「夜に運動すると眠れなくなる」

こんな話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

しかし、いくつかの研究では、「夜の運動は必ずしも眠りを妨害しない」という結果も報告されています。

では実際のところどうなのでしょうか?

この問いに答えを出すため、オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は、集大成ともいえる研究結果を発表しました。

約1万5000人の身体活動データを一年間追跡した大規模研究を通じて、「夜運動と眠り」の真相を明らかにしたのです。

研究の詳細は、2025年4月15日付の学術誌『Nature Communications』に掲載されました。

目次

  • 夜の運動は本当に睡眠を妨げるの?
  • 大規模研究で結論:激しい運動は睡眠の4時間以内に終わらせておくべき!

夜の運動は本当に睡眠を妨げるの?

そもそも運動は眠りに良い、と言われています。

身体温の上昇と下降は眠りのスイッチを押し、自律神経の改善やホルモンの分泌によって良質な眠りが促進されるからです。

運動によって精神的緊張が解けることも、「運動は眠りに良い」と言われる理由です。

とはいえ、夜間の高強度な運動は「眠りの質を悪化させる」と警告されてきました。

「寝る2時間前には運動すべきでない」と聞いたことがある人も多いでしょう。

研究結果は様々。寝る前の運動は本当にダメなの?大規模研究で調査 / Credit:Canva

しかし、こういったアドバイスにも、実は揺らぎがあります。

実際、モナシュ大学の研究チームは、「夕方の運動が必ずしも睡眠を妨げるわけではないことを示唆する研究が多くある」と述べています。

では、夕方・夜の運動は本当に睡眠にとって”悪”なのでしょうか?

研究チームはこの点を確かめるため、1年間にわたり、14,689人分の国際的なデータ(合計400万夜分)を収集しました。

その中で被験者たちは、センサーを装着し、運動、睡眠、心血管のデータを記録しました。

特に、夜間の運動とその強度、睡眠時間、質の関係性が分析されました。

結果はどうなったでしょうか。

大規模研究で結論:激しい運動は睡眠の4時間以内に終わらせておくべき!

大規模データを分析した結果、夜の運動はこれまで考えられていたよりも、睡眠の質に大きな影響を及ぼすことが分かりました。

就寝の4時間以内に運動すると、入眠のタイミングが遅くなり、睡眠時間が減少、睡眠の質も低下すると分かったのです。

しかもそのような条件では、夜間の心拍数は高いまま心拍変動性が低下しており、眠りの質を悪化させる原因となっていることが分かりました。

4時間前には運動を終えておくべき。特に高強度の運動は睡眠を大きく妨げる / Credit:Canva

特に高強度の運動は、睡眠に強い影響を及ぼします。

例えば、高強度の運動(HIITトレーニング、フットボール、ラグビー、長距離走など)を寝る2時間前以降に終えた場合、入眠が80分間も遅れ、眠眠時間も最大13.9%(約43分)も短くなることが分かりました。

やはりこれまでのアドバイスどおり、快適な睡眠を得たいなら、就寝のかなり前に運動を終わらせておく必要があるようです。

では、どうしても夜しか運動する時間が空いていない場合はどうすべきですか?

研究チームは、「就寝の4時間以内に運動する場合は、軽いジョギングや水泳など、短時間かつ低強度の運動を選ぶことで、睡眠の妨げを最小限に抑え、体をリラックスさせることができる」と述べています。

このことは夜の運動を絶対に禁止するものではなく、運動時間と負担の配分に注意すれば、夜の運動もむしろ眠りの支援になることを示しています。

もし、夜の運動がルーティンになっているのであれば、今回の大規模研究の結果を受けて、タイミングや負荷をいくらか調整できるかもしれません。

そんな微調整が、あなたの睡眠をもっと快適なものにしてくれるはずです。

全ての画像を見る

参考文献

Evening exercise impacts sleep for longer than previously thought
https://newatlas.com/fitness/evening-exercise-sleep/

Exercise before bed is linked with disrupted sleep: study
https://www.monash.edu/news/articles/exercise-before-bed-is-linked-with-disrupted-sleep-study

元論文

Dose-response relationship between evening exercise and sleep
https://doi.org/10.1038/s41467-025-58271-x

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 【夜に運動する人へ】睡眠は予想以上に妨げられる!○○時間前がベスト!【大規模研究で決着】