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iPS細胞は、病気の原因を解明するだけでなく、傷ついた臓器や組織を再生する治療にも役立ちます。
これにより、犬の健康寿命の延長に貢献する可能性があるのです。
また、犬と人間は同じような病気にかかりやすいため、犬のiPS細胞の研究から新しい治療法を見つけることで、人間の医療にも応用できるかもしれません。
さらに、犬のiPS細胞を使えば、薬の効果や安全性を効率よくテストできるため、医薬品開発にも大きな貢献が期待できます。
このように、犬のiPS細胞は、犬と人間の双方の健康に貢献する大きな可能性を秘めているのです。
犬のiPS細胞を作製する際には、実験環境が複雑で汚染のリスクも高くなるという課題がありました。
また、犬の細胞は人間の細胞と性質が異なるため、安定的に作製するのが難しかったのです。
しかし、今回の研究ではこれらの問題が解決され、犬のiPS細胞を安全に作製する方法が確立されました。
iPS細胞を作るためには、体細胞に「リプログラミング因子」と呼ばれる特定の遺伝子を導入し、細胞の分化能力を再活性化させる必要があります。
従来のiPS細胞の作製には、レトロウイルスやレンチウイルスがよく使われていましたが、これらにはいくつかの問題がありました。
これらウイルスは、リプログラミング因子を体細胞に導入する際、細胞のDNAに直接組み込まれる性質があり、DNAの変異や予期しない遺伝子発現の引き金となる可能性があります。
このため、がん化のリスクが高まるなど、安全性に課題がありました。
また、一度DNAに組み込まれると、遺伝子情報が長期的に残り続け、iPS細胞の応用範囲が制限される要因ともなっていたのです。
今回の方法では、センダイウイルスベクターというRNAウイルスを使って、犬の細胞にリプログラミング因子を効率よく導入します。
センダイウイルスは、他のウイルスベクター(レトロウイルスやレンチウイルスなど)とは異なり、細胞のDNAに組み込まれず、一時的に作用するだけで、その後は細胞内から消失します。
このため、iPS細胞のDNAには変異が生じず、元の体細胞の遺伝情報が保持されます。
また、ゲノムに痕跡が残らないことで、がん化リスクが低減し、安全性が高いという利点があります。
さらに、センダイウイルスは、フィーダーフリーという培養条件でも適応しやすいという特徴があります。
通常、iPS細胞を培養する際には「フィーダー細胞」と呼ばれるサポート用の細胞が必要です。
フィーダー細胞がiPS細胞の成長を助けますが、異種細胞が混ざることになり、汚染のリスクが高まるという課題がありました。
しかし、フィーダーフリーの方法では、このサポート細胞を必要とせず、シンプルな環境で細胞を安定して培養することができます。
これにより、実験の再現性も向上し、汚染リスクが低減され、iPS細胞の生成が効率化されるというメリットがあります。
また、今回の技術では、細胞の採取方法も改善されました。
以前は、犬から皮膚や組織を採取する必要がありましたが、現在では尿細胞からもiPS細胞を生成できるようになっています。
尿細胞は簡単に採取でき、犬への負担も少ないため、研究者が手軽に多くのサンプルを集め、さらに多様な実験に使用できるようになります。
このように、犬のiPS細胞を作製する技術は大きく進化し、安全で効率的な方法が実現しました。
こうした技術の進展により、犬の高度医療が実現する可能性が見えてきました。
さらに、犬と人間は類似した病気にかかることが多いため、犬のiPS細胞を使った研究が進むことで、人間の病気研究や新薬開発にも役立つ未来が期待されています。
犬と人の医療への貢献が期待できる犬のiPS細胞の今後が楽しみですね。
参考文献
世界初! イヌの尿由来細胞からのiPS細胞安定作製に成功
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-09494.html
元論文
Generation of canine induced pluripotent stem cells under feeder-free conditions using Sendai virus vector encoding six canine reprogramming factors
https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2023.11.010
ライター
岩崎 浩輝: 大学院では生命科学を専攻。製薬業界で働いていました。 好きなジャンルはライフサイエンス系です。特に、再生医療は夢がありますよね。 趣味は愛犬のトリックのしつけと散歩です。
編集者
ナゾロジー 編集部