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絵の下には「Voilà mon choix(これが私の選んだ相手)」というフランス語の文言が添えられており、修道女が3人の聖職者の中から誰を選んだのかが強調されているのです。
このイラストは、単なる猥褻な図ではなく、明確な風刺として制作されたものでした。
博物館員の解釈によれば、これは当時の禁欲(特に宗教的な禁欲)への皮肉であると同時に、ギリシャ神話「パリスの審判」のパロディでもあるとのことです。
本来は女神アフロディーテが美を競う話が、ここでは修道女と聖職者に置き換えられ、性的な選択と欲望が大胆に描かれています。
それは一体どのようなパロディなのでしょうか?
ギリシャ神話「パリスの審判」のパロディであるというのは、このコンドームに描かれた風刺画が、神話の有名な場面を性的かつ風刺的に置き換えたものだという意味です。
「パリスの審判」とは、トロイアの王子パリスが、3人の女神―ヘラ、アテナ、アフロディーテ―の中で「誰が最も美しいか」を決めるよう命じられた有名なギリシャ神話の一場面です。
パリスの審判を題材にして描かれた絵画がこちら。
それぞれの女神は賄賂を用いてパリスの支持を得ようとし、最終的に「世界一の美女ヘレンを与える」と約束したアフロディーテがパリスによって選ばれます。
この選択がのちにトロイア戦争を引き起こす原因となったことは有名な話であり、映画『トロイ』にも描かれました。
今回の風刺画では、この「美しさの審判」を、性的魅力の選択として置き換えています。
椅子に座った修道女が、3人の聖職者を前に脚を開き、その中の1人を指さして「Voilà mon choix(これが私の選んだ相手)」と宣言する構図は、まさにパリスの審判の構造を模しています。
ただし神話における「美の審判」が、ここでは「性的な選択」へと変換されているのです。
つまり、この図は神話の崇高な題材をあえて下世話にパロディ化し、宗教的禁欲や聖職者の偽善を風刺しているのです。
当時の人々の価値観やタブーを、皮肉と笑いで揺さぶる目的が込められた表現といえるでしょう。
およそ200年前のコンドームに描かれた過激な画は、単なる卑猥な戯画ではなく、当時の社会に対する風刺であり、同時に私たちに「性とは何か」を問いかける貴重な文化資料ともなっています。
参考文献
200-Year-Old Condom Made Of Sheep Appendix Contains A *Very* NSFW Drawing
https://www.iflscience.com/200-year-old-condom-made-of-sheep-appendix-contains-a-very-nsfw-drawing-79502
Rijksmuseum exhibits 200-year-old condom featuring erotic print
https://www.rijksmuseum.nl/en/press/press-releases/rijksmuseum-exhibits-200-year-old-condom-featuring-erotic-print
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部