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そして科学者たちが最も有力だと考えているのは、「シベリアの火山活動」です。
当時、現在のシベリア高原(ロシア)にあたる場所で、大規模な火山活動が200万年以上続き、この活動で放出された二酸化炭素が地球の急激な温暖化を引き起こしたというのです。
しかし、ファーンズワース氏は、この「火山活動による温暖化」説だけでは不十分であることを次のように述べています。
「気候温暖化だけでは、このような壊滅的な絶滅を引き起こすことはでません。
なぜなら、現在見られるように、熱帯地方が暑くなりすぎると、種はより涼しい高緯度に移動するからです」
そこで今回、ファーンズワース氏ら研究チームは、当時の生物の化石から得られるデータと、地球の大気と海洋の循環パターンに関するコンピュータシミュレーションを組み合わせ、大量絶滅期の気候モデルを作成・分析しました。
その結果、大量絶滅が生じたペルム紀末にて、最初に大気中の二酸化炭素が増加(410ppm→ 860ppm)し、地球の気温が上昇した際、当時の海では、現代のエルニーニョをはるかに超えるような現象が生じていたと分かりました。
(ちなみに、現在の空気中の二酸化炭素濃度は、422 ppm 前後を推移しています)
そもそもエルニーニョとは、現代において、中部・東部太平洋の赤道付近において海水温が平年より高くなり、その状態が1年ほど続く現象を指します。
逆に低い状態が続くことをラニーニャと呼び、この2つの現象はそれぞれ数年おきに発生します。
また研究が進むにつれ、エルニーニョやラニーニャは、海洋と大気の相互作用によって起きると分かっており、現在は一連の変動現象を「エルニーニョ・南方振動」と呼びます。
(具体的なメカニズムは完全には解明されていません)
そして、この周期的な変化によって、海水温だけでなく、世界中の気象が大きな影響を受けます。
近年でも、このエルニーニョ・南方振動により、降雨パターンと気温に大きな変化が生じています。
例えば、2023年から2024年は、強力なエルニーニョ現象の影響で、世界的に「最も暑い年」の1つとなりました。
またエルニーニョの影響は地域ごとで異なっており、南アメリカでは豪雨・洪水が引き起こされる一方で、インドやインドネシアでは干ばつが引き起こされました。
研究チームは現在のエルニーニョについて、「幸いなことに、このような出来事は1度に1~2年しか続かない」と述べています。
しかし新しい研究は、2億5200万年前には、火山噴火をきっかけに、もっと大規模なエルニーニョ現象が生じたかもしれないと報告しています。
研究チームはこれを「メガエルニーニョ」と呼んでおり、これがペルム紀から三畳紀にかけて繰り返され、時には1度のメガエルニーニョが10年間も続くことさえあったという。
現在のエルニーニョ・南方振動は、いわばシーソーのように1.2年ごとに傾きが変わるため、生物たちは何とか耐えることができています。
しかし遠い過去には、そのシーソーのバランスが極端、また崩壊しており、片方に傾いたままの状態が長期間続き、ほとんどの生物を絶滅に追い込んでいたというのです。
この影響について研究者たちは、次のように述べています。
「ペルム紀・三畳紀の危機の間、メガエルニーニョが長く続き、10年間にわたる干ばつと、その後数年間の洪水を生じさせました。
気候はあらゆる場所で変化しており、どの種にとっても適応するのが困難でした。
また干ばつが発生しやすい気候では、山火事も頻発します」
火山活動により大量の二酸化炭素が排出される中、メガエルニーニョによる干ばつや火災で森林が減少。温暖化はさらに進んだことでしょう。
この変化は、森林破壊だけでなく、海の中のサンゴ礁の消滅、プランクトンの危機へと繋がっていき、結果としてすべての生物に壊滅的な影響を及ぼしました。
ファーンズワース氏も、「温暖化が進み、植物が死滅。そしてエルニーニョが強くなり、世界の気温がさらに上昇。そうすると再び異常気象が発生。生物はますます死滅していきます」と、負の連鎖・サイクルが生じた可能性を指摘しています。
地球規模の温暖化、干ばつ、火災、そこからの大規模な洪水。あらゆる場所で問題が生じたため、多くの種はこの「気候のジェットコースター」から逃れる場所を見いだせず、絶滅してしまったと考えられます。
この新しい仮説は、単なる「火山噴火による温暖化」説よりも、大量絶滅の理由として納得のいくものかもしれません。
参考文献
Mega El Niño Events Caused End-Permian Mass Extinction, Researchers Suggest
https://www.sci.news/paleontology/end-permian-mega-el-nino-events-13262.html
元論文
Mega El Niño instigated the end-Permian mass extinction
https://doi.org/10.1126/science.ado2030
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部