筋肉質な体を手に入れたい、ダイエットを成功させたい、健康的なライフスタイルを確立したいなど、目指すゴールは人それぞれですが、ジムでの筋トレにチャレンジする人は多いです。

筋トレは、続けることができれば、必ず成果が得られる一方で、実際に継続できる人が少ないのが現状です。

筋トレを続けられない理由を尋ねてみると、「キツい」「時間がない」といった声がよく聞かれます。

しかし、研究を見てみると、意外にも、1回のトレーニング時間が長かったり、きつく感じたりする方法の方が、筋トレを続けやすい場合があることも分かっています。

本記事では、筋トレを続けるための意外な視点を含んだアプローチを2つ紹介します。

目次

  • 1回が長めで頻度が低めvs 1回が短めで頻度が高め どちらが続けやすいのか?
  • キツさがやりがいにつながる?

1回が長めで頻度が低めvs 1回が短めで頻度が高め どちらが続けやすいのか?

現代社会では、タイパという言葉をよく見かけるようになったことからも明らかなとおり、時間対効果が求められ、短時間トレーニングが人気です。

では、1週間のトレーニング時間が同じ場合、1回のトレーニング時間が長く頻度が低い場合と、1回が短めで頻度が高い場合では、どちらが続きやすいのでしょうか?

この疑問に答える研究として、ノルウェーの西ノルウェー応用科学大学(HVL)のペデルセン氏らが2022年に発表した実験結果があります。

研究では、筋トレ経験がなかった若い女性たちを対象に、次の2つのグループに分けました。
・全身法群
・分割法群

このうち、全身法群は1回のトレーニングで全身8種目を実施したのに対し、分割法群は上半身の日と下半身の日に分けて、トレーニングを行いました。

各グループのトレーニング種目 / Credit: Pedersen et al. (2022) BMC Sports Sci Med Rehabil をもとに作成

各種目のセット数は3セットで揃えているため、全身法群は1回のトレーニング時間が長くなる一方、ジムに行く回数が分割法群の半分で済みます。

12週間にわたるトレーニングの結果、筋力や筋肉量は両グループで同じくらい増加しました。

この結果は、一度に全身の主要部位に刺激を与える全身法と、上半身と下半身に分けて鍛える分割法のトレーニング効果が同等であることを示しています。

さらに興味深い事実として、分割法群では15%を超える参加者が「時間の欠如」を理由に途中でリタイアしましたが、全身法群ではそのような理由でリタイアした人は一人もいませんでした。

これは、トレーニングを始めたばかりの人にとって、1回のトレーニング時間の長さを気にするよりも、週当たりのジムに行く頻度を抑えるアプローチの方が続けやすいことを示唆しています。

もちろん、個々の好みによっては、1回のトレーニング時間が短く、頻度を高めた方が習慣化につながる場合もありますが、全身法はジムに行く回数を抑えられるため、おすすめのアプローチです。

時間が長いと聞くと、継続へのハードルが高いと感じるかもしれませんが、「時間が長いけれど頻度が低い」と「時間が短いけれど頻度が高い」のどちらが自分に合っているのか、自分の生活リズムを考慮しながら最適なアプローチを探ることが大切でしょう。

次のページでは、筋トレのセットの組み方とトレーニングの継続性について、意外な視点を説明します。

キツさがやりがいにつながる?

筋トレのセットの組み方については、特定の種目を数十秒から数分の休息を挟みながら繰り返す方法が一般的で、Traditional set(伝統的なセット)と呼ばれています。

例えば、ベンチプレスを1分の休息を挟んで3セット行うといったスタイルです。

これに対して、最初に下半身を鍛えるスクワットを行い、次に上半身を鍛えるベンチプレスを実施するように、違う筋肉のグループを連続的に鍛える方法は、「スーパーセット」と呼ばれています。

ペデルセン氏らの別の研究では、筋トレ経験を持つ男女を対象に、伝統的なセットとスーパーセットをそれぞれ実施してもらい、要した時間、キツさ、好みなどを調査しています。

この際、伝統的なセットでは1種目ごとに2分の休息を設けたのに対し、スーパーセットでは異なる筋群を2種目連続で実施した後に2分間の休息を取ります(セット数はともに3セット)。

伝統的なセットでは各種目を1セット実施したら休息したのに対し、スーパーセットでは、2種目実施したら休息している / Credit: Andersen et al. (2022) Front. Psychol.のFigure 1 (CC BY 4.0)

その結果、全種目を終えるのに要した時間は、伝統的なセットが58分だったのに対し、スーパーセットでは35分と大幅な時間短縮につながりました。この時間の差は、スーパーセットでは、2種目を実施してから休息を取るため、当然の結果と言えるでしょう。

一方、トレーニング後のアンケートによると、参加者はスーパーセットで運動のキツさや不快感をより強く感じていることが明らかになりました。これも、休息なしに2種目を連続で実施したため、理解できる結果です。

しかし、参加者にどちらの方法を普段のトレーニングで採用するか尋ねたところ、意外にも、18人中11人がスーパーセットを選びました

なぜ、キツくて、不快に感じるのに、スーパーセットを選ぶ人が多いのでしょうか?

まず、トレーニング時間が短いスーパーセットは、トレーニング効率に優れ、忙しい生活の中でも続けやすいと思った可能性があります。

また、キツいトレーニングは敬遠されがちですが、いざやり終えたら、達成感を得やすいという心理的要因も影響しているかもしれません。

特に、今回の参加者は筋トレ経験を持つ人たちだったため、辛いトレーニングを乗り越えることの意義を実感していて、スーパーセットを好んだ可能性がありそうです。

きついトレーニングをやりきると、達成感につながる / Credit: 写真AC

この研究はそれぞれの方法を1回実施した際の結果ですが、他の研究でもスーパーセットは伝統的なセットと同じぐらいトレーニング効果が得られることも示されています。

「キツい」と聞くと、トレーニングを続ける上でマイナスに感じることが多いですが、実際には、継続できる人たちは、その「キツさ」を乗り越えることで達成感や楽しさを見出し、それが続ける源となっています。

筋トレを続けたいと考えている方は、時にはキツくて不快なトレーニングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

挑戦した先には、新たな達成感が待っていて、それが継続の糧につながるかもしれませんよ。

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参考文献

Supersets save time in the gym – which may help you reach fitness goals faster
https://theconversation.com/supersets-save-time-in-the-gym-which-may-help-you-reach-fitness-goals-faster-150344

元論文

A randomized trial on the efficacy of split‑body versus full‑body resistance training in non‑resistance trained women
https://doi.org/10.1186/s13102-022-00481-7

A Comparison of Affective Responses Between Time Efficient and Traditional Resistance Training
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.912368

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 【時間がなくてやめちゃう】ジム通いを続ける筋トレの意外なコツ