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他方で、友情はどうでしょうか?
友達と過ごす時間は楽しく気楽なものであり、恋愛と違って「独占欲」や「浮気の心配」といった負担が少ない特徴があります。
また友達は恋人のように一人ではなく(浮気している場合を除いてですが)、複数人いる場合がほとんどです。
そのうちの一人が忙しくて会えなくても、他の友達と遊んだり、会話することができます。
これまでの研究では、友情は人の幸福感を高める要素であり、うつ症状のリスクを下げる可能性があることが示唆されていました。
しかし「友情と恋愛がメンタルヘルスに及ぼす影響を長期的に比較する研究」は、これまでほとんど行われていませんでした。
そこで研究チームは、友情と恋愛が心の健康にそれぞれどのような影響を与えるのか、22年間にわたる追跡調査を行ったのです。
今回の研究では、全米縦断研究(National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health)のデータを用い、15歳から38歳までの2812人の参加者を対象に調査が行われました。
調査は15歳、16歳、28歳、38歳の4つの時点でデータ収集することで、思春期から中年期初期にかけての変化を追跡しています。
研究では、以下の点を分析しました。
・うつ症状の測定:過去7日間に感じた憂うつ感や悲しみを評価
・恋愛関係の有無:各調査時点で恋愛関係にあるかどうかを記録
・友情の有無:親しい友人がいるかどうかを記録
このデータを基に、研究チームは「友情関与」「恋愛関与」がうつ症状に与える影響を統計的に分析しました。
その結果、以下の3つの重要な発見が明らかになりました。
1:友情関与は、うつ症状の軽減と一貫して関連していた
・常に深い友情関係を持つ人は、思春期から中年期にかけてうつ症状が少ない傾向があった
・常に親しい友人を持っていた人も、調査期間の中で新たに友情関係を深めた人も、うつ症状のリスクが低下していた
・特に成人期の友情の効果は思春期よりも強いことが示された
2:恋愛関与は、うつ症状の増加と関連する場合があった
・恋愛関係にある傾向が強い人とうつ症状には全体的に明確な関連性は見られなかった
・しかし新たに恋愛関係を始めることは、年齢を問わず一貫してうつ症状の増加と関連していた
・特に若い頃の恋愛は、感情の浮き沈みが激しく、ストレスを増やす可能性があった
以上の結果から、メンタルヘルスを安定して向上させるのは恋愛関係よりもむしろ友情関係であることが示されました。
この研究は、私たちが友情の価値をもっと重視すべきことを示しています。
恋愛関係は必ずしも幸福をもたらすとは限らず、ときにストレスや不安を引き起こす可能性があるのです。
一方で、友情は一貫してメンタルヘルスに良い影響を与えることが確認されました。
これは「恋愛が人生の一大事」という考え方を見直すきっかけになるかもしれません。
もしあなたが「恋人がいなくて寂しい」と感じているなら、まずは友達とのつながりを大切にしてみてはいかがでしょうか?
結局のところ、長く安定した幸せをもたらすのは、「恋愛」ではなく「友情」かもしれません。
参考文献
Why your friends may be better for your mental health than your partner
https://www.psypost.org/why-your-friends-may-be-better-for-your-mental-health-than-your-partner/
元論文
A longitudinal analysis of how romantic and friendship involvement are associated with depressive symptoms
https://doi.org/10.1177/02654075251321385
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部