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今回の研究では、65歳以上のアメリカ人1万3205人を対象に調査が行われました。
特にここでは、幼少期に身体的・性的虐待を受けた経験のない人々を対象とすることで、虐待による影響を排除し、純粋に「両親の離婚」と「脳卒中リスク」の関係を分析しました。
幼少期に両親が離婚した人のうち、約14%が18歳までに両親の離婚を経験しています。
そして健康との相関関係を調べた結果、幼少期に両親の離婚を経験している人は、そうでない人に比べて、将来的な脳卒中の発症率が有意に高くなっていることが明らかになりました。
具体的には、他のリスク要因(糖尿病、うつ病、喫煙、運動不足、低所得など)を考慮に入れても、両親が離婚した人は脳卒中のリスクは61%高いことが示されています。
またこの研究では、男性は女性よりも脳卒中を発症する可能性が47%高いことも示されました。
しかし男女ともに脳卒中リスクは加齢に従って増加する傾向が見られています。
では、なぜ両親が離婚していると、子供の将来的な脳卒中リスクが高まるのでしょうか?
今回の研究は「両親の離婚」と「子供の将来的な脳卒中リスク」の相関関係を調べただけであり、両者の間の因果関係までは明らかにできていません。
それでも研究者たちはいくつかの可能性を指摘しています。
このように、両親の離婚という出来事がさまざまな形で健康に影響を与える可能性があるのです。
今回の研究は観察研究であり、因果関係を直接証明するものではありません。
しかし、幼少期の家庭環境が成人後の健康に深く関係している可能性を示唆する重要な研究といえます。
また現在では社会の価値観が一昔前と比べて変化しているため、今後の世代(X世代やミレニアル世代)においても同じような影響が見られるのかどうかはさらなる研究が必要です。
両親の離婚が健康に及ぼす影響をより詳しく理解することで、将来的には予防策や支援策の開発につながる可能性もあります。
幼少期のストレスと健康の関係は、私たちの人生に大きな影響を与える重要なテーマなのです。
参考文献
Children of Divorce Face Greater Risk of Future Stroke, Study Reveals
https://www.sciencealert.com/children-of-divorce-face-greater-risk-of-future-stroke-study-reveals
元論文
Parental divorce’s long shadow: Elevated stroke risk among older Americans
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0316580
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部