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次に「他人に共感しやすい」特性があります。
HSPの人は相手の気持ちや場の空気を敏感に察知して、読み取る能力に長けており、小説やドラマを見ていても登場人物に強く感情移入しやすいです。
これはポジティブな特性ではありますが、HSPはこれが行きすぎて次のような事態にいたる可能性があります。
それは「周囲の影響を受けやすい」ことです。
HSPは、自分と他人とを線引きしておくための”心の境界線”が薄いことで知られます。
心の境界線が薄いと、相手の気持ちを配慮して深く共感できる反面、相手の言うことに過度に同調したり、容易に自分の考えを曲げて、相手に引きずられるマイナス面があります。
特に自らの意見をハキハキと断言する人の主張は正しく感じてしまい、そうした人同士の言い合いなんかを横で聞いていると、どちらの意見も正しいように思えてきて、自分の本当の気持ちを見失ってしまいかねません。
そしてこれらの特性から最終的に「疲れやすい」という性質が現れます。
環境刺激にいちいち敏感に反応していたり、相手の気持ちや考えを必要以上に読み取ろうとしていると、当然ながら心理的に追い込まれて、疲れやすくなるのです。
HSPの人はここからさらに「自己否定が強くなる」ことがあります。
繊細さんはその気遣いや優しさ、思い込みから、対人交流において相手を責めることをほとんどしませんし、逆に相手を気にするあまり、それが返って「私が悪かったのではないか」と責めの矛先を自分に向けてしまいやすいのです。
このように繊細さん(HSP)は、感度の良すぎるアンテナを常に張り巡らしているようなものであり、他人が気づかないことに敏感に反応できることもあれば、気にしすぎて心理的なストレスが大きくなることがあります。
これまでの調査によると、HSPの人口は全体の20%弱、およそ5人に1人が当てはまるとされています。
しかし裏を返せば、HSPの人たちは残り8割の人々の共感を得にくく、無理に自分を周囲に合わせようとして「生きづらさ」を感じるケースも多々あるのです。
このようにHSPの特性は「生きづらさ」という点に帰着することが多いのですが、決して悪いことばかりではありません。
新たな研究では、HSPの存在が会社にとってポジティブな作用をもたらすことが示されたのです。
HSPが他の人々に比べてストレスを感じやすいことは、主に児童や大学生を対象とした研究ですでに示唆されてきました。
しかし一方で、会社で働く社会人を対象とした同様の調査はありません。
そこで大阪大学国際教育交流センターは今回、日本国内の企業に勤務している18〜81歳の社会人296名を対象に調査を実施し、HSP特性と職場でのストレスの関係を調べることに。
その結果、まず、調査参加者の約26%が「HSP特性の高い社会人」に当てはまることがわかりました。
そしてHSPの特性が高い社会人ほど、「周囲に疎外されている」と感じやすく、ストレスを感じやすい傾向があることが示されたのです。
やはりHSP傾向が強いと、会社内のさまざまな出来事に敏感に反応して、ストレスを抱きやすくなると考えられます。
ところがその一方で、HSPの特性が高い社会人ほど、同僚など他の人への共感能力も高いしことが示されたのです。
研究者はこれを受けて、「HSPは同僚の気持ちを思いやって共感できるため、『自分の気持ちをわかってもらいたい』という人々の欲求を満たし、周囲と協力して仕事を進めることができる」と指摘。
それを踏まえて「HSPは企業にとってポジティブな存在となる可能性が高い」と説明しました。
つまり、繊細さん(HSP)は何かとストレスを抱えやすいというマイナス面こそあるものの、周りの仕事仲間の目には「私のことを理解してくれる優しい人」と映っているのかもしれません。
参考文献
ストレスは感じやすいが、周囲を思いやって仕事ができる!企業で働くHSPの特性を解明
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20241106_2
Are You a Highly Sensitive Person?
https://www.verywellmind.com/highly-sensitive-persons-traits-that-create-more-stress-4126393
元論文
企業で働くHighly Sensitive Personはストレスを感じ,共感しやすいか
https://doi.org/10.24651/oushinken.50.1_11
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部