「酒と水(ノンアル)を交互に飲むと二日酔いになりにくい」は本当か?
飲み会の途中で、「次は水にしておこう」と考えたことはないでしょうか。
最近アメリカやイギリスでは、アルコール飲料とソフトドリンクを交互に飲む「ゼブラ・ストライピング(zebra striping)」という飲み方が広がっています。
“二日酔いを防ぐ方法”としてSNSなどでも話題ですが、研究者たちは、その効果を少し違う視点から見ています。
イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学(Liverpool John Moores University)で精神薬理学を専門とするキャシー・モンゴメリー教授らは、ゼブラ・ストライピングの効果性について解説しています。
目次
- 「酒→水→酒→水」はなぜ流行しているのか
- ゼブラ・ストライピングの“本当の効果”とは
「酒→水→酒→水」はなぜ流行しているのか
ゼブラ・ストライピングとは、アルコール飲料とノンアルコール飲料を交互に飲む方法です。
例えば、ビールを1杯飲んだら、次は水やソフトドリンクを飲み、その次にまた酒を飲む、という流れです。
白黒の縞模様が交互に並ぶシマウマに似ていることから、この名前が付けられました。
この飲み方が注目されている背景には、「二日酔いを軽くできるのではないか」という期待があります。
確かに、アルコールには利尿作用があります。
飲酒をすると尿の量が増え、体内の水分や電解質が失われやすくなるため、喉の渇きや頭痛、めまいなどにつながることがあります。
そのため、酒の合間に水を飲めば、脱水による不快感をある程度抑えられる可能性があります。
実際、「チェイサーを飲むと翌日が少し楽」という感覚を持つ人も少なくありません。
しかし研究者たちは、ここで重要な注意点を挙げています。
それは、「脱水=二日酔い」ではないということです。
2019年の研究では、二日酔いには脱水だけでなく、アセトアルデヒドなどのアルコール代謝産物、神経伝達物質の変化、炎症因子、ミトコンドリア機能障害など、複数の要因が関わる可能性が整理されています。
また、炎症反応や免疫応答の変化も、翌日のつらさに関係している可能性があります。
つまり、酒の合間に水を飲むことには意味がありますが、それだけで二日酔いを完全に防げるわけではありません。
では、研究者たちはゼブラ・ストライピングの本当の効果をどこに見ているのでしょうか。
ゼブラ・ストライピングの“本当の効果”とは
ゼブラ・ストライピング の核心は、「飲酒ペースを落とし、結果として飲む酒の総量を減らしやすくすること」にあります。
人間の体は、アルコールを一定速度でしか分解できません。
短時間で大量に飲むと、血中アルコール濃度が急激に上がり、酔いが強くなります。
すると判断力や注意力が低下し、けがや事故のリスクも高まります。
一方、酒の間にノンアルコール飲料を挟めば、自然とアルコールを飲む速度が落ちます。
実際に飲むアルコール量が減れば、血中アルコール濃度の上昇も抑えられ、翌日の不調も軽くなる可能性があります。
つまりゼブラ・ストライピングは、「水が魔法のように二日酔いを打ち消している」のではなく、「飲みすぎを防ぎやすくしている」可能性が高いというわけです。
また、この飲み方には行動面でのメリットもあります。
飲み会では、「何も持っていないと次の酒を勧められやすい」という状況があります。
しかし、水やソフトドリンクでもグラスを持っていれば、“飲んでいる感”を維持できるため、飲酒圧力を避けやすくなるでしょう。
ただし、ここにも少し意外な落とし穴があります。
2007年の研究では、炭酸水で割ったアルコールは、水で割った場合より吸収が速くなる人が多かったと報告されています。
そのため、炭酸のノンアル飲料を選ぶと、人によっては酔い始めが早くなる可能性があります。
さらに、2005年の研究では、薬や糖類、植物由来のサプリメントなどを調べたものの、二日酔いを確実に防いだり治したりできるといえる証拠は見つかりませんでした。
二日酔いを避ける最も確実な方法は、飲まないこと、または飲む量を控えることだと整理されています。
つまり、結局のところ、ゼブラ・ストライピングは“裏技”ではありません。
しかし、「飲みすぎにくくする工夫」として見るなら、一定の合理性はありそうです。
二日酔い対策の本質は、水を飲むことそのものではなく、「アルコールの総量を減らすこと」にあるのかもしれません。
参考文献
How ‘zebra striping’ on a night out can help you drink less – and potentially avoid a hangover
https://theconversation.com/how-zebra-striping-on-a-night-out-can-help-you-drink-less-and-potentially-avoid-a-hangover-282407
元論文
Alcohol Hangover: Underlying Biochemical, Inflammatory and Neurochemical Mechanisms
https://doi.org/10.1093/alcalc/agz016
Alcohol concentration and carbonation of drinks: The effect on blood alcohol levels
https://doi.org/10.1016/j.jflm.2006.12.010
Interventions for preventing or treating alcohol hangover: systematic review of randomised controlled trials
https://doi.org/10.1136/bmj.331.7531.1515
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部