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2:食べ物 vs. 色の選択実験
次に、犬の前に「食べ物の入った灰色のボウル」と「空の黄色のボウル」を置きました。
普通に考えると、空腹の犬なら食べ物の入ったボウルを選びそうですが、実際には52匹中41匹が空の黄色のボウルを選んだのです。
さらに、食べ物としてより魅力的な生のチキンを使っても、61匹中47匹が空の黄色のボウルを選びました。
これは犬が食べ物以上に黄色に強く惹かれている可能性を示唆しています。
では、犬たちはなぜ黄色が好きなのでしょうか?
今回の研究では、犬が「黄色」に強く惹かれる理由について、いくつかの仮説が挙げられています。
その一つが「生態学的価値(ecological valence)」という理論です。
この考え方では、動物は本能的に生存に有利な色を好むとされています。
例えば、犬にとって明瞭に見える黄色は「食べ物」や「安全」「快適さ」などのポジティブな要素を連想させる可能性があるのです。
具体的には、生きていくために必要不可欠な生肉の赤色やピンク色も、犬にとっては黄色がかった色に見えると考えられます。
このような背景から「犬が黄色を好む傾向は家畜化される以前のオオカミ時代からすでに存在していた可能性がある」と研究者たちは指摘しました。
今回の調査はインドの路上の野良犬のみを対象としたものですが、同じ結果はペット犬にも当てはまる可能性があります。
この知見を応用すれば、例えば、犬用のおもちゃや食器を黄色にすることで、より関心を引きやすくなる可能性があります。
また、犬の捕獲や救助の際にも、黄色を活用することで効率が上がるかもしれません。
さらに、オオカミや他の動物にも同様の色の嗜好があるのかを調べることで、動物の色覚の進化についての理解も深まるでしょう。
この研究を通じて、犬の色の好みが単なる偶然ではなく、本能的なものである可能性が浮かび上がってきました。
もしかすると、あなたの愛犬も黄色いおもちゃや食器を特に好んでいるかもしれませんね。
参考文献
Do dogs have a favorite color? New study suggests it might be yellow
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/do-dogs-have-a-favorite-color-new-study-suggests-it-might-be-yellow/
Indian street dogs show strong preference for yellow bowls, even empty ones
https://phys.org/news/2025-02-indian-street-dogs-strong-yellow.html
元論文
Ready, set, yellow! color preference of Indian free-ranging dogs
https://doi.org/10.1007/s10071-024-01928-9
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部