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今回の研究では、そういった睡眠効率に関係する生活習慣のうち、運動の可能性に着目したものです。
研究では、ニュージーランドの都市ダニーデンに居住する18~40歳の約30名を対象として、平日の17時以降の4時間に介入し、運動なし条件と運動あり条件で、それぞれ過ごしてもらいました。
このうち、運動あり条件では、基本的には座ったままで過ごしたものの、30分に1度、3分の軽い筋トレを行いました。
実際の運動内容は次のとおりです。
種目:椅子スクワット、カーフレイズ、腿上げ・脚後ろ伸ばし
時間:各20秒×3セット
一方、運動なし条件では、同じ時間帯を座ったままで過ごしました。
こういった条件の中で、手首に装着したデバイスで計測された睡眠データの結果をもとに、その効果を比べています。
早速結果を見ると、30分に1回、3分間の筋トレをした運動条件では、睡眠時間が平均27分も増えていました(6時間45分→7時間12分)。
また、この際、運動の影響で睡眠中に覚醒する時間が増えるなどの悪影響もなく、純粋に睡眠量を増やすことに成功していました。
7時間未満の睡眠時間は肥満やメタボリックシンドローム、心疾患のリスクにもなるため、この変化は健康増進にとって重要です。実際、別の研究において、普段の睡眠時間が不足している人が睡眠時間を増やすだけで体重が減少したというエビデンスもあります。
さらに、その後の日中の活動データには条件間での差が認められず、たくさん寝たからといって、活動量が減るといったマイナスの影響は見られませんでした。
総じて、1回3分の筋トレは、悪影響なしに、単純に睡眠時間を増やすことに成功しました。
研究グループは、今回の結果を踏まえた上で、まず、一般的な俗説とは異なり、先行研究を見ても、激しいランニングのような高強度の運動を寝る4時間以内に行ったとしても、睡眠には悪影響を及ぼさないことが報告されていると指摘しています。
また、たとえ夜遅くに深部体温や心拍数が上昇することによって睡眠にマイナスの影響があるとしても、今回採用されたような短時間の軽い筋トレでは、そのような影響は生じにくいと考察しています。
筋トレ自体が体力向上や筋力の維持・増強に役立つことは広く知られていますが、その効果が睡眠の量にも波及するという点は、興味深いものです。
この結果は、健康のために運動をしたいけれど、なかなか時間が取れないし、寝る前の運動は良くなさそうと躊躇している人にも、運動をするメリットを教えてくれています。
また、この程度の運動であれば、たいして汗もかかないため、筋トレのために、わざわざ着替えるなどの手間を割くことも出来ます。
ということで、たっぷり寝たい人は、まずは仕事終わりの夜のリラックスタイムに、軽い筋トレを取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考文献
Want to sleep longer? Adding mini-bursts of exercise to your evening routine can help, says study
https://medicalxpress.com/news/2024-07-longer-adding-mini-evening-routine.html
元論文
Evening regular activity breaks extend subsequent free-living sleep time in healthy adults: a randomised crossover trial
https://doi.org/10.1136/bmjsem-2023-001774
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。