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氷河は単なる「巨大な氷の塊」ではありません。
地球の気候システムにおいて極めて重要な役割を果たしています。
氷河は世界の淡水の大部分を蓄えており、アジアや南米などでは、氷河の融解水が飲料水や農業用水として利用されています。
しかし、温暖化が進むことで氷河の融解が加速し、海面上昇や水資源の減少、気候変動の加速といった深刻な影響が現れています。
これまでにも氷河の融解に関する研究は行われてきましたが、世界中の氷河がどの程度の速度で減少しているのかを正確に把握することは困難でした。
そこで、GlaMBIE研究チームは衛星データや地上観測を組み合わせ、氷河の質量変化を高精度で分析する方法を開発しました。
具体的には、現地観測による直接測定、衛星カメラ、レーザーやレーダー、重力測定などの手法を組み合わせることで、世界中の氷河の変化を詳細に把握することが可能となりました。
これにより、科学者たちが「衝撃的だ」と驚くほどの結果が得られました。
研究の結果、世界中の氷河は2000年から2023年の間に、合計6兆5420億トン消失しました。
これは毎年2,730億トンもの氷が失われていることになります。
研究者らは、この1年間の数字が「世界人口の30年分の水消費量に相当する」と述べています。
しかも融解の速度は過去10年間で急増しています。
2012年から2023年にかけて失われた氷の量は、2000年から2011年に失われた氷の量と比べて、約36%も増加しているのです。
2023年には過去最大となる5,400億トンの氷が失われたことも明らかになっています。
また研究では、地域ごとの影響も算出されています。
2000年以降、中央ヨーロッパ(-39%)、コーカサス(-35%)、ニュージーランド(-29%)、アジア北部(-23%)の氷河の減少が見られます。
世界全体で考慮すると、2000年以降、約5%の氷河が失われたことになります。
ちなみに、融解した氷河総量で考慮すると、アラスカ、カナダ北極圏、グリーンランド周辺、南米アンデスでは、元々大量の氷河が存在しており、その分、消失した氷河量も多くなりました。
今回の研究は、氷河の融解が地球温暖化の影響を直接的に示していることを明らかにしました。
氷河を守るためには、私たちが温室効果ガスの排出を減らし、地球温暖化を抑えることが不可欠です。
参考文献
Melting glaciers increase loss of freshwater resources and rise global sea levels
https://www.eurekalert.org/news-releases/1073894
‘Shocking’: Global Glacier Ice Loss Accelerates by 36% in Last Decade
https://www.sciencealert.com/shocking-global-glacier-ice-loss-accelerates-by-36-in-last-decade
元論文
Community estimate of global glacier mass changes from 2000 to 2023
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08545-z
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部