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研究者らは、アメリカの青少年を長期間にわたって追跡した大規模な全国調査から、6814人のデータを使用しました。
ADHDの症状については、参加者が成人初期に達した段階で、自身の5歳から12歳までの行動を回顧的に報告することで評価されています。
ファストフードの摂取頻度や身体活動の状況は、思春期および成人初期において標準化されたアンケートで測定されました。
ファストフードの摂取については、参加者が過去1週間にファストフード店でどれくらい食事をしたかを報告し、思春期では週3回以上、成人初期では週4回以上の利用が「高頻度の摂取」と定義されました。
身体活動については、スポーツや運動などの中〜高強度の活動を前週に何回行ったかを尋ね、米国の健康ガイドラインに基づいて「運動不足かどうか」を判定しています。
年齢、性別、人種、家計所得、肥満、うつ状態、近隣環境といった他の因子を調整したうえで分析。
その結果、幼少期にADHDと診断されていた参加者は、成人後におけるファストフード摂取の増加と有意に関連していることが判明したのです。
具体的には、ADHDの既往歴がある人は、そうでない人と比べてファストフードを高頻度で摂取する確率が49%高くなっていました。
この関連は思春期には見られず、若者が自立し食事の選択権を持つようになる成人初期に顕著になることが示唆されました。
一方で、幼少期のADHDと思春期および成人期における運動不足との間に有意な関連は見られませんでした。
ADHDの人がファストフードを頻繁に食べるようになる理由には、次のようなものが考えられると研究者は指摘します。
まず、ADHDの人は「遅延報酬」、つまり「今ではなく将来に得られるメリット」を待つのが苦手で、今すぐに得られる「即時報酬」に強く惹かれる傾向があります。
ファストフードは、手間をかけずにすぐに食べられ、塩分・脂肪・糖分が多く、脳の報酬系をすぐに刺激します。
要するに、ADHDの人にとって、ファストフードは「すぐ手に入る快感」として非常に魅力的なのです。
またADHDには衝動性が特徴として含まれており、「考えるより先に行動してしまう」「長期的な計画より目の前の欲求を優先する」傾向があります。
そのため、「家に帰って料理をする」よりも、「今すぐコンビニやファストフード店で食べる」といった選択をしやすいと考えられています。
加えて、先ほども指摘されていたように、思春期の段階ではまだ両親の下で生活しており、食事も両親によって決められるので、ファストフードを食べる機会が制限されます。
しかし成人後に自立して一人暮らしするようになると、自分で食事メニューを決めることができるので、手軽なファストフードを選びがちになるのです。
このように、ADHDの人には運動習慣の悪影響こそ見られなかったものの、食習慣には大いに注意すべき点があります。
毎日口にするものは心身の健康に多大な影響を及ぼすため、ADHDの人を対象とした健康的な食事管理の方法を新たに確立する必要があるでしょう。
参考文献
Childhood ADHD linked to higher fast-food consumption in adulthood
https://www.psypost.org/childhood-adhd-linked-to-higher-fast-food-consumption-in-adulthood/
元論文
Associations Between Childhood ADHD and Lifestyle Risk Factors for Chronic Diseases From Adolescence to Early Adulthood
https://doi.org/10.1177/10870547241306570
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部