- 週間ランキング
人と交際していれば、どんなに好きな相手であっても、お互いの雰囲気が悪くなってケンカにつながることがあります。
軽い言い争いくらいで済めば可愛いものですが、怒りが膨れ上がって暴言や暴力にまでエスカレートしてしまうと大問題です。
お互いの心身を深く傷つけてしまい恐れがあり、人間関係も壊れてしまう可能性があります。
そこでチームは恋人同士のケンカを中和するには、どれくらいのブレイクタイムが有効であるかを実験で検証してみました。
今回の調査では、81組の男女のカップル(18〜39歳の平均年齢21歳)に被験者として協力してもらいました。
カップルには互いに競争して対立関係を促し、攻撃的な感情を誘発させるゲームに取り組んでもらいます。
具体的には、お互いに面と向かって立ってもらい、ヘッドホンを装着した状態で、反応時間の速さを競うゲームをしてもらいました(下図を参照)。
ゲームに勝った方は即座に手前のボタンを押して、好きな音量の爆音をヘッドホン越しに相手にぶつけることができます。
当然、攻撃を受けた側はイラッとします。
また被験者の表情や声は手前のモニターで撮影され、ゲーム中の怒りレベルをAI(機械学習)によって評価されました。
これを合計30ラウンド行っています。
さらにチームはこれと別に、爆音の攻撃前に強制的にブレイクタイムを挟む実験条件も行いました。
ここではゲームに勝った側がボタンを押す前に、5秒・10秒・15秒のいずれかのブレイクタイムが実験者によってランダムに挿入され、その間はボタンを押せないようになっています。(いわゆる6秒ルールの時間に当たります)
勝った側はこのブレイクタイム後に、好きな音量を選択して攻撃ボタンを押すことができました。
そしてデータ分析の結果、被験者の爆音による攻撃行動は、怒りの感情レベルによって駆動されることが確かめられました。
簡単に言い換えれば、被験者の怒りレベルが高まるほど、相手に浴びせる爆音の音量も大きくなっていたのです。
加えて、パートナー間の攻撃性は時間の経過とともに、お互いの攻撃性レベルが一致するようになっていました。
これは日常の中で誰もが実感していることでしょう。
他者とのケンカでは、どちらか一方の怒りがヒートアップすれば、それに釣られたもう一方の怒りもヒートアップし、お互いへの攻撃性が高まるものです。
ここまでは十分に予期された結果でした。
しかし最も重要な発見は、ブレイクタイムを挟むことで怒りの感情レベルが下がり、相手への攻撃性が下がっていることが確かめられたことでした。
しかも興味深いことに、怒りや攻撃性を低下させるのにブレイクタイムの時間は関係しておらず、一番短い5秒間でも10秒・15秒と同じだけの効果があったのです。
この結果は、たった5秒間だけでも我慢することで、恋人同士のケンカがエスカレートするのを回避できる可能性を示しています。
研究主任のアンナ・マカリー(Annah McCurry)氏は「ブレイクタイム後に恋人同士の攻撃性が低下することを実験的に示した研究はこれが初めて」だと説明。
その上で「この方法は恋人との口論中にネガティブな負の感情を抑えるためのシンプルでお金のかからない効果的なライフハックとなるでしょう」と続けました。
恋人にムッとした際は5秒ルールを使ってみるといいかもしれません。
参考文献
Study suggests five-second break can diffuse an argument between coupled partners
https://phys.org/news/2024-08-diffuse-argument-coupled-partners.html
Five-second breaks can help defuse couples’ arguments, study shows
https://www.theguardian.com/science/article/2024/aug/14/five-second-breaks-can-help-defuse-couples-arguments-study-shows
元論文
Both partners’ negative emotion drives aggression during couples’ conflict
https://doi.org/10.1038/s44271-024-00122-4
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部