宇宙の深淵からジッとこちらを見つめる「フクロウ」が見つかりました。

中国・清華大学(Tsinghua University)を中心とする国際研究チームはこのほど、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)などを用いた最新の観測で、極めて珍しい銀河合体の姿を捉えたと報告。

その天体は、正面衝突した2つの銀河がそれぞれリング状に変形し、左右対称の「双子の目」を持つ構造を形成。

さらに中央には星形成領域も存在し、これがまるで「クチバシ」のように見えました。

このことからチームは、この極めて珍しい姿の天体を「宇宙のフクロウ(Cosmic Owl)」と呼んでいます。

研究の詳細は2025年6月11日付でプレプリントサーバ『arXiv』に公開されました。

目次

  • 正面衝突で生まれた双子のリング
  • クチバシも形成されていた

正面衝突で生まれた双子のリング

「宇宙のフクロウ」は、地球からおよそ90億光年先の位置にある2つの銀河によって構成されています。

通常、2つの銀河が衝突した場合、リング構造が形成されるのは一方のみ。

ところが今回のケースでは、偶然にも質量や構造がほぼ同じ2つの銀河が、驚くほど精密な角度と位置で正面衝突したため、両方にリングが生じるという非常に稀な現象が起きたと考えられています。

このリングは、まるで池に石を投げ込んだときの波紋のように、銀河の中心を突き抜けた衝突によって生じた重力的ショック波により、星やガスが外側に押し出されて形成されたものです。

観測された「宇宙のフクロウ」/ Credit: Mingyu Li et al., arXiv(2025)

それぞれのリングは直径約8キロパーセク(約26,000光年)にもおよび、その対称性は驚くほど美しく、画像では左右のリングが「目」のように見えます。

そして、2つの銀河の中心にはそれぞれ活動銀河核(AGN)が存在しており、ブラックホールからは強力な放射が確認されています。

これがまさにフクロウの目にそっくりの配置となっていました。

クチバシも形成されていた

「宇宙のフクロウ」のもうひとつの注目点は、星々が猛烈なスピードで生まれている現場が確認されていることです。

特に2つの銀河の中間部に青く輝く領域が観測されており、ここが新たな星形成の場所となっています。

ここでは年間84個の太陽に相当する星が誕生しているとのこと。

フクロウの左目が「NWアイ」でそこからジェットが出ている/ Credit: Mingyu Li et al., arXiv(2025)

その原動力となっているのが、衝突によって発生した衝撃波、そして活動銀河核(AGN)から噴き出す双極性の電波ジェットです。

ジェットは、片方の銀河(NWアイ:上図を参照)から発せられ、もう一方の銀河との衝突前線に突き刺さるように伸びており、これがまるでフクロウのクチバシを形作っているように見せていたのです。

このジェットが衝突領域のガスを圧縮し、急速に冷却させることで、星形成が促進されていると考えられています。

観測によれば、この「クチバシ」部分の分子ガスは、星に変わるまでの時間がわずか7000万年

これは通常の銀河に比べて非常に短く、効率的かつ急激な星形成が進んでいることを示しているといいます。

このように「宇宙のフクロウ」は、銀河の衝突・リング形成・ブラックホール活動・ジェットという、銀河進化における複数のプロセスが同時進行している、まさに“宇宙の縮図”ともいえる存在なのです。

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参考文献

The Cosmic Owl: Astronomers discover a peculiar galaxy merger
https://phys.org/news/2025-06-cosmic-owl-astronomers-peculiar-galaxy.html

元論文

The Cosmic Owl: Twin Active Collisional Ring Galaxies with Starburst Merging Front at z=1.14
https://doi.org/10.48550/arXiv.2506.10058

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 【宇宙フクロウ】2つの銀河が衝突して「フクロウの顔」のようになった天体を観測!