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研究チームは1606年から2023年までの科学文献を調査した結果、ディファリアを報告した症例研究を全部で112件見つけることができました。
その中で「ペニスが3本あった」という例はわずかに一例のみです。
2020年にイラクの医学研究チームが、生後3カ月の男児に生まれつき3つのペニスがあることを報告していました(International Journal of Surgery Case Reports, 2020)。
男児には、通常のペニスと肛門の間の領域である「会陰(えいん)」に長さ2センチの小さな亀頭が付いていたという。
さらに陰嚢(いんのう)の真下にも長さ約1センチほどの亀頭が見られました。
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この前例のない症例から報告したチームは、ペニスが3本ある先天異常のことを「トリファリア(Triphallia)」と呼んでいます。
幸いにも、男児の余分な2つのペニスは外科手術により無事に除去することに成功しています。
これが過去に唯一確認されているトリファリアの例でしたが、78歳の男性の症例はこの男児とはまた違った状態にありました。
先の男児の例では3つのペニスが外部に露出した状態でしたが、今回の男性の遺体では正規のペニス以外の2本は陰嚢の中に隠されている状態でした。
ペニスが複数形成されるディファリアは約500万〜600万人に一人の割合で起こるとされていますが、その大部分は余分なペニスが外部に露出しています。
この男性のように陰嚢を含む皮膚の下に隠れているケースは、研究者が調べた中でも6件しかありませんでした。
男性は生前に、排尿や勃起機能、生殖能力に特に異常を報告していなかったと見られることから、本人も自らのペニスが3つあることには気づいていなかったようです。
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ところが解剖の結果、陰嚢の中に隠された余分なペニスは通常と同じ「海綿体組織」が確認できました。
海綿体組織は血液の流入で膨らむため、男性は勃起時に何らかの違和感や痛みを感じていたかもしれません。
さらに驚くことに、余分なペニスのうちの一つは正規のペニスと同じ尿道を共有していたのです(下図を参照)。
これは男性が排尿をするときに、第二のペニスを経由してから正規のペニスへと尿が排出されていったことを示します。
図の黄色のラインが尿道を示しており、赤色の枠で示された部分(10番)が第二のペニスです。
第三のペニスは緑色で示された部分(6番)になります。
男性のペニスが3本になったのは、性器を形成する遺伝子に異常があったことが原因と指摘されています。
男性器は通常、妊娠4〜7週の間に発達が始まり、この初期段階において男性ホルモンの一種「ジヒドロテストステロン」によって生殖結節(男性器の発達中に存在する組織)の発生が促され、そこから陰茎が生じます。
この男性ではおそらく、遺伝子異常が原因で生殖結節が3つに分裂し、余分な2つのペニスが陰嚢の中に形成されたと研究者らは説明しています。
研究チームは今回の結果を受けて、男性のように生前に症状がなく、亡くなるまでペニスの異常に気づかないケースがあるのであれば、ディファリア(陰茎重複症)は予想以上に多くの男性のうちに隠れて存在している可能性があると話しました。
「自分は絶対に一つしかない」と思っていても、実は陰嚢の中に別のペニスが隠れているかもしれません。
もし昔からずっと、排尿時や勃起時に違和感や痛みを感じているのであれば、ディファリアあるいはトリファリアの可能性もゼロではないので、医師の診察を受けることをおすすめします。
参考文献
Ultra-Rare Case of Man With Three Penises Unlike Anything on Record
https://sciencealert.com/ultra-rare-case-of-man-with-three-penises-unlike-anything-on-record
Scientists accidentally discover a man with three penises
https://www.zmescience.com/science/news-science/scientists-accidentally-discover-a-man-with-three-penises/
元論文
Triphallia: the first cadaveric description of internal penile triplication: a case report
https://doi.org/10.1186/s13256-024-04751-5
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部