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一般的に、天井が高い部屋は開放感があり、気持ちの良い空間として好まれています。
部屋全体を広く感じさせる効果があるため、大勢の人が集まる場所では、特に大切な要素だと言えるでしょう。
実際、イベントホールやギャラリー、スポーツジム、体育館などでは、高い天井が採用されることがあります。
しかし、この開放的な環境は、私たちにメリットばかりをもたらすわけでもないようです。
バウアー氏らの新しい研究によると、集中力を必要とする活動、特に試験のような高ストレス環境では、必ずしも有利に働かないことが示されたのです。
彼女による一連の研究は、建築デザイン(空間の大きさや形状)が人間の認知機能に与える影響を探るために行われています。
例えば過去の研究(2022年)では、仮想現実(VR)を用いた実験で、異なる部屋のサイズが脳活動に与える影響を調査しました。
その際、被験者たちは、VR内の広い部屋にいることで、集中力を必要とするタスクのパフォーマンスが低下しました。
この結果を受けて、バウアー氏らは今回、VRではなく、現実の「天井の高い部屋」で集中力を必要とするタスクにどのような影響が出るのか調べることにしました。
今回、研究チームは、2011年から2019年の間にオーストラリアの三つのキャンパスで行われた試験のデータを分析しました。
試験会場の天井の高さは大きく異なり、約3mの高さの天井もあれば、9.5mの高さの天井もありました。
対象は15,400人の学生で、彼らの試験結果と天井の高さの関係を比較しています。
ちなみに、学生の年齢、性別、試験を受けた時期、以前に同じコースで試験を受けた経験があるか、キャンパスの地理的な場所など、様々な要因も考慮されました。
その結果、天井が高い試験会場では、試験の成績が悪くなる傾向があると分かりました。
研究チームはこの有意性にも注目しましたが、「この結果が偶然に発生する可能性は低い」と結論付けています。
もちろん、試験の成績を悪化させる要因はいくつも存在します。
しかし、それらの要因の1つに「試験会場の天井の高さ」が含まれると分かったのです。
では、どうして天井が高いと成績が悪くなるのでしょうか。
バウアー氏は、「原因の特定は難しい」としつつも、生徒の密度や断熱性の低さから生じる「温度や空気の質の変動」が悪影響を与えているのかもしれない、と考えています。
また考えられる他の原因として、「心理的な要素」が関係しているかもしれません。
一般的に天井が高くて広い部屋は、大規模な社交的な集まりやスポーツイベントで利用されます。
学生たちは、その過去の苦い経験を思い出したり、広すぎる環境で居心地が悪くなったりして、ベストなパフォーマンスを発揮できなくなるのかもしれません。
こうした未解明な部分は、今後の研究でさらに突き詰めていく必要があります。
いずれにせよ、今回の研究結果は、教育機関が試験会場を選ぶ上で重要な考慮点となるでしょう。
大規模な試験会場を使用することでコストやスケジュール管理が効率化されますが、学生のパフォーマンスが低下するリスクがあるため、慎重な検討が必要なのです。
参考文献
High ceilings linked to poorer exam results for uni students
https://www.unisa.edu.au/media-centre/Releases/2024/high-ceilings-linked-to-poorer-exam-results-for-uni-students/
Should we ditch big exam halls? Our research shows how high ceilings are associated with a lower score
https://theconversation.com/should-we-ditch-big-exam-halls-our-research-shows-how-high-ceilings-are-associated-with-a-lower-score-233478
元論文
Elevated ceiling heights reduce the cognitive performance of higher-education students during exams
https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2024.102367
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部