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しかも、この装置はただの赤外線レーザーではありません。
研究チームはレーザーを8本に分けて、それぞれ少しずつ違う角度からターゲットに照射しました。
その結果、大気などで起こる「光のかすれ」がちょうどいい具合にバラバラになり、逆に画像化に役立ったのです。
この装置の性能は驚くべきものでした。
実験の結果、なんと1.36キロ先にある建物の壁に貼った3ミリ幅のアルファベットの文字がくっきりと画像化されたのです。
3ミリといえば、米粒より小さいサイズ。しかもそれを遠く離れたビルから見ているような距離から読み取るのです。
比較のために、望遠鏡1台だけで同じ距離の文字を見ようとすると、解像度は42ミリ――つまり文字が14倍も大きくないと読めませんでした。
今回の技術は、それだけ解像度を高める「裏技」のような効果があるのです。
しかもこの手法、単なる拡大ではありません。
文字の反射光の中に含まれる「ランダムな強さのゆらぎ」を巧みに読み取り、それをパズルのように組み合わせて、元の形を再構成しています。
研究チームは今後、このシステムにAI(人工知能)を組み合わせて、さらに正確に文字や形を判別できるようにする計画もあるそうです。
将来的には、宇宙ゴミの監視や、災害現場での遠距離観測、さらには農業や動物調査など、さまざまな分野での応用が期待されています。
参考文献
This Laser Breakthrough Can Read Text on a Page From a Mile Away
https://www.sciencealert.com/this-laser-breakthrough-can-read-text-on-a-page-from-a-mile-away
Interferometer Device Sees Text from a Mile Away
https://physics.aps.org/articles/v18/99
元論文
Active Optical Intensity Interferometry
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.180201
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部