。


ナムリ山で見つかったN. フランクリナエは、DNA構造の解明に重要な貢献をした英国の化学者ロザリンド・フランクリンにちなんで名付けられました。


今回のような新種判定ではDNA解析が重要な役割を果たしており、その意味でも象徴的な命名です。


リバウエ山で見つかったN. グドーラエは、チンパンジー研究と自然保護活動で知られるジェーン・グドールにちなんでいます。


動物行動の理解と保全意識を広めてきた彼女の功績をたたえる名前です。


ナジカンビア・グドーラエ/ Credit: Tolley and Conradie, 2026 / Vertebrate Zoology / CC BY 4.0

チペロネ山で見つかったN. ヌビラは、ラテン語で「曇った」を意味するnubilusに由来します。


チペロネ山では雲が山にかかり、湿った森林を支えています。


その雲こそが、このカメレオンのすみかを作っているためです。


イナゴ山で見つかったN. エヴァネッセンスは、ラテン語で「消えゆく」という意味を持ちます。


これは、種そのものではなく、急速に失われつつある生息地への警告を込めた名前です。


実際、これらのカメレオンたちは発見されたばかりでありながら、すでに絶滅の危機に直面しています。


山地森林では焼畑や農地化が進み、カメレオンのすみかが小さく分断されているためです。


森林専門の生き物である彼らは、伐採後の農地や別の植生に簡単に移ることができません。


伐採の最中に死んでしまう個体もいれば、生き残っても住む場所を失い、捕食されやすくなる可能性があります。


さらに森林の喪失は、カメレオンだけの問題ではありません。


山地森林は雲をとらえ、雨を生み、水を保つ働きも担っています。


そのため森林が減れば、地域の水資源や川の環境にも影響が及ぶおそれがあります。


一方で、チペロネ山のように、地域社会が山を神聖な場所として大切にしてきたことで、森林が比較的守られている例もあります。


この研究は、新種を見つけることと、その生息地を守ることが切り離せない問題であることを示しています。


モザンビークの空島で見つかった4種の新種カメレオンは、山ごとに閉じ込められた小さな森が、長い時間をかけて独自の生命を育ててきた証拠です。


しかしその森が消えれば、発見されたばかりの進化の物語もまた、すぐに失われてしまうかもしれません。


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参考文献

Four new chameleon species found on Mozambique’s mountaintop ‘sky islands’
https://phys.org/news/2026-06-chameleon-species-mozambique-mountaintop-sky.html

In Mozambique, four isolated mountains yield four new chameleon species
https://news.mongabay.com/short-article/2026/05/in-mozambique-four-isolated-mountains-yield-four-new-chameleon-species/

元論文

Sky Islands of Mozambique harbour cryptic species of chameleons: Description of four new species of sylvan chameleons (Squamata: Chamaeleonidae: Nadzikambia Tilbury, Tolley &Branch, 2006)
https://vertebrate-zoology.arphahub.com/article/178403/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 モザンビークの空島で「4種の新種カメレオン」を発見