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厚生労働省によると、日本における「50歳時の未婚割合」は年々高くなっており、2020年では、男性が約28%、女性は約18%でした。
1980年の未婚割合が、男性2.6%、女性4.5%だったことを考えると、数十年の間に生涯独身でいる人の割合が急増したことが分かります。
これには、結婚に対する価値観やライフスタイルの変化や、男女における経済的格差が小さくなったことが影響していると考えられます。
結婚は、「しなければいけないこと」から、「選択するもの」へと変化してきたのかもしれません。
だからこそ、「結婚をすることで人は幸せになるのか」という疑問を多くの人が抱くようになりました。
結婚後の幸せを測る尺度は様々ですが、今回ホー氏ら研究チームは、「身体的・精神的健康と幸福感の伴った老化」に焦点を当てました。
通常、老化によって人の健康状態は悪化するものです。
しかし、人によってはストレスや生活上のトラブルによって、同世代の人々よりも健康状態が悪化したり、幸福感が薄くなったりします。
研究チームは、結婚がこの老化のパターンにどのように影響を与えるのか興味を持ち、調べることにしました。
つまり、「健やかに年を重ねているか」という観点で未婚の人と既婚の人を比べたのです。
ホー氏らの研究では、「加齢に関するカナダ縦断的研究(CLSA)」の2011~2018年のデータが使用されました。
対象となったのは中年以上のカナダ人7641人(男性3926人、女性3715人)であり、それぞれの対象者を約3年間にわたって追跡しました。
その間で、身体的・精神的健康、幸福だと感じているか、社会的な繋がりがあるか、といった要素を調べ、彼らが健やかに年を重ねることができているか分析しました。
分析の結果、既婚男性(調査期間中に結婚した男性を含む)は、未婚の男性に比べて、健やかに年を重ねる(健康的で幸福度が高い)確率が2倍も高いと分かりました。
全ての人がそうだとは言えませんが、全体的に、男性は結婚したほうが幸せになる可能性が高いのです。
一方、女性では既婚と未婚の間に大きな差は見られませんでした。
つまり女性の場合は、結婚したからといって独身の時より幸せになるとは限らず、逆に「独身を貫いた方が幸せだ」とも言い切れないようです。
ただし、未婚の女性と調査期間中に夫と死別または離婚した女性を比べた場合では、未婚の方が健やかに年を重ねることができていました。
死別や離婚は大きなストレスを与える出来事なので、この結果は納得できるものです。
これらの統計的な結果をまとめると、「結婚は男性を健康で幸福にするが、女性ではその影響は見られない」と言えるかもしれません。
では、どうして男女でこのような違いが生じたのでしょうか。
その原因の1つは、未婚の男性の健康状態の元々の低さにあるようです。
研究チームは、「未婚の男性は、一般的に健康状態が最も悪いとが分かりました」と述べています。
未婚の男性は健康にあまり気を遣えていない傾向があり、結婚することで得られる「健康的な生活」の影響を大きく受けていたのです。
研究チームも「結婚した夫婦は、禁煙や定期的な運動など、健康に良い行動をとったり維持したりするようお互いに励まし合っているのかもしれません」と付け加えています。
加えて今回の研究では、社会的に孤立していない高齢者は、老後も健康で幸福な生活を維持できる可能性が高いことも分かりました。
独身であったとしても、親戚や友人、近所の人と定期的に接触するよう意識するなら、孤独感が軽減され、全体的な健康状態を改善することができるのです。
今回の研究結果が、全ての人に当てはまることはありません。
それでも、結婚に向けて行動すべきか悩んでいる人にとっては、参考になる情報かもしれませんね。
参考文献
Marriage strongly associated with optimal health and well-being in men as they age
https://www.eurekalert.org/news-releases/1055189
元論文
The association between trajectories of marital status and successful aging varies by sex: Findings from the Canadian Longitudinal Study on Aging (CLSA)
https://doi.org/10.1177/00208728241267791
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部