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この新種の植物の学名は「オヴィクラ・ビラディアータ(Ovicula biradiata)」と命名されました。
ラテン語で「羊(Ovis)」を意味する言葉と「二つの放射状の花(biradiata)」を意味する言葉を組み合わせた名前です。
これは同公園に生息する大きなツノを持った羊「ビッグホーン」に由来しています。
また全身が羊のような白い毛に覆われていることも関係しており、研究者たちは本種の愛称として「毛むくじゃらの悪魔」と呼んでいます。
ビッグホーンの写真はこちら。
またこの植物は新種であるだけに留まりませんでした。
この植物は、メキシコ北部〜アメリカ南西部にまたがるチワワ砂漠の乾燥した砂地に生息しており、発見されたのは公園内でもわずか3カ所のみ。
その生息範囲は極めて狭く、大きさもわずか1〜3センチ程度です。
一年草であり、春の短い期間に一斉に発芽し、開花後はすぐに枯れてしまいます。
さらに興味深いのは、その分類です。
DNA解析の結果、この植物はヒマワリなどが含まれるキク科の一員でしたが、キク科のどの属とも異なる新属であることが特定されたのです。
アメリカの国立公園で新属の植物が見つかったのは約50年ぶりの快挙だといいます。
その一方で、本種が示す異常に狭い生息範囲は、これらが「気候の変動に非常に敏感である可能性を示唆している」と研究者らは懸念します。
さらに最近、このチワワ砂漠の一帯は深刻な干ばつに見舞われており、気候変動の影響で今後さらに乾燥が進むと予測されています。
そのため、研究者たちは「この植物は発見されたばかりだが、すでに絶滅の危機にさらされている可能性がある」と話しています。
そこでチームは、本種の危機的な状況を考慮し、生息地について大まかな情報しか公開せず、正確な位置までは明かしていません。
今後さらなる調査によって、本種の保護活動や生態の詳しい理解を進めていく予定です。
参考文献
New Plant Species Discovered at Big Bend National Park
https://www.nps.gov/bibe/learn/news/new-plant-species-discovered-in-big-bend.htm
‘Devil’-like flower with ‘horns’found in Texas is new species: Its location is secret
https://phys.org/news/2025-02-devil-horns-texas-species-secret.html
元論文
Ovicula biradiata, a new genus of Compositae from Big Bend National Park in Trans-Pecos Texas
https://doi.org/10.3897/phytokeys.252.137624
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部