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ファビングとは、自分のモバイル端末に気を取られて、目の前の話し相手や周囲の人を無視することを指します。
この「ファビング」は2010年代前半に作られた言葉であり、スマートフォンの普及とともに世界中で問題視されるようになりました。
誰しも一度は、ファビングを経験したことがあるのではないでしょうか。
従来の研究では、ファビングをされた側の心理的影響が主に注目されていました。
例えば、会話中に相手がスマホに目を向けると、無視されたと感じる人が多く、それが孤独感や不満を生むことが指摘されてきました。
しかし、これまでファビングをする側の影響を調べた研究はなく、今回研究チームは、この点に取り組むことにしました。
研究チームはまず、220人を対象に調査研究を実施しました。
この調査では、ファビングの頻度と共感力や社会的行動の関連性を分析しました。
その結果、ファビングを頻繁に行う人ほど、共感力が低く、他者を助ける意欲が低いことが確認されました。
さらに、ファビングを習慣的に行う人ほど、自己制御能力が低下する傾向が見られました。
次に、研究チームは362人を対象に実験研究を実施しました。
この実験では参加者が2つのグループに分かれ、会話中にスマホを使用する事例と、使用を控えた事例を思い起こさせました。
そして共感力や社会的行動の変化を測定しました。
その結果、ファビングした状況を思い浮かべた人は、ファビングを控えた状況を思い出した人よりも、平均して共感力が低いと分かりました。
これは、ファビングという行為がその人の共感力を下げていく可能性を示唆しています。
長期間のファビングが習慣化されることで、共感力の低下や社会的行動の減少が引き起こされる可能性が高いのです。
研究者によると、共感力を発揮するためには、相手の表情や声のトーン、言葉に注意を向けることが不可欠です。
しかし、スマホに気を取られることで、注意力が分散し、相手の感情を深く理解する能力が損なわれる可能性があります。
その結果、共感する力が低下し、他者を助けようとする気持ちまでも薄れてしまいます。
では、このスマホ時代に共感力を維持するにはどうすればよいのでしょうか。
この研究が示すのは、ファビングが単なるマナー違反ではなく、私たちの共感力や社会的なつながりにまで悪影響を及ぼす可能性があるということです。
私たちはスマートフォンを通じて、いつでもどこでも情報を得ることができる便利な社会を享受しています。
しかし、その一方で、リアルな対話の質が低下し、人と人とのつながりが希薄になっているかもしれません。
では、ファビングの影響を抑えるために、どのような工夫ができるのでしょうか。
まず、食事や会話中はスマホを触らないようにすることが重要です。
スマホを手元に置いているだけでも、注意が分散することが研究で示されています。
また、SNSやメッセージの通知をオフにすることで、ついスマホをチェックしてしまう衝動を抑えることができます。
さらに、相手の目を見て話し、積極的に相槌を打つことで、共感力を高め、より深い対話が可能になります。
今回の研究結果は、ファビングが他者との関係性だけでなく、自分自身の共感力や社会性にも悪影響を与えることを示しました。
スマホの使い方を見直し、大切な人との時間をより充実させることで、より豊かなコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。
あなたも今日から、ファビングを意識的に減らしてみませんか。
参考文献
Ignoring others for your phone? Research links phubbing to lower empathy
https://www.psypost.org/ignoring-others-for-your-phone-research-links-phubbing-to-lower-empathy/
元論文
Phubbing Makes the Heart Grow Callous: Effects of Phubbing on Pro-social Behavioral Intentions, Empathy and Self-Control
https://doi.org/10.1177/00332941241284917
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部