- 週間ランキング
コロナ禍をきっかけに全国でテレワークが普及し、以前に比べて家で仕事をする人が非常に増えました。
テレワークには「通勤時間がなくなる」「自由な環境で仕事ができる」などのメリットがある反面、「集中できない」「オンとオフの切り替えが難しい」といった声もよく聞かれます。
特に、周囲に同僚や上司がいないため、仕事に集中する環境を自分でコントロールして整える必要があります。
これまで、集中力を高める方法として、適度な運動やカフェイン摂取、ポモドーロ・テクニック(25分作業したら5分休憩を挟む)などが推奨されてきました。
しかし近年、新たなアプローチとして「香りの力」が注目されています。
過去の研究では、アロマテラピーがストレスの軽減やリラックス効果をもたらすことが確認されています。
では、香りがテレワークの仕事パフォーマンスにも影響を与えるのでしょうか?
今回の研究では、精油の香りを用いることで、気分や仕事の効率が向上するのかを検証しました。
この研究では、テレワークを1年以上継続している25~49歳の男女30名を対象に、精油の香りを使用した実験を行いました。
参加者は、以下の4種類の精油から好きなものを選び、日中と夜間に使用しました。
・日中は「ローズマリー・シネオール 」または「スイートオレンジ」
・夜間は「真正ラベンダー」または「ベルガモット」
比較対象として、香りのない精製水を使用する試験も実施しました。
研究では、気分の変化・睡眠の質・認知機能・仕事のパフォーマンスを測定しています。
その結果、以下のような効果が確認できました。
精油の香りを嗅いでから10分後に、参加者の気分が有意に向上したことが確認されました。
具体的には、活性度(Vitality)・安定度(Stability)・快適度(Pleasure)のスコアが上昇し、リラックスしながらも活力を感じる状態になっていました。
これにより、仕事の開始時にアロマを活用することで、短時間で気分を整え、スムーズに作業に入れる可能性が示されました。
4週間の芳香浴を実施した結果、プレゼンティーイズム(健康問題による仕事上の生産性の低下)が有意に低下しました。
これは香りによって気分が安定し、ストレスが軽減されることで、仕事の効率が向上したと考えられます。
一方で、精油の使用による睡眠の質が低下することはありませんでしたが、反対に質が向上することも確認されませんでした。
香りのリラックス効果はあるものの、睡眠そのものの改善には別の要因が関与している可能性が示唆されました。
今回の研究により、アロマテラピーが気分の向上や仕事の効率アップに役立つ可能性が明らかになりました。
特に、仕事を始める前や集中力を高めたいときに精油の香りを取り入れることで、スムーズに作業に取り組めるかもしれません。
在宅勤務中に集中力が続かないと感じる方は、お気に入りのアロマを取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
芳香浴でテレワーク中の気分やパフォーマンスが改善する可能性を確認
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250303140000.html
元論文
テレワーク就業者の心身に対する精油の香りの影響
https://doi.org/10.15035/aeaj.260104
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部