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そんな遊具に羽が加わるという面白い構造の小型ロボットが、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームによって開発されました。
このロボットはなんと、全長およそ5センチですが、ジャンプと羽ばたきの組み合わせにより全長の4倍も跳び、効率的に移動できるのです。
「跳ぶ機能」をもつ小型ロボットに「飛ぶ機能」が加わるとき、移動ロボットに新たな可能性が生まれるかもしれません。
研究の詳細は、2025年4月9日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。
目次
このロボットの最大の特徴は、「ホッピングと羽ばたきの融合」という斬新な移動スタイルにあります。
小型ロボットにとって地上を移動する際の大敵は「摩擦」です。
足で地面を歩くには相応の出力とバランス制御が必要ですが、サイズが小さいほどそれは難しくなります。
そこで研究者たちは視点を変え、地面を歩くのではなく“跳んで飛ぶ”というアプローチを取りました。
自然界では、バッタやカエル、ノミなどが、跳んで移動しています。
MITのチームは、このような「跳ぶ生物」を模倣し、さらに昆虫のような軽い羽4枚を追加して「飛ぶ」ようにすることで、より効率的な移動を可能にしました。
構造は無駄なものを極限まで排除しており、遊具の「ホッピング(ポゴスティック)」に小さな羽を取り付けたようなシンプルなものです。
ロボットはジャンプ後、羽を使って横方向の移動を補助できます。
そして着陸時には落下のエネルギーを利用して、再びジャンプするための力を得ます。
「ジャンプ → 羽ばたき → 着地 → チャージ → 再びジャンプ」というサイクルにより、エネルギーの無駄なく広範囲の移動が可能なのです。
ジャンプと羽ばたきを繰り返すこのスタイルは、エネルギー効率が極めて高く、地形の影響も受けにくいというメリットがあります。
では、「跳ぶ×飛ぶ」の組み合わせの結果、どんな能力が得られたのでしょうか。
(次項では、ロボットが実際に移動している動画を公開します)
新しいロボットは、その独特な構造により、自身の全長の4倍の高さである20cmまで跳ぶことができます。
さらにその後は、羽も使って毎秒30cmの速度で横方向にも移動できます。
様々な地形でも問題なく移動でき、飛行型ロボットに比べて消費電力を約60%も削減できます。
さらに、エネルギー効率や耐久性に優れているため、同サイズの飛行型ロボットに比べて約10倍の重さの荷物を運ぶことさえできます。
この特徴を活かせば、倒壊した建物内部での人命捜索(狭小空間でも侵入可能)、火山や森林などGPSや電波が届きにくい環境での観測・測定、月面や火星といった重力の小さい惑星での調査・移動などで活躍するかもしれません。
もちろん、現時点では課題も存在します。
たとえば、安定した飛行制御技術や、センサー・通信機能の超小型化、バッテリー持続時間の最適化などであり、それらは今後の研究課題です。
しかしこれらの研究が進むことで、この「跳ぶ×飛ぶ」というコンセプトが小型移動ロボットの可能性を大きく広げるかもしれません。
参考文献
Watch: Crafty robot uses wings to help it hop where others fear tread
https://newatlas.com/robotics/hopping-robot-wings/
Hopping gives this tiny robot a leg up
https://news.mit.edu/2025/hopping-gives-tiny-robot-leg-up-0409
元論文
Hybrid locomotion at the insect scale: Combined flying and jumping for enhanced efficiency and versatility
https://doi.org/10.1126/sciadv.adu4474
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部