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その結果、寿命のばらつきのうち、遺伝的要因で説明できたのはわずか2%未満に過ぎなかったのに対し、環境要因で説明できたのは実に17%だったのです。
つまり、寿命に関しては遺伝子よりも日々の生活習慣やライフスタイルの方が圧倒的に大きな影響を持っていることを指し示しています。
この結果は「生まれか育ちか(nature vs. nurture)」という議論において、はっきりと「育ち(nurture)」側に軍配を上げるものです。
では、環境要因の中でも特に寿命に対して強い影響が見られたものを見てみましょう。
データ分析の結果、寿命への強い影響が見られた要因には、以下のようなものがありました。
この他の興味深い発見としては、10歳時点で身長が高かった人ほど寿命が短い傾向があるという相関関係も見られました。
これは意外に思えるかもしれませんが、過去の研究でも、背の高い人は早く亡くなる傾向があるとされており、今回の結果とも一致しています。
また10歳の時点で体重が重かったことや、母親が妊娠後期や出産直後に喫煙していた場合も、寿命が短くなる要因とされました。
他方で、食習慣については生物学的老化との明確な関係が見られなかったといいます。
ただし、これは「食生活が老化に無関係」ということではなく、日々の食事内容が被験者の自己申告に基づいていたため、正確に栄養レベルが測定できなかったことが関連していると研究者は指摘しています。
今回の研究結果は、長く健康に生きたいと考える人にとって強い励みとなるでしょう。
もし寿命が生まれつきの遺伝子によって決まるなら、私たちにはどうしようもありません。
しかし本研究が示すように、私たちの寿命は日々の選択によって形作られた生活習慣によって大きく左右されるのです。
長寿になれるかどうかは、あなたの手の中に隠されているのかもしれません。
参考文献
How long will you live? New evidence says it’s much more about your choices than your genes
https://theconversation.com/how-long-will-you-live-new-evidence-says-its-much-more-about-your-choices-than-your-genes-251054
元論文
Integrating the environmental and genetic architectures of aging and mortality
https://doi.org/10.1038/s41591-024-03483-9
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部