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極楽鳥のオスはメスを引きつけるために、極めて独特なダンスを披露し、複雑な動きを組み合わせた求愛行動を行います。
また、極楽鳥の羽毛はメラニンやカロテノイドによって鮮やかな色が形成され、光の反射によってさらに際立つことが知られています。
そして、今回の新しい研究では、彼らがもっと「派手」であることが分かりました。
極楽鳥の羽に「生物蛍光(biofluorescence)を発する性質」があるとわかったのです。
生物蛍光とは、生物の体が特定の波長の光を吸収し、別の波長の光として再放出する現象です。
発光とは異なり、外部の光源が必要であり、紫外線やブルーライトを受けたときに蛍光を発します。
この現象はクラゲ、カエル、魚類などで知られており、最近では、一部の哺乳類にも生物蛍光が存在することが確認されています。
では、極楽鳥の生物蛍光とはどのようなものなのでしょうか。
研究チームは、アメリカ自然史博物館に所蔵されている極楽鳥45種の標本を分析しました。
調査方法としては、暗室の中でブルーライトや紫外線を照射し、その反応を特殊なカメラで記録するというものです。
その結果、驚くべきことに45種中37種(約82%)が生物蛍光を発していると判明しました。
特にオスでは、頭・首・腹部・飾り羽・クチバシ・口の中といった部位が光ることがわかりました。
メスも一部の種では腹部の羽が光るものの、オスほど目立つ輝きを持っていませんでした。
また、光る色は緑や黄緑(波長520〜560nm)であり、これは鳥の目にとって最も目立つ色です。
特に興味深いのは、オスの口の中が光る種が多いという点です。
極楽鳥の求愛ダンスでは、オスが口を大きく開ける動作がよく見られますが、もしかするとこの光る口が「視覚的シグナル」として機能し、メスに対するアピールを強化しているのかもしれません。
この研究の結果、極楽鳥の派手な羽毛や求愛ダンスには、生物蛍光が重要な要素として関わっている可能性が示唆されました。
極楽鳥の美しさは「羽の色や形」によるものだけではなかったのです。
研究チームも、「これらの派手な鳥は、さらに派手な方法で互いに合図を送っている可能性が高い」と述べています。
それでも、現段階では分かっていない部分が多く残っています。
今後は、「野生の極楽鳥が実際にどのようにこの蛍光を利用しているのか」「他の鳥類にも同様の蛍光現象が存在するのか」といった点を詳しく調査する必要があります。
もしかすると、私たちが普段見ている鳥たちも、「秘密の光」を持っているのかもしれません。
参考文献
Study finds that birds-of-paradise are biofluorescent
https://www.eurekalert.org/news-releases/1073310
Most Birds-of-Paradise Are Secretly Biofluorescent, Study Finds
https://www.sciencealert.com/most-birds-of-paradise-are-secretly-biofluorescent-study-finds
元論文
Does biofluorescence enhance visual signals in birds-of-paradise?
https://doi.org/10.1098/rsos.241905
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部