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では、このような平均化は、顔だけでなく「声」の特徴にも良い影響を与えるのでしょうか。
2010年のグラスゴー大学(The University of Glasgow)の研究では、「声が平均的だと魅力が増すかもしれない」と報告されていました。
しかしその効果を再現した他の研究は存在せず、真相は謎のままとなっています。
そこで今回、カナダのマックマスター大学(McMaster University)のジェシカ・オストレガ氏ら研究チームは、平均化された声を人々がどのように感じるのか調査することにしました。
最初の研究では、人々が平均化した声に対して、どの程度「特徴的」だと感じるか調べました。
研究チームは、男子大学生32人と女子大学生32人の声を録音し、これらをソフトウェアでブレンド・平均化しました。
そして男性49人、女性50人の参加者に平均化した声を含む126の声を聞いてもらい、声の魅力を7段階で評価してもらったのです。
その結果、声の平均性が増しても、魅力の評価に繋がらないことが示されました。
過去の研究では、顔の魅力と同様に、声は平均的な方が魅力的と判断されやすいと報告されていたので、この結果はこれまでの報告と食い違っています。
オストレガ氏は、「2010年のグラスゴー大学の研究結果が再現されなかったのは驚きでした」と語り、「平均的な顔は魅力的」だと言えるが、声に関しては同じ傾向があるわけではないかもしれないと述べています。
声の平均化と魅力の関係は、これまで知られていた関係とは異なっているようです。
そしてオストレガ氏は次の研究で、声の魅力を2つの音響特性(基本周波数とフォルマント周波数)から調査してみました。
基本周波数とは声帯の振動によって生成される成分であり、音の高さ(ピッチ)に対応します。
基本周波数が高いと、聞こえる音の高さも高くなり、話者はこの基本周波数を調整することで、話のトーンや感情を表現します。
一方、フォルマント周波数は、声道(口腔、咽頭、鼻腔など)の形状やサイズに関係し、それらの共鳴によって強調される特定の成分です。
フォルマント周波数は音声の音色や質感に大きく影響すると言われています。
この研究では、ここまで実験で使用された各音声の音響特性を測定し、魅力の評価とどのような関係にあるかを分析しました。
その結果、男性の声は基本周波数が低い方が魅力的、女性の声は基本周波数が高い方が魅力的に評価されるという傾向が得られました。
フォルマント周波数に関しては、今回の実験ではどちらの性別でも魅力に有意な影響を与えていませんでした。
「男性では低い声が魅力的」「女性では高い声が魅力的」という結果には共感する人も多いでしょう。
今回の研究結果を総合的に考慮すると、平均的な声が魅力を向上させるわけではなく、ピッチなどに関連した声の特徴が魅力と相関している可能性が示唆されています。
確かに、声優やVTuber(CGキャラクターを用いた配信者)などでは、特徴的な声を持つタレントが高い人気を誇ります。
そのため、顔は特徴を削った平均的なものが好まれますが、声に関しては他と異なる特徴を持つ方が魅力的だと評価されやすい、逆の傾向があるのかもしれません。
ただ、特徴的な声の人は日常で会話している場合と、ナレーションなどの画面越しに聞いている場合では印象が異なる場合もあります。
声の平均化と魅力に関しては、今回とは異なる研究結果もあるため、この関係を明らかにするためにはさらなる調査と研究が必要でしょう。
参考文献
Voice attractiveness: Average isn’t always better, says new study
https://www.psypost.org/voice-attractiveness-average-isnt-always-better-says-new-study/
Average Isn’t Always Attactive: New Voice Perception Insights
https://neurosciencenews.com/voice-perception-attraction-26203/
元論文
No evidence that averaging voices influences attractiveness
https://doi.org/10.1038/s41598-024-61064-9
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。