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しかし私たち一般人にとっては「UAPって本当にあるの?」「実在する証拠は?」と、半信半疑な気持ちの方が強いでしょう。
実際、UAPの研究はこれまで、信頼性の高いデータが少ないことが大きな障壁となってきました。
理由は明快で、多くの観測データは軍事機密に関わるため公開されず、民間の研究者たちは手詰まりの状態にあったのです。
加えて、地球の全天を24時間365日体制で監視することが難しい点も大いに関係しています。
そこで研究チームが新たに導入を考えているのが、全天赤外線カメラシステム「Dalek(ダーレク)」です。
この取り組みには「誰の目にも開かれている空を、全天候・全時間帯で、しかも赤外線という目に見えない領域で観測し続ければ、正体不明の飛行物体を科学的に検出できるかもしれない」―そんな期待が込められています。
実際にチームはDalekを使ったテスト運用を開始しており、すでに正体不明の飛行物体を確認しているのです。
研究チームが開発した装置「Dalek(ダーレク)」は、全天型の赤外線カメラアレイです。
これは8台の赤外線カメラをドーム型に配置し、全天を隙間なく見張ることができる観測システムです。
赤外線によって、人の目には見えない熱源―たとえば、夜間に飛行する航空機やドローン、鳥類、そして可能性としての未確認飛行物体―を検出することを可能にします。
また、人工知能(AI)による画像解析技術も取り入れられており、「YOLOv5(You Only Look Once)」という物体認識モデルと、「SORT(Simple Online and Realtime Tracking)」という追跡アルゴリズムを用いて、動く物体の軌道を正確に再構成します。
Dalekは米マサチューセッツ州の開発拠点に設置され、2023年末から5カ月にわたってテスト運用されました。
その間に記録された空の映像からは、約50万件もの飛行物体の軌道が再構成され、そのうち約8万件が「異常」と判定されました。
さらに手動で解析された結果、144件の軌道が「分類不能」、つまり現時点では正体が断定できないものとして残されたのです。
この数は決して「宇宙人が来た証拠」ではありませんが、これまでにないスケールで「空に何が飛んでいるのか」を明らかにしつつある成果といえるでしょう。
将来的には、複数拠点に同様の装置を配備して三角測量による距離測定も導入し、異常飛行の検出精度を高める計画です。
地球の空の監視体制が進歩することで、これまでは不確かだった未確認飛行物体の正体を解明できるかもしれません。
参考文献
Infrared AI Camera Proposed to Scan Earth’s Skies For Signs of Alien Visitors
https://www.sciencealert.com/infrared-ai-camera-proposed-to-scan-earths-skies-for-signs-of-alien-visitors
元論文
Commissioning an All-Sky Infrared Camera Array for Detection of Airborne Objects
https://doi.org/10.3390/s25030783
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部