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座りっぱなしの弊害はそれだけに留まりません。
1日の座る時間が長くなると、頭が悪くなる可能性もあるのです。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は、運動が記憶力の維持に効果的であるという先行研究を受けて、その逆もまた真であるかどうかを調べました。
要するに「座りっぱなしの生活が記憶力を損なうのかどうか」ということです(PLOS ONE,2018)。
研究チームはMRI画像を使って、認知障害や精神疾患のない45〜75歳の健康な成人35名の脳を調べ、自己申告式の質問票により詳細な生活習慣を記録しました。
その結果、週に座っている時間が多かった被験者ほど、記憶力に関わる脳領域の容積が減っていることがわかったのです。
この他にも座りっぱなしの生活は、不安やうつ症状、ストレスレベルの増加など、メンタルヘルスにも悪影響を与えたり、心身の疾患の悪化から全体的な死亡リスクを高めるとされています。
明らかに座りすぎは健康な生活にとって害悪となるのです。
それならとpigmieさんは、立ちっぱなしの生活で体にどんな変化が起きるのか、自らを実験台に調べてみました。
pigmieさんは1週間立ちっぱなし生活にあたり、「寝るとき以外はすべて座らない」というルールを設けました。
仕事はスタンディングデスクを使い、食事も立ったまま、トイレは中腰で済ませるようにし、移動も車には乗らず歩きにしています。
(※ 動画は記事の最後に添付してあります)
挑戦の結果、pigmieさんが実感した座らないことの最も顕著な効果は「お通じ」に現れました。
以前よりも食事の消化がとても良くなり、快便が続くようになったといいます。
それから立った状態で仕事をすることで、1日の生産性が約30%向上していました。
これは以前の研究かられっきとした科学的な理由が明らかになっています。
立った状態で仕事をすると座った状態よりも血流が良くなり、脳に酸素と栄養が十分に供給されるので、集中力や注意力が高まりやすいのです。
ところが、立ちっぱなし生活は徐々にデメリットの方が上回っていきました。
pigmieさんによると、立ちっぱなしはとにかく体への負担が大きく、疲労の蓄積や体の痛みを感じ始めたといいます。
仕事の生産性も疲労が溜まるにつれて落ちていきました。
さらに日が経つにつれて姿勢が悪くなり、関節の痛みがひどくなったため、これ以上は無理だと判断し、挑戦は5日目で終わりを迎えています。
こちらが実験前と実験後のpigmieさんの体の変化です。
実験前より下腹が出て猫背になっており、体重は0.45kgほど増えていました。
これはおそらく、「足腰の痛みや体の疲労を紛らわすために、いつもより多く食べてしまったからだろう」と話しています。
まあ事前に予期されてはいたでしょうが、pigmieさんの挑戦は「極端な立ちっぱなしは体に悪い」という結果に終わりました。
しかし、彼が立ちっぱなし生活の序盤で様々な健康面の改善を感じたと話していたように、座りっぱなしの弊害を軽減させるための努力をすることは有効なようです。
では、1日にどれくらいの運動量をこなせば、座りっぱなしの弊害を軽減できるのでしょうか?
これに関する調査はノルウェーの研究チームが2020年に報告しています(British Journal of SportsMedicine,2020)。
この調査では4カ国の合計4万4370人を含む大規模データを対象に分析。
その結果、中程度以上の運動を1日に約30〜40分間行っていた人は、座りすぎに伴う死亡リスクが有意に減少していたことが判明したのです。
中程度以上の運動とはそんなに激しいものではありません。
わかりやすく言えば、心拍数や呼吸数が通常よりも増加するものの、まだ会話はできるレベルの身体活動です。
例えば、サイクリングや少しスピードを速めたウォーキング、社交ダンスやエアロビクス、水泳などが当てはまります。
また集中して行う家事や庭仕事も中程度の運動に当てはまるとのことです。
現代社会のライフスタイルでは「座るのをやめろ」と言われても無理な話でしょう。
仕事にせよ私生活にせよ、座る時間が長くなることはなかなか避けられません。
そんな中でも、1日に30〜40分の隙間時間を見つけて、適度な運動を続ければ健康な生活が送れるかもしれません。
詳しくはこちらをご参照ください。
pigmieさんの挑戦動画こちらから。
参考文献
YouTuber Experiments With Not Sitting For A Week. Here’s What Happened
https://www.iflscience.com/youtuber-experiments-with-not-sitting-for-a-week-heres-what-happened-75508
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部