- 週間ランキング
早速得られた結果をみると、8週間の介入期間中、実験群は対照群に比べて野菜、果物、ノンカロリー飲料の購入量が大幅に増加しました。
こういった購入状況の変化に留まらず、介入期間後の体重が対照群に比べると、実験群で平均1.33kg落ちていました。
また、割引期間が終わっても、野菜や果物の購入量が多い状態が続いたと同時に、アルコール飲料の摂取量が逆に少なくなりました。
総じて、これらの結果は、過体重の人たちに対して、野菜や果物、ノンカロリー飲料の半額券を提供することで、購買習慣が変容し、体重減少につながったことを示しています。
肥満をはじめとする生活習慣病は、国の医療費を増大させる一因となっています。
そのため、国や地方公共団体が野菜や果物などの健康的な商品を積極的に手に取るような施策を設けることは、医療費を削減する効果が期待できるかもしれません。
ところで、なぜ今回の実証実験で割引券を貰ったグループの体重が減ったのでしょうか?
これは、割引券を使って購入した飲食物を積極的に食べ飲みしたことが影響したと考えられます。
研究グループは、健康食品に対する割引が25%だった先行研究では、購入量がわずかに増えたものの、体重が変化していなかったことを踏まえ、半額という大きな割引の方が、効果が期待できると考察しています。
実際、クーポンを貰った実験群の介入期間中の野菜、果物の購入量は著しく増え、割引券を使っていても、対照群よりもより多くのお金を使って、野菜と果物を購入していました。
また、割引期間が終わってからも、介入群の野菜や果物の購入量が多かった結果も興味深い現象です。
この原因については、野菜や果物を使って料理することが習慣化した可能性があります。
すなわち、安価で手軽に食べられる加工食品の方が安ければ、そちらを優先的に購入してしまうものの、割引によって安くなった野菜や果物を購入し、その際に料理の仕方を覚えてしまった場合、その後も購入を続けることが考えられます。
さらに、家庭での節約術が向上し、野菜や果物を使った多様なレシピを試す機会が増えるとともに、体重減少などの目に見える効果が実感できると、消費者は普段の食生活においてこれらの食材を積極的に取り入れるようになります。
たとえば、サラダやスムージー、野菜炒めなど、簡単で健康的な料理を日常的に作るようになれば、健康状態の改善や、さらなる体重減少も期待できるでしょう。
普段あまり自炊をしない人も、野菜や果物が割引になっているときは、それをきっかけに自分の食生活を見直すチャンスだと思って、割引に釣られてみるのも良いかもしれません。
参考文献
Discounts on healthy food lead to increase in consumption –study
https://www.jpost.com/health-and-wellness/nutrition/article-775548
元論文
Effects of discounting fruits, vegetables, and noncaloric beverages in New York City supermarkets on purchasing, intake, and weight
https://doi.org/10.1002/oby.24058
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
ナゾロジー 編集部