「気づけばSNSを何時間も見てしまっていた…」

そんな経験をしている人はかなり多いでしょう。

そして米ウェイン州立大学(WSU)の最新研究によると、スマートフォンでInstagramやTikTokなどのSNSを長時間利用している人ほど、日中に「ぼんやり」している時間が多くなる傾向があることがわかってきました。

この“心のふらつき”には、思った以上にSNSが関係しているようです。

研究の詳細は2025年3月31日付で学術誌『Psychological Reports』に掲載されています。

目次

  • 気がつくと「ぼんやり」している――それはスマホのせい?
  • SNSが「心を奪う」しくみと、それを防ぐ方法

気がつくと「ぼんやり」している――それはスマホのせい?

私たちの意識は、常に今目の前のことに集中できているわけではありません。

授業中や仕事中、運転中でさえ、ふと「今日の夕飯何にしよう」とか「昨日のあの投稿、誰か見てたかな」などと、今とはまったく関係のない考えが浮かぶことがあります。

これが「心のふらつき(=マインドワンダリング)」です。

マインドワンダリングには2種類あります。

1つは「意図的な心の迷い」で、自分の意思で空想や計画を始めるタイプ。

そしてもう1つが「自発的な心の迷い」で、自分が気づかないうちに思考がどこかへさまよってしまうタイプです。

問題となるのは後者のほうで、自分の集中力を無意識のうちに奪ってしまう可能性があります。

Credit: canva

2024年から2025年にかけてアメリカで行われた研究では、188名の大学生を対象に、スマートフォンの利用状況と心の迷いの頻度を調べました。

注目すべきは、参加者が提出したiPhoneのスクリーンタイム情報です。

これにより、自己申告ではなく実際の利用時間に基づいた分析が行われました。

結果、もっとも使用時間が長かったのは「ソーシャル」カテゴリ、つまりSNSやチャットアプリでした。

平均して週17時間以上、1日2時間半以上をSNSに費やしている計算になります。

しかもこのようなSNSの長時間使用者ほど、「自発的な心の迷い」が多いという傾向が明確に現れたのです。

SNSが「心を奪う」しくみと、それを防ぐ方法

なぜSNSを使うほど、ぼんやりしやすくなるのでしょうか?

研究者たちはその背景に「オンライン警戒心(online vigilance)」という心理的状態があると考えています。

オンライン警戒心とは、「ネット上で何か起きていないか」「誰かから連絡が来ていないか」など、常にオンライン世界に注意を敏感に向け続けてしまう傾向のことです。

これは何かを見たり触れたりしていないときでさえ、無意識に「SNSのことを考えてしまう」状態です。

つまりスマホを見ていないときでも、心だけがSNSに引っ張られているのです。

そして、このオンライン警戒心が強い人ほど、自発的なマインドワンダリングも多くなり、結果的に「注意が今ここにない」状態が長引いてしまいます。

SNSに没頭する時間が長い人ほど、現実の場面で注意散漫になりやすくなるのは、このようなメカニズムによるのかもしれません。

Credit: canva

ただし、ここで一つ希望の光もあります。

それが「マインドフルネス(mindfulness)」と呼ばれる能力です。

これは「いまこの瞬間」に意識を向ける力で、瞑想などで鍛えることができます。

研究によれば、マインドフルネスのスコアが高い人は、たとえSNSに関する思考が浮かんでも、それに引きずられてスマホを開く行動にまではつながりにくいことが分かりました。

つまり、心の中で何が起きていても、自分で「それに乗るかどうか」を選べる力が、マインドフルネスにはあるのです。

この研究から見えてきたのは、スマホを使う時間そのものよりも、「心がどれだけSNSに囚われているか」が日常の注意力や思考に大きな影響を与えている、ということです。

「なんだか最近、集中できないな」「気づいたら頭の中がごちゃごちゃしている」――そう感じるとき、もしかしたら心はSNSの世界にさまよっているのかもしれません。

対策として、単にスマホを手放すのではなく、「今ここにある自分の感覚」に注意を向ける力を鍛えることが推奨されます。

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参考文献

Spontaneous mind wandering linked to heavier social smartphone use
https://www.psypost.org/spontaneous-mind-wandering-linked-to-heavier-social-smartphone-use/

元論文

Spontaneous Mind Wandering and Smartphone Use
https://doi.org/10.1177/00332941251330555

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 SNSを見る時間が長いほど、日中に「ぼんやり」しやすくなっていた